あるこじのよしなしごと

東京の片隅で、妻と4歳の息子と三人で暮らしています。 ボードゲーム、読んだ漫画・本、観た映画・テレビ、遊んだゲーム、育児について、その他日常などを綴っています。

漫画『笑ゥせぇるすまん』第34話「日曜クラブ」感想

ざっくり言うと

お客様は月曜病の悩みを抱えるサラリーマン。喪黒さんは彼に、いつでも日曜日の雰囲気を味わえる「日曜クラブ」という施設を紹介するが……。ストレスの無い人生など無く、ストレスの上手な解消法を見つけることが重要と喪黒さんは語る。

こんにちは、あるこじ(@arukoji_tb)です。

漫画『笑ゥせぇるすまん』第34話の感想です。
感想の性質上、展開やオチなどに多々言及することになるため、ネタバレ多数になります。ご注意下さい。
他方、あらすじの紹介が主眼ではないので、話の枝葉末節は記載しないつもりです。そのため、本記事を読むだけでは物語の内容は分からない可能性があることも、ご了承下さい。

第34話「日曜クラブ」

お客様について

中年サラリーマンの内名木洋介です。名前の由来は……分かりませんでした。これといって掛かっている部分が無いのでしょうか? もしエピソードとの関連が分かる方がいましたら、コメントで指摘頂けたらありがたいです。

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内名木が抱える悩みはずばり月曜病。休み明けに仕事に行くのが億劫な気持ちになるのです。サザエさん症候群などという呼び方もありますね。

ちなみにこれは日本に限った悩みという訳ではなく、海外でもBlue Monday(憂鬱な月曜日)などの言い回しがあります。全世界で共通の悩みといえますね。

日曜クラブ

内名木に対し、喪黒さんが紹介するのが日曜クラブという施設です。

ちなみに、この施設に内名木を連れて行く際の喪黒さんの立居振舞いは、いかにもセールスマンといった感じでした。

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内名木が喪黒さんに声を掛けられたのは月曜朝なので、急にこれから施設に行こうと言われても会社がある訳です。そのため喪黒さんの誘いを断ろうとするのですが、喪黒さんはそれならばと内名木を突き放すような態度を取るのですね。

内名木からすれば、ここが大きな運命の分かれ道だったのですが、喪黒さんの手練手管によって、結局は付いていく選択を取ってしまいました……。

日曜クラブに着くと、喪黒さんは内名木にパジャマに着替えるように言います。そして、徐にクラブの説明を始めます。

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ずっと日曜日のまま時間が止まったクラブ、それが日曜クラブです。月曜病の内名木にとっては、そして世間の大多数の人にとっても、夢のようなクラブですね。

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内名木は日曜クラブで昼風呂にじっくり浸かり、その後お風呂上がりにビールとおつまみを堪能します。

また、この後、内名木はテレビをのんびり眺めるのですが、その内容がゴルフトーナメントの中継でした。おそらく日曜のテレビを録画して、そのまま流しているのでしょう。骨の髄まで日曜気分を味わえるよう、日曜クラブは運営されているようです。

平日でも日曜気分を存分に味わえる日曜クラブ。一度味わってみたいですね。これを実際に体験してみようとするなら、スーパー銭湯あたりでのんびり過ごせば似たような気持ちになれるのでしょうか。それでも、日曜の気持ちを維持できるかはなかなか難しそうですが……。

