ブロンドを理由に恋人のワーナーに振られた主人公のエル・ウッズは、彼を追ってハーバードのロースクールに進学する。アウェイの場でも物怖じせず、自分らしさと不屈の努力によってエルは周囲に認められていく。女性のみならず男性が観ても元気がもらえる作品。
こんにちは、あるこじ(@arukoji_tb)です。
映画『キューティ・ブロンド』の感想です。感想を書く上でその展開等に言及することになるため、一部ネタバレを含みます。
概要
アマンダ・ブラウンの小説を原作とするアメリカの映画です(2001年製作)。主人公のエル・ウッズを演じるのはリース・ウィザースプーン。
2007年にはブロードウェイでミュージカルが初演され、また2017年には日本でも神田沙也加さんがエル役を務める形でミュージカルが公演されました。ちょうど今年3月、大阪で再演が行われているみたいですね。
以下、allcinemaにて記載のあらすじを引用します。
陽気で天然ブロンド美人のエル・ウッズ。大学ではファッション販促を専攻し、成績も優秀で女性社交クラブの会長を務めるほどの人気者。そんなエルがいま何よりも待ち望んでいるのが政治家志望の恋人ワーナーのプロポーズの言葉。しかしある日、ワーナーが切り出したのは別れ話。議員の妻にブロンドはふさわしくないというのが理由。突然のことに動転するエルだったが、ワーナーがハーバードのロー・スクールに進学すると知ると、自分もそこに進みワーナーに認めてもらおうとファイトを燃やし、みごと超難関の試験を突破するのだったが……。
なお、ここで出てくるブロンドとは単に「金髪の女性」という意味合いではありません。アメリカではブロンドの女性に対して「頭が悪く身持ちが軽い」といった偏見があるのですね。
そうした偏見から生まれたブロンド・ジョークなるものも存在します。
Q: ブロンド女を数時間遊ばせておく方法は?
A: 両面に「裏を見ろ」と書いた紙を渡す。
こんな感じで、ブロンドといえば頭が弱い女性の代名詞となっているのです。
しかし、本作はそんなブロンドに対する偏見を打ち砕いていく、痛快な展開を楽しむことができる作品でした。
以下、感想を書いていきます。
感想
主人公のタフネスやマインドは女性に限らず男性から観ても格好良い
この作品の最大の魅力は主人公であるエル・ウッズの行動力・人間性にあります。以下、それらについて語っていきます。
物怖じしないタフネス
エルは振られた恋人ワーナーの後を追ってハーバードのロースクールに入った後に、明らかに浮いている存在であることが分かっていても、物怖じせずに自身の意見やスタイルをそのままぶつけていきます。
映画を観ている内に分かってきますが、エルは決して頭の悪い女性ではありません。むしろ、根本的に聡い女性といえます。そんな彼女は、自身が他と違う見た目や振る舞いをしていることの異質さそのものについて、おそらく理解しているはずなんです。それなのに、自信をもって自分を主張していくんですよね。このタフネスさはなかなか真似できるものじゃないと思いました。
努力を継続できる負けん気の強さ
彼女は努力を継続できる人物でもあります。自身の不勉強を厳しい女性教授であるストームウェルによって指摘されて講義から追い出されたり、努力してハーバードのロースクールに入ったのに相変わらずワーナーからブロンド扱いされたり、更に同期にワーナーと既に婚約を行った女性がいたりと、何度も心が折れそうな局面を迎えます。
しかし、一時的に凹むことはあっても上手く気分を切り替え、その負けん気によって努力し、徐々に周囲から認められていきます。
ロースクールで認められるための努力ということで、もちろん法学について学習するわけですが、自室ではフィットネスを行いながら、並行して勉学に励むのが凄い! 単に勉強をするだけでなく、元々の自身のアイデンティティでもある美の追求についても疎かにしないんですよ。感心しました。
情に熱く義理堅い
自身の悲しみを癒すために訪れたネイル&ヘアの店で、いつの間にか店員であるポーレットの悩みを聞いて共感し、エルが励ます側に回っているシーンがあります。これは彼女の人柄の良さ、そして良い意味ですぐに他人に感情移入できるところが表現されています。
