あるこじのよしなしごと

東京の片隅で、妻と4歳の息子と三人で暮らしています。 ボードゲーム、読んだ漫画・本、観た映画・テレビ、遊んだゲーム、育児について、その他日常などを綴っています。

漫画『笑ゥせぇるすまん』第29話「安心カプセル」感想

ざっくり言うと

お客様は車の中で過ごすと落ち着く性分。第8話「イージー・ドライバー」のお客様と同一人物。人生で二度も喪黒さんの餌食になった不幸なお客様。

こんにちは、あるこじ(@arukoji_tb)です。

漫画『笑ゥせぇるすまん』第29話の感想です。
感想の性質上、展開やオチなどに多々言及することになるため、ネタバレ多数になります。ご注意下さい。
他方、あらすじの紹介が主眼ではないので、話の枝葉末節は記載しないつもりです。そのため、本記事を読むだけでは物語の内容は分からない可能性があることも、ご了承下さい。

第29話「安心カプセル」

お客様について

サラリーマンの浦成平一です。名前の由来は分かりません。そして驚く事に、8話「イージー・ドライバー」のお客様と同姓同名です。

浦成さんの趣味は車の中で生活を営む事です。元々は家庭の事情から、車内に逃げ込んだ形のようですが、今となっては車の中が最も落ち着く性分になったようです。

しかし、浦成さんが「イージー・ドライバー」のお客様と同一人物だとしたら、あれだけの事をやらかした後に、車の免許が取れたのでしょうか!? もし、そうならびっくりですが……この点については後述しています。

快適車内生活

密閉された狭い空間に安心を覚えるという話は、以前にもありました。第11話の「押入れ男」です。この話では喪黒さんは、狭い空間に入ると安心する心理として、胎内回帰の事を語っていました。

第29話でお客様が愛する空間は、押入れの中ではなく車の中でした。押入れの話よりは、車の中が安心してのんびりできるという話のほうが個人的には共感できました。

仕事終わりにネクタイを外して、少し豪華なお弁当を食べながらリラックスする浦成さん。なんか少し憧れませんか?

私自身、浦成さんの行動には共感できました。深夜に車で高速道路を走り、休憩・仮眠のために寄ったサービスエリア。そこでコーヒーを買って、車内でシートをリクライニングにしてゆったり休憩していると、何とも言えず満たされた気持ちになったのを覚えています。普通に部屋でのんびりするのとは、また別の安らぎがあるんですよね。

しかし、浦成さんの車は寿命を迎えてしまいます。浦成さんにとっての安住の空間は、残念ながら失われてしまいました。

悩む浦成さんに喪黒さんはカプセルホテルを紹介するのですが、密閉度合いが低く、また他人のいびきなどもあり、浦成さんには不適合でした……。ちなみに、浦成さんはいびきの出所を「下からだ!」と言う場面があるのですが、下で寝ているのは喪黒さんです。

カプセルホテルが向かなかった浦成さんに喪黒さんが用意するのが、この話のタイトルにもなっている安心カプセルです。果たして、浦成さんはこのカプセルで安心を得られるのでしょうか……。

社会の中で生きることの必要性

詳細なオチは割愛しますが、結局浦成さんは安心できませんでした。正確には、安心カプセルに入っている間は安心できたのですが、カプセルから出た後に進退窮まる結果となります。

11話「押入れ男」といい、この話といい、A先生からは社会から隔絶して生きることの危険性に関するメッセージが込められた作品が多いです(浦成さんは仕事には普通に行っていたようなので、元々は社会から隔絶していたという訳ではなかったのですが……)。

その最たる例が『明日は日曜日 そしてまた明後日も……』という短編です。ブラックユーモア短編集の2巻に収録されているこの作品では、両親に過保護に育てられた青年が、ある些細なつまづきから社会に上手く溶け込めなくなっていく様子が描かれています。

いわゆる「引きこもり」について描かれたのがこの作品なのですが、発表されたのが何と1971年! 厚生労働省が定義するところの「引きこもり」という概念が世間で認識されたのは平成に入ってから(つまり、1989年以降)といわれているので、A先生の先進性に驚かされます。

二人の浦成さんは同一人物なのか?

さて、本エピソードの大きな特徴は、過去に登場したのと同姓同名のお客様であるという点です。お客様のテーマも「免許を取りたい」「自動車の中で過ごしたい」と、いずれも車が絡んでいます。このお客様は同一人物なのでしょうか?

結論から言うと、二人は同一人物です。

しかし、漫画版だけ読んだ際は、私は二人は似ているが別人だと思いました。

以下、漫画版とアニメ版の描写から、上記について解説します。

漫画版からの解釈

二人は別人という考えの元になった情報は、実はもう記事の中で既に提示しています。今回の記事の中で紹介したコマを見ると、二人は同一人物ではないという事実が導き出されるのです。

ポイントは免許取得時期とスバルに乗っていた期間です。中古のスバルを「16年間乗っていた」と浦成さんは話しているので、当然免許を取ったのも16年以上前という事になります。冒頭で出ている浦成さんの情報によれば彼は51歳ですので、免許を取ったのは少なくとも35歳より前の時点でなければなりません。

しかし、8話「イージー・ドライバー」の浦成さんは44歳とキャプションが付いています。これでは年齢が合いません。年齢の辻褄が合わないので別人と私は判断しました。

アニメ版からの解釈

それでは何故、同一人物という結論になるかというと、何のことはないアニメ版では完全に同一人物として扱われているためです。アニメ版でそのように扱われた以上、製作側では同一人物とみなしているとしか考えられません。上で漫画版での齟齬を挙げましたが、これは単なるミス(というか細かい整合までは取っていないだけ)でしょう。

実際の描写についてですが、アニメ版の喪黒さんはスバルの中でくつろぐ浦成さんに対して

お忘れですか、浦成さん。私ですよ、私。

と声を掛けています。そして、当の浦成さんもそれに対して「その節はお世話になりました」と喪黒さんに返事をしています。

しかし、浦成さんはお世話になったどころか、大変な迷惑を掛けられた筈です。具体的には、免許取得の練習中、喪黒さんに唆されて、飲酒の上に他人のトラックを盗んで無免許運転し、パトカーに追われながら数々の道交法違反を犯して走行、最終的にはラブホテルの壁に突っ込み部屋に穴を開ける(アニメ版の展開)事になります。

罪状を列挙するだけで笑ってしまいますが、これだけの事をやらかした浦成さんが何故免許を取る事ができたのか?

これについて、アニメ版で浦成さんが語ったのは

示談で何とか収めたんですが

の一言だけでした。示談できるレベルじゃない気もしますが、ともかく浦成さんは免許が取れたとの事でした。それを聞いた喪黒さんが、よかったよかったと言葉を返しているのには苦笑してしまいます。

喪黒さんの被害に二回も遭ったお客様は浦成さんだけです。喪黒さんに掻き回されながらも何とか手に入れた免許、ひいては車が縁で、またしても喪黒さんに出会い、更なる被害に遭うのですから、浦成さんもよくよく運の悪い人としか言いようがありません。

以上、『笑ゥせぇるすまん』第29話の感想でした。