あるこじのよしなしごと

妻・息子2人(2014生:小麦アレ持ち/2019生)と四人で暮らしています。ボードゲーム、読んだ漫画・本、観た映画・テレビ、育児、その他日常等について綴っています。

漫画『笑ゥせぇるすまん』第16話「的中屋」感想

こんにちは、あるこじ(@arukoji_tb)です。

漫画『笑ゥせぇるすまん』第16話の感想です。
感想の性質上、展開やオチなどに多々言及することになるため、ネタバレ多数になります。ご注意下さい。
他方、あらすじの紹介が主眼ではないので、話の枝葉末節は記載しないつもりです。そのため、本記事を読むだけでは物語の内容は分からない可能性があることも、ご了承下さい。

第16話「的中屋」

お客様について

学生の中山歩一です。「中山」は中山競馬場から取ったものと思われます。「歩一」は「ぶいち」と読むと思われます。こちらについては後述します。

中山は学生ながら、競馬が趣味のようです。学生って競馬禁止じゃなかったっけ? と思って調べたところ、2014年からは成年であれば、学生でも馬券を購入してよいみたいです。それなら問題ないですね。

……2014年?

喪黒さん in 競馬場

さて、競馬に興じる中山ですが、あまり予想が上手くないのか、ハズレ馬券を量産していました。

そんな最中、中山は競馬場で喪黒さんと出会います。馬券が外れてばかりという中山に、競馬で損しない方法を伝授するという喪黒さん。それはずばり、馬券を買わないことでした。たしかに。

中山は喪黒さんの助言をバカバカしいと切り捨てますが、その後の喪黒さんの一言に激しく心を揺さぶられます。

わたしのように予想が90%的中するのでは、かえっておもしろくありませんしね

予想的中率90%! これは驚異的な数字といえるでしょう。

喪黒さんの事をよく知っている読者なら、さもありなんと思うだけですが、喪黒さんの事を知らない中山は、次のレースの買い目を教えてくれたにも関わらず、無視して競馬新聞の予想そのままの馬券を買います。

そして案の定、馬券を外します。まあ、見知らぬ人のアドバイスに従って予想を外すとかは誰しも避けたいでしょうし、これは仕方ないかもしれませんね。

しかし、中山は諦めません。喪黒さんに予想のおかわりを要求します。ある意味、いい根性してます。

喪黒さんは快諾し、中山に次レースの予想を伝えてあげるのでした。良い人すぎる! 裏がなければ。

ギャンブルは遊び金で

その後、喪黒さんの予想に乗って大勝した中山は、喪黒さんと共にタクシーで競馬場から帰ります。

ギャンブルはよゆうのある遊び金でやるもので、生活のかかっているお金を賭けては勝てませんよ

この喪黒さんの発言には強く同意します。私も嗜み程度にギャンブルをやった事はありますが、生活費など負けたらヤバイ金を使ってのギャンブルはまず勝てないだろうなと感じます。

ギャンブルというと完全な運否天賦のように考える人もいますが、その多くは判断力がとても重要です。リターンを考えた上でリスクをどこまで取るか。ギャンブルの本質はそこにあると感じます。運が向くかはその先の話です。

負けたらヤバイ金での賭け事の場合、冷静な立ち回りはできないでしょう。負けてお金を失う事を恐れ、臆病過ぎる判断をしたり。あるいは逆に、限りなく可能性が低い事象を希望的観測で起きると信じ込んだり。

大体、そんな感じで負けるでしょうね。少なくとも私なら、そうなっちゃいます。

だから、ギャンブルは遊び金でやるに限るという喪黒さんの意見には、深く頷いてしまうのです。

歩一

中山は喪黒さんの発言に賛同しつつも、今までの負け分を少しでも取り返したいという考えから、もう一度だけ予想を教えて欲しいと喪黒さんに頼み込みます。

そして、良質なお客様を探し求める喪黒さんが中山の申し出を断るはずもありません。来週の競馬でもう一度だけ、予想を教えると中山に約束するのでした。

中山は軍資金をかき集めようと、友人に声を掛けます。そして、友人がお金を貸すのを渋るのをみると、結果に限らず必ず三割の利子を付けて返すという提案をします。

これはなかなか上手い提案ですね。友人からすれば元本割れなしにノーリスクで儲けられる訳です。

しかし、友人は二千円だけ出資すると言います。まあ、いくら良い案とはいえ、中山が本当に返してくれる保証など何も無いですからね。

ここで、見るからに危ない男が資金提供すると言い出しました。その額、20万。

20万……確かに高額ですが、利子込みでも26万。中山が貧乏学生だとしても最悪、親に泣きつけば何とかなる金額ですよね。

と思っていたら、アニメ版では男の出資金が20万から1000万に増額していました(笑) いやー、利子込みで1200万は死ねますね。

ちょっと負けた金を取り戻すだけだった話に、急に破滅の匂いが漂い始めます。

ところで、この場で中山が取った行為、これが実は「歩一」という言葉と関係があるのです。

歩一という語を「十分の一」の略語と捉え、昔は斡旋料の定額が十分の一であった事から、各種の借金や商談の斡旋料の事を「歩一」と呼称するのだそうです。知ってました? 私は知りませんでしたが、昔はよく知られた言葉だったのかな。

厳密にみると、別に中山が誰かを斡旋している訳では無いですけどね。強いて言うなら、喪黒さん(の予想)を斡旋しているとも解釈できるかもしれませんが。

ともかく、「歩一」はそんな意味合いがあるという訳です。今回のお客様のネーミングはなかなか深いものがありますね。

いざ競馬場へ!

いくら負債が増えようと、要は勝てばいい訳です。喪黒さんが付いていればほぼ負けないのですから。

中山も同じように考えたのか、意外と落ち着いてますね。ちょっと遊んでみようか、などと言い出しました。軍資金が減ってしまうけど、良いのでしょうか?

その様子を後ろから見ている喪黒さん。中山を見つけて声を掛けるかと思いきや……何故か、声を掛けずに見守っています。

見守っています。

更に見守っています。

このまま約束をすっぽかすつもりか……と思ったら、喪黒さん、最終レースには間に合いました! まあ、間に合ったというか、最初から居たんですけどね。

しかし、中山の苦悩は解決しませんでした。その理由は……推して知るべし。

今回もドーン!は無し

この話も第15話の空手道と同じく、喪黒さんのドーン!はありませんでした。

二つの話に共通しているのは、どちらも最終的には自ら墓穴を掘っていくスタイルという所ですね。喪黒さんがドーン!をするまでもなく落ちていってしまうというか……。

更に言うと、お客様への忠告もありませんでした。一応、ギャンブルから足を洗えという忠告はしていますが、それは一般論の範疇です。

少なくとも、その後に「競馬に付き合う」と他ならぬ喪黒さん自身が快諾しているのですから、この忠告を破ったから破滅した、と単純に判断するのは中山にとって酷というものでしょう。

漫画版の最初の頃……というか、正確に言うなら『黒ィせぇるすまん』として連載されていた頃は、忠告→破る→ドーン!という一連の流れに属さない話が結構多いです。

上述の展開は、これはこれで水戸黄門のような様式美があって好きなのですが、連載初期の色々なパターンの展開がある点は、読む際に飽きが来なくて面白いと改めて思いました。

以上、『笑ゥせぇるすまん』第16話の感想でした。