三玖と四葉が対話する姿が描かれる。本音でぶつかり合う中で、三玖は自分が好きな自分へ成長できたことを、四葉は五つ子の皆と正面から向き合いたいという気持ちをそれぞれ認識する。
こんにちは、あるこじ(@arukoji_tb)です。
年明けから大分経ちましたが、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
漫画『五等分の花嫁』116話「五時間一部屋」を読んでの感想・考察です。感想・考察の性質上、展開やオチなどに多々言及することになるため、ネタバレ多数になります。ご注意下さい。
なお、下記は前話(115話)の感想・考察記事、および感想・考察の記事一覧へのリンクとなります。よろしければ、ご覧下さい。
◾️前話の感想・考察記事
◾️感想・考察記事 一覧
出来事のおさらい・感想
116話で起きた出来事を簡潔に箇条書きすると、こんな感じでした。
- 三玖と四葉がカラオケをしながら一夜を明かす。
- 三玖は四葉に対して怒りの気持ちを持つと本音で伝え、その上でその気持ちを受け止めてほしいと四葉に伝える。
- 四葉は三玖と会話することで、五つ子全員に会いたいという気持ちを抱く。
116話では三玖と四葉が会話する様子が描かれました。
私は三玖が四葉の気持ちを応援することを表明するのでは……と思っていましたが、実際はそんな単純な話ではなかったですね。三玖が四葉に抱く感情はもっと複雑なものでした。
四葉は三玖に、自身の風太郎に対する恋心を明確に告げました。それを聞いた三玖のリアクションは、やっぱりそうだったのかという感じでしたね。
学園祭の夜でも、三玖は二乃のもとを訪れて諭すなど、落ち着いた行動を取っていました。四葉と風太郎、彼らの気持ちを三玖は既に察していたのかもしれません。
以下、今回特に気になった点を考察します。
考察
三玖が四葉に抱く気持ちは?
三玖が四葉に対して抱いている気持ちはなかなか複雑でした。一つずつ紐解いてみます。
風太郎と四葉が結ばれたことに横槍を入れるつもりはない
少しギスギスした雰囲気を和ませようとカラオケで盛り上がろうとする二人。しかし、慣れないカラオケで空回ってしまいます。
間違って、四葉が歌おうとしたところで演奏停止を押してしまう三玖。これは気まずい。
場を和ませようとしたはずのカラオケで、かえって仲を拗らせるのではないかと三玖が不安を膨らませる中で
本気で横取りしようとしてるみたい
という風に四葉に誤解されるのを恐れている気持ちが描かれていました。
この心情からは、三玖は風太郎と四葉の仲に割って入ることはもう考えていないことがわかります。
四葉に対して怒っている
一方、三玖はその後の場面で
でも怒ってはいる。私だったらフータローを困らせるようなことはしない。
とも四葉に告げていました。これは、四葉が風太郎と結ばれたのに煮えきらない気持ちを持っているからでもありますし、またその後の
どうしても感情が荒だってしまう。それだけ本気だった。
という台詞から、自分以外が風太郎と結ばれる事実に対する悔しさがあるからでもあると読み取れます。
四葉にその感情をぶつけることを申し訳なく思う
怒りの感情を抑えきれない三玖でしたが、それでも四葉に対する気持ちを
ごめんね、四葉。行き場をなくした私たちの怒りをどうか、受け止めて。
と内心で独白しています。怒りの感情は抑えられないが、四葉にぶつけるのは本来筋違いだとも思っているのですね。
なかなか複雑な心理ですね。ただ、どの気持ちも理解ができるものだと思いました。また、高校生にも関わらず、こうして一歩引いた見方ができる三玖はかなり大人だなとも思ったのですが、他の方はどう思われたでしょうか。
五つ子が互いに影響しあってきたことの示唆
この回は、五つ子同士の行動や言葉がそれぞれに互いに作用し合って、現状が築かれているという事が、四葉の周囲の五つ子を介して描かれているように思いました。それぞれの関与について整理してみます。
一花:自分のやりたい事をやりたいようにする
今回のエピソードと一花の行動との相似点としては、自分のやりたい事をやるというものが挙げられます。
どの歌を歌うか、というところで四葉が決心する場面ですね。
この場面を見て、多くの人はかつて、スクランブルエッグのエピソードで思い悩む一花に四葉が声を掛け、救済する場面を思い出したのではないでしょうか。
