漫画『はっぴぃヱンド』1巻を読んだので、その感想です。田舎に引っ越してきた主人公が、自身が殺されるループに囚われ、そこからの脱出を図るという作品です。
感想
ホラーっぽいループ物を何か読みたいなと思って手に取りました。
作中の随所に、色々な漫画作品の断片の様なものを感じました。ループ物で田舎が舞台といえばあの作品だし、絵柄とギャグ部分には苺ましまろっぽい雰囲気。
特に主人公の姉が、苺ましまろのキャラクターに激似だと思ったんですが……。アンニュイな態度や煙草を燻らしているあたり含めて似ています。
あとは、時々よつばとっぽい表現もあるかな。そして、襲われるときに急に真顔タッチになるのはひぐらしとか。
というわけで、色々な部分で他作品の影響を多分に受けている印象がありますが、何となくその辺の他作品を連想させる事自体が何かのミスリードになっているのかなと感じました。いや、正しくは感じたというよりは、そうであってほしいという願望か。他作品との相似点をみせつつ、どこかで上手くその隙をついた逆転の展開が待ち受けていたらいいなあと期待しています。
あとは、第2話にして早くもループを打開しようとする動きが出始めるのはテンポが早くて良いと思いました。
ループ物の多くは、状況を作中の登場人物及び読み手に把握させるために、何周か無為に過ごした上でようやく事態が動き始めるものが多いですが、この作品はもうわざわざ細かい説明は不要でしょうと言わんばかりに、早々に事態が動き出します。この点は、昨今、世にループ物が沢山発表され、メジャーなテーマになっているが故にできる事かもしれませんね。
作中で気になる点
1巻を読み終えて、自分なりに気になった部分を列挙してみました。ここからは1巻の具体的な内容に触れているので、真っさらな状態で読みたい方はご注意下さい。
村の人々に何が起こっているのか?
まずはこれですね。3ループ目での前提を整理すると
- 茜(主人公)以外の村の人間も皆、ループしている(らしい)。
- 茜が記憶を取り戻すきっかけや、村人たちが茜を襲う直接のきっかけは「日誌を書き忘れること」ではない。
- さやかはループしている事や、何らかのスイッチが入った時に主人公を襲うことも自覚している上で、自身を制御できている。
- いづみは何らかのスイッチが入り主人公を襲う際に自己の抑制はできなかったが、襲いたくないという感情(人格?)も同時に持っている。
こんな感じです。いずれにせよ、何らかのきっかけによって強制的に茜を襲うモードに村人が入るのは間違いないようです。当面はその「きっかけ」を探る展開になりそうです。(さやかは既に知っているのかもしれませんが……)
東京に帰る理由
1ループ目も2ループ目も、茜が村に来てから再び村を離れて東京に戻らなければならない理由が出来るわけですが、その理由の変化が気になります。
1ループ目は両親の海外での仕事が予想よりも早く終わったからだったのに対し、2ループ目では母親が交通事故に巻き込まれて意識不明だからに変わっています。悪化してますよね。
ループを繰り返す内に事態が悪化していく作品といえば、朱川湊人の短編で『世にも奇妙な物語』で多少アレンジされたものが放映されて人気を博した『未来公園』がありますね。あの話では主人公の取った行動と事態の悪化に関連性がありましたが、この作品でも、茜が取った行動が東京に戻る理由の変化に影響を与えているのでしょうか?
だとすると、ループの条件が分かり、脱出できる環境が整ったとしても、それまでの行動次第では脱出できない(例えば両親の死などが起きていた場合、ループを脱して事態を確定するのが好ましくない、など)という状況が起きるかもしれません。
また、単にループを重ねれば重ねるほど事態が悪くなっていくという話かもしれません。その場合は、悠長にループ脱出の検証をする事ができない、ある種の時間(回数)制限つきの脱出劇となりますね。
冒頭の幽霊は?
物語の冒頭、トンネルの中でいきなり幽霊が出てきました。単なるギャグかもしれませんが、ひょっとしたら何か意味があるのか?とも思いました。多分、関係ないと思いますが、ちょっと気になりました。伏線だったら面白いかも。
終わりに
新作のループ物は読み始め、どういう結末を迎えるかがいつも楽しみです! 前例が多いだけに魅力ある決着に仕上げるのはなかなか難しいでしょうが、面白さを最後までキープできると良いなと思います。
この作品は現時点で既に2巻まで出ているので、早速続刊を購読してみたいと思います。