あるこじのよしなしごと

妻・息子2人(2014生:小麦アレ持ち/2019生)と四人で暮らしています。ボードゲーム、読んだ漫画・本、観た映画・テレビ、育児、その他日常等について綴っています。

漫画『笑ゥせぇるすまん』第19話「47階からの眺め」感想

こんにちは、あるこじ(@arukoji_tb)です。

漫画『笑ゥせぇるすまん』第19話の感想です。
感想の性質上、展開やオチなどに多々言及することになるため、ネタバレ多数になります。ご注意下さい。
他方、あらすじの紹介が主眼ではないので、話の枝葉末節は記載しないつもりです。そのため、本記事を読むだけでは物語の内容は分からない可能性があることも、ご了承下さい。

第19話「47階からの眺め」

お客様について

学生の憂木守です。憂木は「憂き」からきているのでしょうか。「憂き(憂い)」は、思うようにならず辛い、苦しい、切ないというような意味です。

憂木は日常の退屈さから、47階建てのビルに上がる事を思い付きます。

47階とはえらく中途半端に思えますが、これは実際にあるビルをモチーフにしているためと思われます。

調べてみたところ、1971年に開業した京王プラザホテルのビルが47階建てでした。当時、日本で一番高い建物だったようですね。現在では47階は宴会場に改装されているそうですが、開業当時は日本一高い展望台として人気を博したそうです。

なお、『黒ィせぇるすまん』の連載期間は1969-1971年のため、時期的にもこのビルの開業時と一致しています。憂木が上がったのは、京王プラザビルで間違いないでしょう。

展望台で憂木は、ちょっとした悪戯に興じる喪黒さんと出会います。ちなみにこのシーン、アニメだと喪黒さんの動きが軽快で、なかなかユーモラスです。

喪黒さんは憂木に、展望台から「下界」を望遠鏡で眺める事の面白さを伝えます。憂木はそれを聞いて、実際に望遠鏡で下界を眺めてみる事にするのでした。

下界の彼女

憂木は下界を眺める中で、ある女性の姿を捉えます。それを目敏く察した喪黒さんは、把握していた彼女の名前から住所まで憂木に伝えます。

喪黒さん、端的に言ってヤベー奴ですね……。では、それを聞かされた憂木はどうしたかというと。

ビルを下りて、実際にそこに足を運んでいました。これまた、ストーカーチックな……。しかし、展望台からでなければ彼女の姿が見られないという事実が分かり、落胆します。

その夜、彼女の姿を一目見ようと再び展望台を訪れる憂木。しかし、夜は窓が閉まっており、室内にいる彼女の様子を窺い知ることができませんでした。

落胆する憂木に対し、現れた喪黒さんが「彼女の顔が見られるようにする」と言い出します。

半信半疑の憂木でしたが、しばらくすると本当に、彼女が窓を開け、その様子が見えるようになりました! 一体何故? と憂木が喪黒さんに聞くと……是非顔が見たいと相手に伝えることで、相手がロマンチックに感じてくれたとの事でした。

ロマンティック……かな? 現代でもし同じ事をしたら、滅茶苦茶怖がられて逆に隠れられてしまう、つーか、下手したら警察沙汰になりそうな気さえしますが……。どうだろう、私が女心が分かっていないだけでしょうか。

当たって砕けろ

さて、彼女の様子が見えるようになった憂木ですが、それで満足できるかと思いきや、姿が見えるが何も進展しないが故に、却って想いが募るばかりでした。

そんな憂木に対して、喪黒さんは、直接彼女の許を訪れたらきっと喜ぶはず、といつもの調子で煽ります。

ちなみにアニメ版は漫画版に対して、

  • 彼女との「交流」が一回多い(別の日に再度同じやりとりを交わす)
  • 二度目の「交流」時に、彼女が部屋に"LOVE"という文字の謎の置物(どこで売ってる!?)を配置し、憂木に分かりやすく好意をアピールしている

といった違いがあり、彼女も憂木に興味を持っているらしい事がより強く演出されています。

最終的に喪黒さんにドーン!された憂木は当たって砕けろの精神で、彼女の許へと向かいます。その行為が自身に不幸をもたらすとは知らずに……。

ひとまず、最後のお客様

『笑ゥせぇるすまん』の原型である『黒ィせぇるすまん』は、この話で最終回を迎え、雑誌「漫画サンデー」(芸人の伊集院光さん曰く、"サンデーじゃない方のサンデー")での連載を終えます。

その後は、1989年にテレビ番組「ギミア・ぶれいく」でアニメ化され、その際に今の『笑ゥせぇるすまん』に改題されます。そして1990年より、雑誌「中央公論」にて『笑ゥせぇるすまん』としての連載が始まります。

最後の話にあたる憂木は、可哀想なお客様でしたね。特に落ち度の見つからないお客様でした。多少、ストーカー的な部分もありましたが、個人的には心情が理解できる範囲でした。

今回は終始、喪黒さんのペースで話が進み、最後の行動も喪黒さんのドーン!に焚き付けられての行動でした。自身で墓穴を掘ったという印象は薄く、半ば強引に悲劇への道を歩かされたお客様でした。

さて、喪黒さんの取った行動は第18話と同じく、一応現実の範疇で説明が付くものばかりでした。

最後に憂木を煽る際のドーン!は呪術的でしたが、それ以外は電話を使ったのみです。最終回とその前の回において、連載開始当初と同じく、喪黒さんの取った行動が現実的な内容に寄ったのは、単なる偶然なのか、それとも何らかの意図があるのか……。

自身の中では、連載開始時と終了頃のエピソードは同時期に案が検討されたためにどちらも人間の力を超越した要素が薄く、その間の話は後から考えられたので、能力や展開が派手になっていったのではないか? と想像しました。

考えても明確な答は出ませんが、その理由について色々想像を巡らせてみるのも面白いと思います。

以上、『笑ゥせぇるすまん』第19話の感想でした。次回(第20話)以降は雑誌「中央公論」にて連載された『笑ゥせぇるすまん』の感想になります。