また、話が進み、ある殺人事件の被告である女性の弁護を支援する実習生として関与する場面が登場します。このとき、被告から本人のアリバイを証明するためのある秘密をエルは共有されます。但し、被告にとってはその秘密を暴露される事は実刑を受けるよりもつらいことでした。そのため被告の彼女はエルに「この秘密は誰にも話さないで」と伝えます。
しかし、自身の属する弁護士および実習生から構成される弁護チームは被告のアリバイの立証による無罪の獲得、そして何より法廷での勝利による名声を得るために、アリバイの中身についてエルから聞き出そうとします。しかし、エルは被告の心情と約束を最重要視し、秘密を最後まで堅持します。ここは格好良いですね。
全体的な雰囲気やエルの元気の出し方(ネイルをするとか)などから、女性向けの映画とよく言われるのも理解できるのですが、こうして挙げたエルのタフネスやマインドは、男性から観ても好ましく、かくありたい姿だと感じました。
つーか、最初にワーナーがエルを振るのが俺から見たらありえないですね。アメリカの社会ではそうなのかもしれないけど、エルと長く付き合っていれば彼女の本質的な賢さや得難い人柄の良さについて、絶対に分かると思うんだけどなー。
『逆転裁判』のような法廷シーンも
本作は原題が『Legall Blonde』というだけあって、中盤以降は舞台の中心がロースクールから、ある殺人事件の審理を巡る場面に移行します。
事件調査および法廷において、エルは持ち前のファッション知識で独自の論理を展開し、真相に近づいていきます。この辺りは流石にご都合主義に感じる部分もありました。ただ、それ以上にエルが主張・展開する理屈やある種の決め付けが面白くて、笑ってしまいました。
ところで、このエルによって行われる一つの決め付けも、言ってしまえば偏見でした。このエルが偏見によって物事を決めつける展開が笑えるという時点で、イコール、ブロンドは頭が悪いという偏見だって本来は笑い飛ばされるべきものということを遠回しに伝えたかったのかなと思いました。
審理の場におけるエルの口上に対して「そんなことが事件に関係あるのか?」と法廷の多くの人間が思っている中で、そんなエルの思わぬ指摘が最終的に事件を照らし出すあたりはゲーム『逆転裁判』のようなノリを少し感じました。
硬い雰囲気の法廷シーンを期待する人には向いていないかもしれませんが、ちょっとした笑いとそれなりに理屈立った事件解決がもたらされる点は私にとっては面白かったです。
ラストの主人公による演説は名シーン
映画を観続ける中でエルの振る舞いに、自分自身も元気をもらいますが、その集大成ともいえるのがラストのエルによる演説のシーンです。
法の世界でも人生でも、情熱が重要であることを私はハーバードで学びました。
情熱と信念を持つ勇気、真の自分を知ることが未来を開きます。第一印象を信じるのは危険です。
人への信頼を忘れず、それと共に、自分を信じることです。
上記、エルの演説の一部を引用しましたが、正直この文面だけを読んでもあまリ実感が湧かないない内容だと思います。
エルが努力してロースクールに入り、ワーナーを取り戻すため、そして周囲を見返してやるために努力し、困難を乗り越えていく一連の様子を観た上で、この台詞がエルの口から発される姿を見ることで初めて、この演説の内容が輝いて感じられると思うんですよね。
本作を未鑑賞の方は是非映画を観て、この感覚を味わって頂けたらと思います。
まとめ
本作はブロンドによる偏見に負けず、自身のタフネスとマインドによって道を切り開いていく主人公エルの姿が何とも眩しい作品でした。
女性がメインターゲットの映画という評判が多いですが、私は男が観ても面白いと思いました。行動的でポジティブなエルの様子を観ているだけで、それに感化されて自身も人の目を気にし過ぎることなく一日を頑張ろうという前向きな気持ちが湧いてきます。
特に、少し元気が無いような時に観ると、全体の明るさとエルが奮闘する姿から自然と元気がもらえると思います。
以上、映画『キューティ・ブロンド』の感想でした。
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