あるこじのよしなしごと

妻・息子2人(2014生:小麦アレ持ち/2019生)と四人で暮らしています。ボードゲーム、読んだ漫画・本、観た映画・テレビ、育児、その他日常等について綴っています。

漫画『笑ゥせぇるすまん』第23話「ケフィア」感想

 

こんにちは、あるこじ(@arukoji_tb)です。

漫画『笑ゥせぇるすまん』第23話の感想です。
感想の性質上、展開やオチなどに多々言及することになるため、ネタバレ多数になります。ご注意下さい。
他方、あらすじの紹介が主眼ではないので、話の枝葉末節は記載しないつもりです。そのため、本記事を読むだけでは物語の内容は分からない可能性があることも、ご了承下さい。

第23話「ケフィア」

お客様について

漫画家の須田見梨也です。名前の由来は「スタミナが無い」事から。

須田見は日頃から栄養ドリンクに依存しています。ある夜、スタミナ切れのために栄養ドリンクを調達しようと外出した所で、栄養ドリンクを買い漁っている喪黒さんと出会います。

これはウザい。栄養ドリンクが売り切れてしまった(というか喪黒さんが買い占めた)ので、譲ってくれと頼む須田見に対し、喪黒さんは1本1万円なら売ると言います。須田見もさすがにそんな金は払えないと最初は言っていましたが、

最終的には喪黒さんから栄養ドリンクを貰い、復活するのでした。

いいえ、ケフィアです

体力不足に悩む須田見に対し、喪黒さんはある物を与えます。

それがケフィアです。1990年代には、ヨーグルトきのこの俗称でも流行った代物ですね。牛乳と共に煮沸して、冷ました物を濾して飲む、発酵乳です。

作中でも言及されていますが、保存時の管理に手間が掛かる事から、次第にブームは収束していきました。

実際にケフィアを口にした事が無い人でも「いいえ、ケフィアです。」のネットスラングは耳にした事があるのではないでしょうか。

ちなみにこのスラングは、株式会社やずやの商品「千年ケフィア」のCMが2007年夏より放映された際におけるキャッチコピーが元ネタです。

喪黒さんは須田見に対して

特にソ連では飲まれる発酵乳の70%がケフィアです。おそらくゴルビーもケフィアで育ってきたと思います

と語ります。この、喪黒さんが持ち出すゴルビー(ソビエト連邦 最後の最高指導者であるミハイル・ゴルバチョフの愛称)という言葉に、時代を感じますね。

喪黒さんは、須田見に対して「ケフィアを摂取し、そのかわり、栄養ドリンクを飲むのはやめろ」と忠告します。

そういえば、喪黒さんからの明確な忠告が登場するのは久々ですね。喪黒さんから忠告があった話は、雑誌「中央公論」連載版では初です。また『黒ィせぇるすまん』時代まで含めても13話の「手切れ屋」まで遡ります。

須田見は喪黒さんから貰ったケフィアをきちんと口にする事で健康的な身体と生活を手に入れます。

しかし、その一方で不摂生な生活が生んでいた(?)創作活動における、須田見のアイデアの源泉が失われてしまいます。

ここについて、アニメ版の喪黒さんは、それは単なるスランプであって、健康的な生活によって損なわれたものではないと言及していますが……。

さておき、須田見は喪黒さんの忠告に従わず、栄養ドリンクを口にしてしまいます。

そうして忠告を破った須田見が、喪黒さんの手によって破滅を迎えるのは、言うまでもありませんね。

24時間戦えますか

本エピソードが掲載されたのは1990年。バブル絶頂の時期です。この頃のサラリーマンを象徴するかのようなキャッチコピー「24時間戦えますか」のCMで有名なのが、三共(現:第一三共ヘルスケア)から発売された栄養ドリンクのリゲインですね。

特に、上記のキャッチコピーが含まれた当時のリゲインのCMソング「勇気のしるし」は大流行し、CD化までされました。

栄養ドリンクのCMがそこまで人気が出たのも、バブル期で活気に溢れていた当時の日本のエネルギーを、ある種象徴するような存在だったからかもしれません。

アニメ版との違い

アニメ版ではタイトルが「ケフィア」から「ケーフィア」に変化している他、漫画版からラストが大きく変化しています。

漫画版では喪黒さんによって、須田見が栄養ドリンク無しでは生きていけない状態に追い込まれる様が描かれています。栄養ドリンクの山に溺れる須田見の姿は狂気じみており、ゾッとします。

一方のアニメ版では、栄養ドリンクを飲み、ケフィアに対する愛情を欠いた事によってケフィアの怒り(?)を買い、果てしなく培養されたケフィアが部屋に充満し、須田見が物理的に飲み込まれるというオチでした。

はっきり言って、アニメ版は何じゃそりゃという終わり方です。怖さのかけらもありません。見た目はシュールなので、ある種笑えるんですけど、わざわざラストを変えた意図が分かりません。明らかに劣化しています。

これは完全に想像ですが、漫画版ラストの須田見が栄養ドリンクに溺れる姿は、薬物中毒やアルコール依存などの姿を連想させるとスタッフ側が考え、描写をマイルド(というか、全然別の内容)に変えたのかなと思いました。

少なくとも、よりオチを面白くしようという考えによる改変とは、私には感じられませんでした。

以上、『笑ゥせぇるすまん』第23話の感想でした。