あるこじのよしなしごと

東京の片隅で、妻と4歳の息子と三人で暮らしています。 ボードゲーム、読んだ漫画・本、観た映画・テレビ、遊んだゲーム、育児について、その他日常などを綴っています。

漫画『笑ゥせぇるすまん』第27話「温泉奇行」感想

ざっくり言うと

舞台は温泉街。お客様は喪黒さんに唆されて芸者との一夜を過ごす。比較的小さな被害で済む話。

こんにちは、あるこじ(@arukoji_tb)です。

漫画『笑ゥせぇるすまん』第27話の感想です。
感想の性質上、展開やオチなどに多々言及することになるため、ネタバレ多数になります。ご注意下さい。
他方、あらすじの紹介が主眼ではないので、話の枝葉末節は記載しないつもりです。そのため、本記事を読むだけでは物語の内容は分からない可能性があることも、ご了承下さい。

第27話「温泉奇行」

お客様について

中年サラリーマンの木原志佐雄です。名前の由来は「気晴らし」から。

木原は温泉街で喪黒さんと出会います。その日に泊まる旅館を探していた木原に対し、喪黒さんはある旅館へと誘います。

これに対して平然と付いていく木原。人が良いのもあるんでしょうが、警戒心ゼロかのように唯々諾々と付いて行ったのには、実はある理由が。それについては後述。

旅館の名前は「幻怪亭」。怪しさMAXですが、喪黒さんは木原の意向はお構い無しに部屋を取ります。こんな高そうな部屋を一人で!?と驚く木原に対して

部屋代のことならご心配なく、割安にしてもらいましたから

と言う喪黒さん。全額奢りじゃないんかいと木原が思ったかは定かではありませんが、ともあれ二人はチェックインし、温泉へ。

温泉に入りながら自己紹介する喪黒さん。ちなみに、このシーンで喪黒さんの名刺がウォータープルーフ(防水加工)である事が分かります。喪黒さん自身の事が明かされる場面は少ないので、こんな情報でも貴重です。

喪黒さんは、木原の寂しそうなオーラを嗅ぎつけ、彼に声を掛けたのだと言います。そして喪黒さんは木原のために、温泉から上がった後に饗宴を催すのでした。

二人の芸者

喪黒さんは宴の場に芸者さんを二人手配していました。

その内の一人は木原の細君に瓜二つの見た目をしていました。それでは流石に気が休まらないだろうと、喪黒さんは自身にお酌をしていた芸者さんを木原に回すことに。

もう一人の芸者さんはちいちゃんという一番の売れっ子でした。その若さから自身の妻に似ている訳もなく、木原は安心してお酌を受けます。

こうして、出会いこそ唐突かつ奇怪であったものの、結果的に喪黒さんの計らいに感謝する木原でしたが、楽しさのあまり、宴の最中に酔い潰れてしまいます。

その後、芸者の二人が去ってしまった場で木原は喪黒さんに自身の気持ちを詳らかに語ります。自身はこれまで、奥さん以外の誰かと二人でお酒を飲んだ事も無いのだということ。そして、喪黒さんの言う通り、自身には寂しい気持ちがあり、この温泉街で何かが起きるのではないかと密かに期待していたということを……。

木原が冒頭で喪黒さんに付いていく事に対して、昔読んだときは、木原が単なるお人好しなのかなとしか感じていませんでしたが、今になってみると、木原は何かしらの変化・冒険を求めていたからこそ、怪しげな喪黒さんに付いていったのだとよく分かります。その変化というのが、良いことか悪いことかは分からなかったとしても……。

自身の胸中を明かした木原に対し、喪黒さんは「あなたの望みを叶える」と伝え、ドーン!を掛けます。

すると、木原の部屋にちいちゃんが戻ってきてくれました。喪黒さんは、これまで奥さん以外とお酒を飲んだ事が無いという木原に、他の女性とお酒を飲む機会を与えてくれた訳ですね。

しかし、最終的には一晩飲み明かした相手がちいちゃんではなく妻似の芸者だった事が分かります。おそらくは喪黒さんのドーン!によって木原は催眠状態になり、意図的に錯覚させられたのでしょう。

この、一夜明けたら相手の風貌が予想と違ったというオチは、17話「夢のあと」に若干類似していますね。

呆然とする木原に対し、芸者が花代(代金)として10万円を請求するところで物語は終わります。

この程度ならまだマシなほう?

