四葉が転校先で風太郎と出会ってからの心情および行動が明らかになる。物語の時間軸は現在に立ち返り、五月の四葉に対する思いも描かれる。
こんにちは、あるこじ(@arukoji_tb)です。
漫画『五等分の花嫁』90話「私とある男子②」を読んでの感想・考察です。感想・考察の性質上、展開やオチなどに多々言及することになるため、ネタバレ多数になります。ご注意下さい。
なお、下記は前話(89話)の感想・考察記事、および、感想・考察の記事一覧へのリンクとなります。よろしければ、ご覧下さい。
◾️前話の感想・考察記事
◾️感想・考察記事 一覧
出来事のおさらい・感想
90話で起きた出来事を簡潔に箇条書きすると、こんな感じでした。
- 四葉と風太郎の再会時、および、それ以降における四葉の心情が明らかになる
- 五月は四葉から、自分の代わりに風太郎との縁を断ち切って欲しいと依頼されて零奈になった
- 四葉は風太郎のことが好きである
- 話の時間軸が修学旅行後へと立ち返る
四葉の風太郎に対する秘めた思いが、ひたすら描かれた回でした。かなりの部分をすっ飛ばして進んだようにも思えますが、全てのシーンを振り返っていては尺が足りないでしょう。
また、今回の話を読めば、その他のシーンはわざわざ裏側を描いてもらわなくても個々でフォロー可能でしょうから、そういう意味でも全シーンのフォローは不要でしょう。
自身のTwitterでも呟いたのですが、今回の話で描かれた四葉の心情を考えてみて、個人的に改めて辛いなと思わされたのは「勤労感謝ツアー」の一コマです。
今回の話を読んで、改めて心痛くなったのはこの場面だな……四葉、めっちゃ勇気出したんだろうに。
— あるこじ (@arukoji_tb) 2019年6月18日
この時ばかりはノリが悪かった風太郎に猛省を促したい。ここで「お前の望み」を叶えてやればよかったじゃん! という気持ちになってしまう。
#五等分の花嫁 pic.twitter.com/lwl4vyEZEy
四葉がペアルックをやるか? と風太郎に持ちかける場面です。四葉にしては珍しく浮かれているというか、それまでの好意を隠そうとする彼女らしからぬ誘いでした。かなりの勇気を出してそう発言したと思いますが、風太郎にはその申し出を一蹴されてしまいました。
断られた四葉は空元気で誤魔化していますが、この時の四葉の気持ちを考えると悶えますね……。
色々と重い話があった一方で、和んだのはこのコマの中央にいる五月の姿です(笑) Twitterでこのコマにフォーカスが当たっているつぶやきを見かけて、笑ってしまいました。アメリカンドッグを無心?で頬張る五月の姿はとても可愛らしいですね。
三玖が将来、料理関係の職に就きたいと本格的に考え始めた様子も描かれました。パン作りを重ねて風太郎に食べてもらえた事が自信に繋がったのでしょう。さりげなく二乃は結構、辛辣なリアクションを返してますね(笑)
エピソード後半で現在に時間軸が立ち返った事から、四葉の過去編はこれで終わりとみて良さそうです。
以下、今回特に気になった点を考察します。
考察
四葉と風太郎の再会
答案用紙は見なくても風太郎と気付いた四葉
四葉は秀才の少年が風太郎であることについて、答案用紙の氏名を見て気付くのだろう……と前話の終わり時点では考えていました。
しかし、実際には四葉は風太郎の顔を見ただけで、かつての少年だと気付きました。
なお、どうでもよいですが、この時の風太郎の目つきはかなり怖いです(笑) これはクラスメイトも近寄りがたいでしょうね……。
答案用紙が折りたたまれたままで名前が読めない状態だったことも、四葉が見た目だけで風太郎を把握できた事を示唆しています。
子どもの頃の金髪の姿しか見ていないのに、黒髪の風太郎を見て本人だと気付けるのは相当凄いですね。彼女の風太郎に対する、並々ならぬ想いをそこに感じます。
四葉は初登場時、かなりの至近距離にいましたが、それは風太郎の事を見分けようとしていたのもあったのですね。
「上杉さん」と呼ぶ理由
四葉は風太郎と再会し、最初は「風太郎君」と呼ぼうとするのですが、直前でそれを思い留まります。
その理由は、風太郎が勉強に集中する姿を見たこと、そして実際に100点という結果を出しているのを知ったことにあるのでしょう。
