あるこじのよしなしごと

東京の片隅で、妻と4歳の息子と三人で暮らしています。 ボードゲーム、読んだ漫画・本、観た映画・テレビ、遊んだゲーム、育児について、その他日常などを綴っています。

漫画『笑ゥせぇるすまん』第31話「長期休暇」感想

ざっくり言うと

お客様は長期休暇を持て余すサラリーマン。喪黒さんの紹介で魅力的な女性の看護ボランティアを務めるが、その入れ込み様は妻との不和を引き起こすことになる。アニメ版は漫画版で気になったオチの齟齬が上手く補正されている。

こんにちは、あるこじ(@arukoji_tb)です。

漫画『笑ゥせぇるすまん』第31話の感想です。
感想の性質上、展開やオチなどに多々言及することになるため、ネタバレ多数になります。ご注意下さい。
他方、あらすじの紹介が主眼ではないので、話の枝葉末節は記載しないつもりです。そのため、本記事を読むだけでは物語の内容は分からない可能性があることも、ご了承下さい。

第31話「長期休暇」

お客様について

中年サラリーマンの長井安実です。一応補足しますが男性です。名前の由来は「ながいやすみ」から。

長井は電車内および公園で時間を潰していたところを喪黒さんに見かけられ、声を掛けられ、悩みを相談する事になります。

会社から支給された一ヶ月の長期休暇をどう過ごしていいか分からない。それが長井の悩みでした。

個人的には「何て羨ましい……」と思いますが、長井は休みが長過ぎて持て余しているようでした。家でのんびりして過ごせばいいのではと思いますが、それは奥さんに嫌な顔をされてしまうとのこと。別のコマで登場しますが、長井はいかにも奥さんに頭が上がらないといった感じでした。

そんな長井に喪黒さんは「毎日通っても飽きない所を紹介する」と伝えます。そんな所があるのか? と訝しがる長井でしたが、他にあてもなく喪黒さんの言うままに指定されたマンションの一室を目指す長井。

果たしてそこには病によってベッドで療養している女性が居たのでした。長井は魅力的な女性が相手だったため、献身的に彼女に尽くすのですが……。

サバティカル休暇制度

ワークライフバランス、働き方改革などの言葉が叫ばれる2010年代後半の昨今ですが、このエピソードが描かれたのは1990年代前半です。長井は一ヶ月の休暇という大変に長い休暇を取得していますが、この頃にはそうした長期休暇制度が普通に導入されていたのでしょうか?

軽く調べてみたところでは、あまりそうした情報は見つかりませんでした。1990年代はまだまだ休暇制度を福利厚生として積極的に推進していくという土壌が日本には無かったようです。

ちなみに長井が会社から支給されたような、一定期間働いた後にもらえる一ヶ月単位の長期休暇はサバティカル休暇などと呼ぶようです。

サバティカル - Wikipedia

Wikipediaでは「庭いじりしかやる事がない」として、こうした長期休暇を欧米ではガーデニング休暇などと呼ぶ事がある点についても言及されています。

まだ日本に長期休暇がさほど一般的でない時代に、A先生がどうやってこの話を構想したのかは不思議な点です。今回の長井の話は上で挙げたガーデニング休暇という言葉から想起される内容である事を考えると、欧米での風習を取材した中で考え出したプロットだったのかもしれませんね。

奉仕する相手が誰であるかは関係ない?

相手が魅力的な女性の身の回りの世話という事で長井は生き生きと取り組みますが、その様子を不審に感じた奥さんからは浮気を疑われます。長井はボランティアでおじいさんの世話をしていると嘘を伝えますが、「もしかして髪の長いおじいさんじゃないの?」と突っ込まれます。女性の勘は鋭いですね……。

ある日、花束を持っていつも通り訪れようとしますが、何故かその日は部屋のドアが開きませんでした。諦めて帰ろうとするところで長井は喪黒さんに出会います。

喪黒さんはボランティアの相手に長井が好意を抱いている事を見抜きます。というか、はじめから喪黒さんがそう仕向けたんですけどね。

そんな喪黒さんからの勘繰り(当たってるんですけど)に対して、あくまで彼女には個人的な感情を抱いていないと反駁する長井。しかし、喪黒さんは

もし奉仕する相手がわがままなおじいさんやおばあさんでも熱心に尽くせますか?

と更に追及します。それに対して、長井は

ええ、モチロン! 相手は誰でも同じですよ!

と返すのでした。

ともあれ、この日は世話はしなくてよいと言われ、長井は花を持ったまま自宅に帰ります。

そして、奥さんにブチ切れられます。浮気を疑われている中で、普段やらない花束を持ち帰るというあからさまに変な行動を長井は取りましたからね……当然の結果です。奥さん曰く、

どうせ、よその女の人にあげるつもりが断られたんでしょ!

素晴らしい、ほぼ正解です。

長井は花束を処分する事が勿体なくて出来なかったのでしょうか? それとも、家に持ち帰ったら良くない結果になる事が想像できなかったのでしょうか? 何にせよ、花束を持ち帰ったのは明らかな失策でしたね。誰でもいいから譲渡するか、その辺で捨てるかすべきでした。

奥さんとのやり取りで憔悴した長井が再びボランティアに向かうと、そこにはいつもの女性ではなく薄汚い老人が世話をしてもらいたがっている姿がありました。これに対して喪黒さんの

いくらボランティアといっても相手によって奉仕する態度が変わるのも無理のないことですなあ

というモノローグが被さり、この話は幕を閉じます。

この後どうなる?/アニメ版での違い

さて、この話を読み終えて私が思ったのは、長井はおじいさんの世話を放置して帰るだけでは? という事でした。いつもの喪黒さんの仕打ちに比べると圧倒的に軽い。なんせ、ちょっと心苦しい部分はあれど、スルーしてしまえば被害ゼロです。まあ、長井がそういう事が出来ないタイプだと喪黒さんは見抜いているのかもしれませんが……。

しかし、やはり同様に考える人がいたのか、アニメ版ではその点に対して改変が入っていました

アニメ版では長井が奥さんに浮気を疑われた結果、長井が家から出て行けと言われるのです。そして、行く先が無く困った長井に対し、喪黒さんが「あの部屋で生活すればいい」と助け船(?)を出すのですね。

これはなかなか上手い改変だと思いました。長井が部屋に行かなければならない理由が補強されていますし、また件の女性と同居できるという長井(ひいては視聴者)の期待感を煽った上でラストに落とすという効果も生んでいます。面白いです。

また、ラストの喪黒さんのコメントがアニメ版では

相手が老人であれ美人であれ、神の心で奉仕するっていうのは、本当に尊い事ですね〜

と若干変わっています。喪黒さんの語調は皮肉的なので、結局はボランティアといえど、相手によっては態度が変わっちゃうよねという漫画版と同様のメッセージがそこには込められているようです。ただ、漫画の台詞をそのまま使うとあまりにもストレート過ぎて、視聴者から批判を受ける可能性があるとアニメ版のスタッフは考え、内容を変えたものと思われます。

以上、『笑ゥせぇるすまん』第31話の感想でした。

笑ゥせぇるすまん (2) (中公文庫―コミック版)

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