背徳感がもたらす快感

平日の昼間、世間の人々が働いている時間帯にお風呂に入るといった体験の不思議な高揚感、快楽については本作でも度々登場します。

例えば第5話の「ナマケモノ」です。

この話の中で、お客様の佐保が昼間から営業をサボってお風呂で過ごす描写があります。この行動に対して佐保は

なんかこう、まっぴるまから風呂へ入ってるってことに、共通の後ろめたさみたいなものがありましてね

と語っています。

また、第14話「白昼夢」でも似たような話が出てきます。

こちらではお風呂に浸かる訳ではありませんが、昼間からお酒を飲む気分(?)を味わうという話なので、世間の挙動と異なる事をしている点では共通しています。

この中で喪黒さんは

今ごろ世間の人はみんな一生懸命はたらいているんだなと思ってのんでると、奇妙な快感、反社会的な背徳的なとでもいうような快感を感じるのです

と語っています。

後ろめたいが故の奇妙な快感というのは程度の差こそあれ、誰もが一度は体験したことがあるのではないでしょうか。

たとえば、学校や会社を体調不良で休んだ日に、そうこうする内に回復してきたので遊んだりテレビを見たり。スケールの小さな話で恐縮ですが、私の場合はそんな時に、やっぱり何か悪い事をしているようで、それでいて甘美な時間だったような気がします。

日曜クラブの後遺症

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さて、内名木が存分にリフレッシュして日曜クラブの外に出ると、普通に夜が更けていました。喪黒さんは日曜のまま時が止まったクラブと話していましたが、あれはあくまで比喩的表現だったようですね。喪黒さんがお客様に提供するものは現実的な存在と超常的な存在に大別できますが、日曜クラブは前者のようですね。

会社を無断欠勤したことに奥さんは怒っています。まあ、当然ですね……。現代であれば携帯電話があるので、喪黒さんに付いていくと決めた時点で会社に連絡を入れれば無断で休む事だけは避けられたかもしれませんが、本作の連載当時(1991年)では、まだまだ個人に携帯電話は普及していません。日曜クラブにもそのポリシーからして電話は無いでしょうし、会社への一報は無理な話といえます。

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翌日、喪黒さんに会った内名木はお礼を言いますが、日曜クラブに行ってよいのは1ヶ月に一回だけと制限されます。散々良い思いをした後だけに、この制約は厳しい! 喪黒さん、後出しが酷くはないでしょうか……。

その後、出社した内名木は当たり前ですが上司から無断欠勤のことを叱責されます。上司は内名木が無断欠勤した事を心配してあげてもいいように思いますが、とはいえ、叱責されてもやむを得ない状況です。仕方ないですね。

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上司の叱責に耐えかねて会社を飛び出し、日曜クラブへと向かう内名木。1ヶ月どころか1日と保ちませんでしたね。そして、そうなる事を読み切っていた喪黒さんが立ち塞がり、内名木を日曜クラブの永久会員とした所で物語は幕を閉じます。

ラストシーンでは永久会員となった内名木が廃人となった姿が描かれます。ストレスの一切から解放された彼は、果たして幸せなのか不幸せなのか……それは本人にしか分かりません。

ストレスは無くならない

この話のラストで喪黒さんが語りかける言葉は、笑ゥせぇるすまんの中で幾度となく登場するメッセージです。

多少のストレスは人生の調味料です。ストレスを全く無くそうとするより、ストレスのいい解消法を見つけて下さいな

ストレスの無い人生など、存在しない。

そうなんですよね。分かり切っている話なのですが、特に心身共に弱っている時などに、人はそうしたストレスの無い世界を探し求めてしまうように思います。

でも、やっぱりそんな世界は無いんですよね。それならば多少のストレスは有って当然なのだと考え、それを楽しむとまでは言わないまでも、それをいかに解消するかを考えて付き合っていくしかないんです。

ラストシーンで内名木は廃人同然になると書きましたが、彼はストレスから完全に解放されているにも関わらず、このような状態になっていました。その姿に、これこそストレスという人生の調味料、スパイスが失われた姿なのだという藤子A先生からのメッセージを感じずにはいられません。

以上、『笑ゥせぇるすまん』第34話の感想でした。


§ 本記事で掲載している画像は藤子不二雄A『笑ゥせぇるすまん』より引用しています。


笑ゥせぇるすまん (2) (中公文庫―コミック版)

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