風太郎に対する尊敬の念、落第して転校する事になった自分自身の不甲斐なさ、かつて約束をした少女がそんな自分だと気付かれたくないという考えなど、様々な気持ちが綯い交ぜになった結果、風太郎の事を名字にさん付けで呼ぶという形になったのだと考えられます。
四葉の想い
四葉は自身に対する不甲斐なさから、風太郎にかつて会ったことがあるとは言わない選択を取ります。
しかし、ずっと黙っていようという訳ではなかった。勉強が頑張れたら、いつか伝えてもいいんじゃないか。そんな気持ちを抱いていました。
その後、病院における風太郎と五月の会話を聞き、彼もかつての四葉のことを覚えていた事が分かります。ここで素直に名乗り出られれば話は単純だったのですが……。
しかし、三玖や一花が風太郎に対する好意を持っている事に気付くと、自分だけがかつて風太郎と会っていたなんて特別扱いは許されないと考えてしまいます。
落第騒動の時に四葉が強く心に誓った、他の姉妹のために生きるという考えがそこには強く反映されています。
結果として四葉は、風太郎との思い出も、また自分の彼を想う気持ちも消してしまうという選択を取るのでした。
ちなみにこのシーンでは、かつての記憶を林間学校で取り戻した一花が、四葉をチラ見していました。一花からすれば、四葉は何で名乗り出ないの? 覚えてないの? と不思議に思っていたことでしょう。
実際に過去のカットを見ると、一花が四葉の様子をうっすら伺っている事が確かに描写されています。
零奈誕生の経緯
四葉が五月に依頼したというのが真相
四葉は風太郎との思い出を消すために、彼に別れを告げようと考えます。
しかし、自分で別れを告げようとすると、その正体が四葉である事がバレてしまうと考え、五月に代理を依頼します。
これまで私は散々、五月の単独犯説を唱えてきたのですが、その考えは間違っていましたね。零奈が生まれたきっかけはやはり、四葉が五月に依頼した事にあった事がこの話で明確になりました。
茂みにいたのも四葉
また、茂みの中にいたのが四葉だったこともここで明確になりました。
何故、四葉が場所を知らない風太郎の家付近の公園の茂みにいることができたのか? という点については明言されませんでしたが、彼女が荷物を届ける目的で来たのだと考えると、おそらくは五月と携帯等で連絡を取り合っており、風太郎の自宅の場所を教えてもらったというのが真相なのかなと感じました。
なお、四葉が五月から聞いた場所は当然ながら近所の公園ではなく風太郎の自宅だったと思いますが、四葉が上杉家に到着した時がちょうど彼ら二人が家を出て公園に向かう場面で、四葉はその後を尾けていったのだと考えれば、話の辻褄は合います。
何故、五月に依頼したのか?
ところで、五月といえば姉妹の中でもあまり変装が上手なほうではありません。昔の本人の姿を演じればいいと四葉は言っていたので、変装のスキルはそこまで要らないというのもありますが、それにしても何故、変装がもっと上手い三玖などに依頼しなかったのでしょうか?
その理由ですが、以下のような消去法で決まったのかなと思いました。
- 一花:風太郎に好意を抱いているので、それが何らかの失敗に繋がりかねない。また、結果的に風太郎を騙す事になるので、余計な悩みを本人に抱かせてしまうかもしれない。
- 二乃:所在が不明なので頼めない。
- 三玖:一花に同じ。
こう考えると、頼める先は五月だけです。あとはそれに、家出中なので比較的行動が自由である、髪型が四葉と大きく違うなどの要素も加わったのかなと思います(但し、髪型についてはウィッグ等で幾らでも誤魔化しが効くので、この辺はついでの理由くらいでしょうか)。
五月が依頼された事とされていない事
さて、五月は四葉に頼まれて、変装した姿で風太郎に会う事になります。この時、彼女が取った行動を紐解いてみましょう。
・風太郎に「もう会えない」と告げる
これは、四葉に頼まれた事ですね。依頼そのものと言っていいことです。特に疑問の余地はありません。
・風太郎に「零奈」という偽名を用いる
風太郎に名前を聞かれた五月は「零奈」と偽名を名乗ります。この命名は四葉と五月、どちらによるものでしょうか?
