あるこじのよしなしごと

東京の片隅で、妻と4歳の息子と三人で暮らしています。 ボードゲーム、読んだ漫画・本、観た映画・テレビ、遊んだゲーム、育児について、その他日常などを綴っています。

漫画『笑ゥせぇるすまん』第6話「チ漢さん」感想

漫画『笑ゥせぇるすまん』第6話の感想です。

感想の性質上、展開やオチなどに多々言及することになるため、ネタバレ多数になります。ご注意下さい。

他方、あらすじの紹介が主眼ではないので、話の枝葉末節は記載しないつもりです。そのため、本記事を読むだけでは物語の内容は分からない可能性が高いことも、ご了承下さい。

第6話「チ漢さん」

お客様について

定年を迎えたお爺ちゃん・冬木花衛です。家族構成などは読み取れませんが、今は古アパートで一人暮らしをしているようです。なお、アニメ版では元教師という設定になっていました。

ここまでの話のお客様は皆、割と気弱なタイプが多かったですが、今回は喪黒さんに食って掛かる程、気の強いお客様でした。

喪黒さんは冬木にチ漢として生きる素質ありと見込んで陥れようとするのですが、こんな感じで追い払われてしまいます。喪黒さんにしてみればやられた振りなんでしょうが、とはいえ珍しい光景です。

しかし、喪黒さんは冬木の正義感を計算に入れた上で、チ漢に使うためのグッズをわざと置き忘れ、冬木の手に取らせます。喪黒さん、上手く搦め手を使う策士です。

その後は喪黒さんの読み通り、自らの隠された本能(?)に従ってしまう冬木なのでした……。

さすがに無理

この話で印象的なのが、スカートめくりのための道具です。物語の中で特に焦点の当たるアイテムなのですが、喪黒さんは使う際に

これを女の子の足に取りつける時にはくれぐれも慎重に……

と言っています。

うん、無理だこれ。慎重にも何も、仮に上手く付けられたとしても、誰が犯人が完全に即バレします。実名入りのキャッツカードを送りつけるくらい無謀な行為です。

しかし、冬木おじいちゃんは、とある事情から可愛さ余って憎さ百倍となった女性に恥をかかせるためにこのグッズを使う事を思い付きます。

ちなみにこれがターゲットになるヨシコさん。はっきり言って可愛くない。ちなみに後述のアニメ版だと、大分可愛らしく改変されています。

冬木は上手く隙を見つけ、ヨシコの足下にセットして、計画通り作動させます。さて、その後にどうなったかというと!?

くっくっく、ざまをみろ! さすがのアイツも真っ赤になって慌てておったわい!

と冬木が自宅で呟くシーンに飛んでおり、作動してスカートがめくれてから後の様子は描写されていません。ヨシコが冬木に対してどんなリアクションを取ったのかについて特に言及されていないのです。どうやってその場を乗り切るのか?と思ってたので、ちょっと肩すかしです。

では、漫画ほどシーンの転換があっさりとできないアニメ版はどうだろう? と思ってチェックしてみると

もうおじいちゃんたら、(下着が)見たいなら初めからそう言ってくれればいいのに〜

という台詞で、ヨシコが冬木のチ漢行為を肯定していました。

これは上手い脚本変更ですね! 冬木の仕業だとバレない訳がないという読み手の疑問を解消しつつ、冬木がヨシコからチ漢と判断されてしまうことによって、その後の冬木の転落が後押しされる形になっています。

別作品にも登場?

最終的に冬木は忍者になります。こう書くと意味不明かもしれませんが、出歯亀として行き着くところまで行った結果、忍者スタイルが最も適しているという結論に達したようです。

ラストシーンでは、喪黒さんのドーン!によって己の本能を解放しながらも、生来の真面目さ・頑固さが同居した冬木の姿がユーモラスに描かれています。

ところで、この冬木のようなキャラクターがA先生の他作品にも登場するのをご存知でしょうか?。

『喝揚丸ユスリ商会』という作品内に、ノゾキについて熱く語る忍者が登場するのです。

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こちらが登場シーンの一コマ。ただ、見た目が大分違いますし、別のシーンで会話している様子は冬木の言動よりも大分チャラい感じになっているので、冬木そのものとは言えないかもしれません。しかし、冬木の話から着想を得ているのは確かだと思います。

この第6話は厳密に言うと『笑ゥせぇるすまん』ではなく『黒ィせぇるすまん』というタイトルで連載されていた頃の話であり、その連載期間は1969〜1971年でした。先程挙げた『喝揚丸ユスリ商会』は1973年に連載された作品なので、順番的には冬木の話が先に創られた事になり、そちらが下地になっていると推測されます。

冬木は不幸になったのか

冬木は果たして喪黒さんの手で不幸になったのでしょうか。ラストシーンをみる限りでは、本人は(犯罪行為に手を染めていますが)充実している様子でした。第三者からすれば以前の融通はきかなくとも生真面目だった頃の方が真っ当に人生を送れると思いますが、本人視点では今の方が幸せなのかもしれません。

『笑ゥせぇるすまん』ではこうした、第三者視点では不幸だが本人にとっては幸せといえなくもない結末となる事が幾つかあるんですよね。この漫画を読むと、「個人にとっての幸せとは何か」について見つめ直すきっかけにもなると感じます。

以上、『笑ゥせぇるすまん』第6話の感想でした。