四葉は後に一花から、同じようなアドバイスを受けます。自分が行った助言がそのまま自分に返ってきたような感じでしたが、この場面はその繋がりを意識するとより深く感じられます。
二乃:恋愛で五つ子は互いに敵でなく、また仲間でもない
二乃は三玖に対して
恋愛で私たちは敵でも仲間でもない
と伝えていたようです。
この点については、自分には直接二乃が三玖にそうした事を伝えている場面が見つかりませんでした。(もし、伝えている場面を見落としていたらすみません)
ただ、一花が同種の発言をしている箇所はありました。修学旅行の最終日ですね。
このとき、三玖は風太郎と二人で行動していたので一花のこの発言は聞いていません。そのため、二乃が一花の言葉を伝言する形で三玖に伝えていたのかもしれないと私は読み取りました。
三玖:四葉と対話する
その心理を上で紐解きましたが、三玖はこの場面で四葉と直接対話しています。このエピソードにおいては五つ子の中で最も強く四葉に関与している存在です。
五月:二人がカラオケで歌う曲に辿り着くきっかけを作っている
この話に一番関与が薄いのが五月です。ほぼ関与しているポイントは無いのですが、全くの無関係というわけでもないように思いました。
今回の話、五月が絡む要素は無いのか……と思ってたけど、違いました。
— あるこじ (@arukoji_tb) 2020年1月7日
二乃がヘビロテしていた曲は、多分『恋のサマーバケーション』という映画の主題歌ですよね。
二乃が元々観たいと言っていた映画ですが、仲直りでその映画のチケットを実際に買ったのは五月でしたね。#五等分の花嫁#ネタバレ pic.twitter.com/SpVDT61sfu
二人がカラオケで歌い、徐々に空気がほぐれていくきっかけとなった「ラブ☆バケーション」という楽曲。
そのタイトルと二乃がヘビーローテーションしていたという事実から、おそらくは映画『恋のサマーバケーション』の主題歌であると推測できます。
これについて、関与しているのは二乃と考えるのが素直な見方かなとは思いますが、一方で「七つのさよなら」編で、この映画のチケットを買ってきて仲直りのために一緒に観ようと働きかけたのは五月でした。
もし、二人で仲直りとして観に行った映画でなかったら、二乃はそこまで肩入れしなかったかもしれない……というのは想像が飛躍しすぎかもしれませんが、いずれにせよこのエピソードで五月が全く関与していないかというと、そんな事はないのかな、と思ったのでした。
自分のことを好きになれた三玖
この話の最後、三玖は四葉に変装するためのリボンを海に投げ捨てます。
その姿は、もう誰かに変装しなくても、自分は自分として生きていける、と宣言するかのようでした。
最初に風太郎と出会った頃の三玖は、皆の中で自分が一番の落ちこぼれだと思っていました。
変装が五つ子の中で最も得意という設定も、自分に自信の無いことの裏返しだったのかもしれないと今では解釈しています。自分以外の姉妹の姿になれるという事が、三玖にとって楽しみであり、また一つの救いだったのかもしれません。
しかし、本話のラストシーンで三玖は
私は四葉になれなかったけれど、四葉だって私にはなれない
とモノローグしていました。
自分のことを好きでもない人が「他の人は自分になることができないだろう」という気持ちを持つ事はおそらくないでしょう。
自分自身が嫌いな人は自分の価値を低くみているわけで、他の人が自分になりたいという仮定自体、持ち出す事は無いはずなのです。
自分自身を好きでいられる三玖の今の気持ち、その成長ぶりが上手く表された言葉だったと強く感じました。
まとめ
116話を振り返ってみると、行われていたのは三玖と四葉の会話ですが、実質的にはほぼ三玖メインの回だったなという感想です。この回を通じて、三玖の現状の気持ちがよく理解できました。
そして、三玖と話すことで、四葉は五つ子と正面から向かい合う覚悟を決めることができたように思えます。
次回はおそらく、主に四葉がペンタゴンで一花・二乃・五月と会話することになるのでしょう。彼女本来の明るさで、正面からぶつかっていく四葉の姿が見られると良いなと思います。
以上、『五等分の花嫁』116話「五時間一部屋」の感想・考察でした。
§ 本記事で掲載している画像は(C)春場ねぎ・講談社/『五等分の花嫁』より引用しています。