これは五月の独断によるものですね。風太郎に名前を聞かれ、咄嗟に母の名を名乗ったのです。
ショッピングモールで風太郎がその名を口にしても、四葉はピンときていませんでした。これは、五月が勝手に偽名を用いたことを示唆しています。
・風太郎にお守りでメッセージを伝える(不発)
中身が分からないお守りのメッセージ。これも明らかに四葉の依頼ではないですね。五月が独断でやった事です。
単純に考えて、これを行うには当時のお守りが必要ですが、それを意図して四葉が荷物を持ってきているようには思えません。
一方で、何故、家出中の五月がお守りを手に入れられたのかについては、四葉が持ってきた通学用の鞄に入りっぱなしだったからと考えられます。病院での風太郎との会話の中で、当時彼女がお守りを常時持ち歩いている事が描写されているので、その点は不自然とまではいえません。
五月の独断による行動を紐解く
四葉の依頼通り、零奈として風太郎に別れを告げた五月ですが、その場面では多分に五月のアドリブが入っていました。というか、四葉からその行動に細かい注文が付けられているわけではないので、これはある種当然のことでもあります。
しかし、その後、五月は四葉がおそらくは望んでいない行動を独断で取ります。この点について、一つずつ紐解いてみましょう。
風太郎に自身の正体を明かす(未遂)
まず、五月はその秘密を抱えている事に耐えきれず、風太郎に自身のやった事を明かそうとします。
しかし、これは突如現れた四葉によって、結果的に阻止されます。ちなみにこの点について、四葉が意図的に情報が流れる事を止めたと考える説もあるようですが、その点は私は懐疑的です。これは狙って阻止できるタイミングではなかったと私は思います。
ショッピングモールに現れる
続いて五月は、ショッピングモールに現れて自身の正体を風太郎に問い掛けます。
これは今になって考えると、五月は、四葉と五月のどちらかが少なくとも零奈であると風太郎に気付かせようとしたのかも? と思っています。
他の姉妹がこっそり来ているなどの可能性を考えなければ、ショッピングモールにいたこの二人に零奈の候補は絞られますから。
ただ、そうだとすると少し解せないのは、五月が風太郎一人の時を狙って登場したことです。
五月が零奈の正体が四葉だと風太郎に気付かせたい場合、絶対にやってはいけないのは、もちろん風太郎と四葉が一緒にいる場に出ていく行為です。それはもちろん、零奈が四葉ではない事がはっきりしてしまうからです。
しかし、風太郎が一人ということは、おそらくらいはが四葉と一緒にいるはずと推測できます。となると、風太郎が一人でいるところに出ていくのも結果として四葉のアリバイが生まれてしまう可能性が高い(というか、実際にそうなった)と考えられるのですよね。
五月は四葉とらいはが共にいるという可能性をそこまで考えていなかった、というだけなのかもしれませんが……どうして彼女がショッピングモールで現れたのかは、まだスッキリしないですね。
修学旅行先でツーショット写真を撮る
最後はこの行為です。写真の子が四葉であると風太郎が気付くことを期待して、何か思い出すきっかけになればと彼女は風太郎とのツーショット写真を撮ります。
これについて、私は四葉が写真の子本人なら、彼女とツーショット写真を撮らせたほうがより記憶を取り戻しやすいのだから、五月が写真を一緒に撮ったのは不自然と考え、故に五月は写真の子が四葉であるとは気付いていなかったという論理を展開していました。
しかし、四葉は五月に、風太郎との縁を断ち切る目的で零奈になる事を依頼していたので、四葉に気付かれないように風太郎の記憶を刺激しなければならないという制約条件があったが為の苦肉の策だったというわけですね。
この点については、単行本10巻の感想記事へのコメントで、下記のようなご指摘を頂いていました。
写真の際に四葉と風太郎が並ぶようにしたら、あからさまに五月が何か仕掛けているのはバレバレになります。
それでもその後気づかれているわけですから、五月と風太郎によりツーショット写真を撮ることは五月なりの安全策だったと考えます。
とても分かりやすい説明ですね。事実、この通りだったのだと思います。
五月の独断行動の動機は何か
上で書いた通り数々の独断での行動を取っている五月ですが、その謎めいた振る舞いの動機もこの話ではっきりしました。
全ては、一花・二乃・三玖と同じく、風太郎のそばにいて、彼に惹かれてきた四葉の幸せのためだったのですね。
しかし、四葉は自分を押し殺す選択を頑なに貫くつもりのようです。果たして、彼女の想いが風太郎に届く日は来るのでしょうか?
まとめ
90話はこれまでに提示されてきた数々の謎について明かされる、集大成的なお話でしたね。そして、四葉の風太郎に対する好意が明確になった回でもありました。
四葉の想いが風太郎に届かずに話が終わるとはおよそ考えにくいので、いつかは四葉の想いが風太郎に届く場面が描かれると考えて間違いないでしょう。
問題は、それに至る経路です。その経路として考えられるのは、
- 五月が風太郎に明かす
- 一花が風太郎に明かす
- その他理由で風太郎が自発的に気付く
このいずれかでしょう。四葉から明かす線はほぼ無いです。
次回からは修学旅行以降の話が描かれるのでしょうが、どういった導入で話が始まるのかはとても興味のあるところです。そして、その話の始まり方によって、上で挙げた3ルートのどれになるかが判断できるかもしれません。
以上、『五等分の花嫁』90話「私とある男子②」の感想・考察でした。
§ 本記事で掲載している画像は(C)春場ねぎ・講談社/『五等分の花嫁』より引用しています。