あるこじのよしなしごと

妻・息子2人(2014生:小麦アレ持ち/2019生)と四人で暮らしています。ボードゲーム、読んだ漫画・本、観た映画・テレビ、育児、その他日常等について綴っています。

漫画『恋は光』ネタバレ感想

ざっくり言うと

『恋は光』に関するネタバレ感想。主人公・西条の選択は個人的には共感が持てた。あまり人気が無いと思うが、自身が惹かれた宿木の魅力についても語る。

こんにちは、あるこじ(@arukoji_tb)です。

先日、ネタバレなしの感想(というか紹介)記事を書いた、漫画『恋は光』について、今度はラストまでを踏まえての感想を書いてみようと思います。

こちらの記事はタイトルの通り、思いっきり結末までネタバレしているので、ご注意下さい。未読の方は以下の記事へどうぞ。

結末について

この作品で一番議論になるのは何といってもこの点です。最後に西条の下した選択に納得いったり、いかなかったり、納得するけど満足できなかったりと、本当に賛否両論ですよね。

私は単行本で読んでいたので、6巻の終盤で北代が「めっちゃ光ってる」(宿木談。この言い方好き)と分かったときに、ああこれは逆に北代エンドでは無いのかと思いました。北代エンドなら、最終話の直前(つまり最終巻に入ってから)にこのエピソードを入れてくるのでは?と思ったんですよね……。

また学園祭の打ち上げで東雲が、自身では北代には敵わないと独白するところから、本当にそのまま東雲が選ばれずに終わるという結末にはならないだろうとも思いました。

最終巻のあとがきを読む限り、ギリギリまでラストどうするかは迷われたと書かれていたので、上記は単なる結果論かもしれませんが、いずれにせよ6巻を読み終えての自身の感想はそんな感じでした。

西条の選択については、切ないが納得できると感じました。北代との関係は心地よく、特別なもので、しかしそれは恋とは違うものだった。その一方で東雲に対してはどう思ったか。

会えた ただそれだけで 一つ幸せだと思ったんです

これが全てですよね。会っただけで嬉しい。その感情こそが恋(より正確に言うなら西条に見える「本能の恋」の部分という事になりますが)の一断面であると。単純ですが、凄くよく伝わりました。確かに、北代に対して西条が持っているそれとは一線を画すのだろう……と納得しました。

しかし、こうして何となく一歩引いた感じで結末を眺められたのは、自分が思い入れを持ったキャラクターが北代でもなく東雲でもなく、宿木だったからかもしれません。

宿木は登場時からの印象があまり良くなかったためか不人気キャラな印象を受けますが、私が一番思い入れを持ったのは彼女でした。

宿木の魅力について

不人気キャラ(多分)と思われる宿木さんですが、そんな彼女に自分がどう思い入れを持てる要素があったのかを整理してみました。

自分の過去の悪癖についてきちんと反省・自己嫌悪している

第一印象は確かに良くないキャラクターでした。でも、略奪が自分で良くないことだと分かっていても、それしか恋愛の良さが分からなかったという経緯がありました。(とはいえ、略奪されたほうはたまらんとは思うが……)

そして西条との別れ話の後に、自分が悪いと何となく分かったつもりになっていたが、いざ失恋をしてみると、自分がしたことの悪さが全然分かっていなかったと打ちのめされるのです。ここできちんと反省して、自己嫌悪を抱ける時点で、存外、素直な人格であると思ったのでした。

優しい

また、彼女は意外と優しく、気遣いができる一面も持っています。

たとえば西条の初デートのときの宿木に対する感想ですが、

時間より早く着いて待っていてくれて、話下手な俺に対しめげることなく話しかけてくれるし、かと言って馴れ馴れしいわけでもなく明る過ぎもせず落ち着いていて……

こんな感じでべた褒めです(笑) まあ、これは宿木が略奪モードに入っていたので、猫をかぶっていたのもあるかもしれませんね。

他には物語の終盤、西条との会食で粗相し、そのことを引き摺っている東雲の気持ちを好転させようと、宿木はショッピングの最中に色々気遣いしています。そうした失敗から気をそらそうと話題を展開し、東雲が笑顔をみせたところで

やっと笑った

と安堵するのですね。このシーンは、いいなあと感じてしまいました。

宿木自身、別のシーンで「北代よりも東雲派」と言っていたり、何かと東雲に肩入れしている様子は伝わってくるので、特に東雲に対しては気遣いしているという点はありますが、それを差し引いても優しいなーと思いました。

考え方や状況に共感できる

そして、一番のポイントはここです。北代も東雲も確かに魅力的なのですが、完璧すぎるというか、出来すぎています。といっても、リアリティがどうこうとかそういう事を言いたい訳ではなくて、私にとっては自分と照らし合わせて見つめられる人物像ではなかったという事です。

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5巻で宿木が西条の事を諦め、決別する場面は『恋と光』屈指の名シーンだと思います。

ヤダ、そんなに構えないで。別にもうアナタのこと好きとかじゃないし

と言いながら、物凄く輝いている宿木の姿は何とも言えず、ぐっときました。

東雲と北代のどちらが西条とくっつくかという視点で見ていると、ほぼ脱落気味だった宿木がレースから脱落確定になるというだけのエピソードかもしれませんが、どう考えても脈なしの相手に対して、諦めなければならないということを受け入れる宿木の姿が何ともいえず切なく、共感をもって読み進めました。

このシーンの前で出てくる宿木の以下の独白も印象的です。

自分を好きになってほしい 選んでほしいという気持ちより 向こうを嫌な気持ちにさせたくない方が勝る……

分かる! という気持ちになったんですよね。この辺りで宿木に色々感じて、それまでを読み返してみたり、その後の展開を読んだりで、宿木の魅力にはまった感じでした。まあ、ラストで西条と結ばれるという可能性はさすがに無いだろうと思っていましたが……。

まとめ

ネタバレ満載で書いてきましたが、この漫画は読み終えて、久々に感想を強く語りたい!と思うことができたという点で、稀有な作品だったと思います。

最近は漫画や小説を読んでみても、面白かった、そうでもなかった、それが面白かった or つまらなかった理由は……とまで語ることはできても、自分自身の行動や思想と登場人物のそれを照らし合わせて共感したり考えたり、といった行動にまでは至りませんでした。これは多分、自身が歳を重ねたとか、そういう話題を話す相手が減ったとか、色々な要素が絡んでいるのだと思います。

しかし、『恋は光』は、そんな自分が強く感想を書きたい!と久々に心を揺さぶられました。読んでいる最中は先が気になり、読み終わった後は反芻するように内容を思い返さずにはいられない。大変魅力的な作品でした。

この作品がアニメで映像化されたら綺麗でしょうね。ノイタミナ枠とかでやりそうな気がします。実写になると急に表現が陳腐になりそうだから、見たくはないかも。とはいえ実際に放映されたら、間違いなく見てしまうと思いますが(笑)