あるこじのよしなしごと

妻・息子2人(2014生:小麦アレ持ち/2019生)と四人で暮らしています。ボードゲーム、読んだ漫画・本、観た映画・テレビ、育児、その他日常等について綴っています。

『グノーシア』ネタバレなし感想・レビュー(Switch版)/一人用SF人狼ゲーム

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ある宇宙船を舞台に繰り返し「人狼ゲーム」を行うことで、物語の真相に少しずつ近付いていくゲーム。それが『グノーシア』です。

このゲームは最初にPSVita版が2019年6月に配信され、更にその後、Switch版が先日2020年4月末に配信されました。

私はSwitch版を購入して、本ゲームをプレイしました。そのゲーム内容の説明や感想について、実際に対人での「人狼ゲーム」をプレイした経験を踏まえて、以下、書いていこうと思います。

なお、以下の記述内で『グノーシア』における各種の謎やストーリー展開、各キャラクターの特記事項等についてのネタバレはしていませんので、未プレイの方もご安心下さい。

ゲーム概要

『グノーシア』について


Nintendo Switch版『グノーシア』紹介映像

『グノーシア』はある宇宙船を舞台に行う人狼ゲームがテーマのゲームです。

人に偽装する、人ならざる存在。それがタイトルにもなっているグノーシアです。宇宙船の乗員に"汚染"(憑依のようなイメージ)する事で船内に紛れ込み、宇宙船を支配する事を企みます。

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グノーシアはワープする度に人間の乗員を一人ずつ襲い、消滅させていきます。そして、生存する人間の数が船内のグノーシアと同数にまで減った時、グノーシアによって船内は支配されてしまいます。

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この事態を防ぐため、人間たちは乗員の中でグノーシアと疑われる者が誰かを議論によって洗い出し、ワープ前に多数決で選んだ対象者をコールドスリープによって無力化する方法で対抗します。そして、全てのグノーシアをコールドスリープさせ、船内のグノーシア反応が無い状態にすれば安全が確保されることになります。

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グノーシアは誰が仲間かをお互いに知っていますが、人間は誰が仲間(=グノーシアではない)かが分からないため、最初はコールドスリープさせる相手が誰か分かりません。しかし、議論の中で誰が誰を疑い・かばったか、また多数決で誰が誰に投票したかなどから、徐々に絞り込んでいきます。

更に人間たちの中にはワープの際に誰か一人を指定してグノーシアか否かを判定できる"エンジニア"や、前回コールドスリープさせた者がグノーシアだったか否かを判定できる"ドクター"などがいます。彼らによって、人間たちはグノーシアが誰かをより効率的に洗い出す事ができるのです。

しかし、先に述べたようにグノーシアは狙った人間一人を定期的に襲撃できるため、エンジニアやドクターが軽々に身分を明かせば、あっという間にその身を狙われ、消滅させられてしまうでしょう。

また、エンジニアもドクターも自身が本物であるかどうかを明示する材料がありません。そのため、グノーシアは「自分こそがエンジニア、ドクターである」などと身分を偽って議論に加わってくることで人間たちを妨害し、偽りの信頼を獲得しようとも企みます。

更に、場合によっては人間でありながらグノーシアに協力する"AC主義者"(一言で言えば裏切り者。誰が支援すべきグノーシアかは人間同様に分からないので、出鱈目なことを発言して議論をかき乱すのがセオリー)や、人間でもグノーシアでもない第三勢力の"バグ"(人間またはグノーシアが勝利条件を満たした際に生存していれば一人勝ちとなる。グノーシアに襲われても死なず、エンジニアに身分をチェックされると死ぬ特性を持つ)が紛れ込んでいるときもあります。これらによって、事態はますます混迷を極めます。

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やがて、どちらかの陣営の勝利によって決着が付けられる人間とグノーシアとの戦い。

しかし、この人間とグノーシアの戦いは何故か、何度も何度もその立場や役職を変えて繰り返されるのです。

また、そのループの中でプレイヤーは人間としてグノーシアと戦うだけでなく、グノーシアとして人間たちの追及をかわさなければならない立場になることもあるのです。

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グノーシアとなった場合、プレイヤーは人間たちの疑惑を巧みに逃れ、仲間と共に全員がコールドスリープされる前に、人間たちを狩ることになります。

何回も繰り返されるループの中で明かされていく乗員たちの背景。そして、ループが起きる理由。

人間とグノーシアの戦いの果てにあるものとは、一体何なのでしょうか?