木原は典型的な唆(そそのか)され型のお客様ですね。これといった落ち度が無いが、喪黒さんに目を付けられただけで被害を受けてしまったケースです。

ただ、その代わりといっては何ですが、被害の程度は小さかったほうです。喪黒さんに関われば下手すれば死亡や廃人、そうでなくても大怪我や社会的に抹殺されるケースもある中で、木原の被害は

  • 夢が叶ったとぬか喜びしてしまった事への落胆
  • 花代(代金)として10万円

この2点に留まるのですから。

このオチですが、木原にとっては前者と後者、どちらが辛いんでしょうね? 若い頃に読んだ時は、10万円は大金だが大した被害ではないんじゃないか、と思ってました。ただ、自分が歳を重ねてくると、お金の事よりも夢が叶ったと一度持ち上げられてから、実は騙されていたと気付く事の方が辛いのかなと感じるようになりました。木原の夢は本人次第で幾らでも叶えられそうな願いですが、こうして落とされると、本人にとっては人生でもう二度と手の届かないもののように思わされたのではないでしょうか。

さて、木原の心情について考えるのはこれくらいとして、客観的にみて花代10万円というのはどんな金額なのかという点にも興味が湧きました。

そもそも、芸者遊びにどのくらいお金が掛かるのか皆さんご存知ですか? 私は知らなかったので、この機会に調べてみました。

上のページによれば、舞妓さんか芸妓さんを一人呼ぶ際に5〜9万円掛かるのが相場との事でした。

話の流れからして、木原はいわゆる一次会の費用を払っているようにもみえません(喪黒さんがしっかり回収した描写が省略されている可能性もありますが……)。となると、一晩(一次会も含めて)好き放題に飲んで10万円というのは、最後の相手がちいちゃんでなかったのは木原にしてみれば残念でしょうが、請求された花代としては妥当、むしろ割安だったくらいじゃないかと感じます。

こういった点からしても、総合的には木原の受けた被害はまだマシなほうだったといえるでしょう。

アニメ版との違い

本エピソードは2回アニメ化されています。「ギミアぶれいく」の中で放映されたバージョンと、『笑ゥせぇるすまんNEW』でリメイクされたバージョンです。

このラストでの請求金額は、ギミアぶれいく版は漫画版と同じく花代が10万円でしたが、『笑ゥせぇるすまんNEW』版では花代が50万円に増額されていました。この額はさすがに法外ですね。

ラストシーンが10万円払えではオチとして弱いとNEWの製作陣が考えたが故に、この金額になったのでしょうが、ただ金額を高くすればいいってもんじゃないと思うんだけどな〜。木原も10万円ならともかく、この金額だと自分で払うには手に余るでしょうから、警察に駆け込むんじゃないですかね。そういった話の隙が生まれる点でも、50万円という金額設定はどうなのかなと思ってしまいました。

ちなみに被害の規模が旧アニメ版よりも拡大する点は、漫画版の第14話「白昼夢」のリメイクでも同じでした。

当然といえば当然ですが、やはりアニメでは出来る限り派手な展開が求められるのでしょうね。個人的には、木原が夢に手が届きかけ、しかしそれが叶わなかったという部分にクローズアップしてもらいたいと思いましたが、それをうまく表現するのはなかなか難しそうです。被害金額という分かりやすい部分が強調されるのも止むを得ないのかなと思いました。

以上、『笑ゥせぇるすまん』第27話の感想でした。