人狼ゲームについて

人狼ゲーム自体についても、簡単にですが言及します。

人狼ゲームとは「汝は人狼なりや?」と呼ばれるゲームの略称です。ある村を舞台に巻き起こる、人間と人に化けて紛れる人狼との生存競争をテーマにした議論ゲームです。

ボードゲーム(カードゲーム)の作品としては『ミラーズホロウの人狼』『タブラの人狼』などがこのジャンルの走りといえます。

タブラの人狼 (Lupus in Tabula) 日本語版 カードゲーム

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  • 発売日: 2013/11/02
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『グノーシア』はこの人狼ゲームというジャンルをSFの世界観に落とし込んだゲームなのですね。人狼ゲームにおける"人狼"が、『グノーシア』における"グノーシア"に当たるわけです。

また、その他に"占い師"や"霊媒師"など、本作品における"エンジニア"や"ドクター"のモデルとなった役職も人狼ゲームには当然存在します。

『グノーシア』が楽しめた方の中で人狼ゲームを遊んだ事が無いという方は、もし可能であれば友人らを集めて、対面での人狼ゲームも是非遊んでみて欲しいです!

オフラインで人と顔を付き合わせて行う人狼ゲームにおいては『グノーシア』とはまた異なる、楽しみやスリルを体感できると思います。

対人での人狼ゲームとの比較

こちらの項では、対人での人狼ゲームとの比較で良いと思った点、また気になった点を書いてみました。

良い点

一人で遊ぶことができる

人狼ゲームは何より、一緒に遊ぶ人を集めるのが大変なゲームです。

オーソドックスな人狼ゲームをプレイする場合、最低でも8人くらいは欲しいところです。しかし、これだけの人数を集めて、更に遊べる場所を探すのは結構大変です。

最近では、人狼ゲームの亜種にあたる『ワンナイト人狼』などのように少人数でも遊べるルールになっているゲームがありますし、また「人狼ルーム」などのように料金を支払う事でそうした人や場所を確保できる施設もありますから、以前に比べると人狼ゲームを遊ぶためのハードルは下がったと思いますが、それでもやはり人の調整が絡む点で一苦労だと感じる方は多いと思います。

その点、『グノーシア』があれば、誰に気兼ねする事なく、いつでもすぐに人狼ゲームを楽しむことができます。これは単純ながら大きなメリットだと思います。

なお、ゲームがある程度進むと、上で説明した以外に"守護天使"(人狼で言うところの狩人。一人を指定してグノーシアの襲撃を防ぐ)や、"留守番"(人狼で言うところの共有者/フリーメーソン。人間であることを完全に証明できる存在)などの役職も登場します。人狼ゲームを遊ぶ上で必要十分な役職は揃っていると私は思いました。

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そして、人数や上記の役職構成を自分で選んで遊ぶこともできるようになります。人狼シミュレーターとして優れた作りに仕上がっていると思います。

発言・投票のログがそれなりに詳細で分かりやすい

人狼ゲームを行う上で大事な情報が、誰が誰を疑い、誰をかばい、誰に投票したのかです。

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このゲームでは、各人の議論時の行動や発言、エンジニアやドクターの報告、投票先と投票結果をいつでも確認できます。

基本的なポイントですが、それだけに大事です。このゲームにおいて、議論を後から追いかける中で情報の不足を不満に感じる事は無いでしょう。

なお、これは単なる細かいインタフェースに関する指摘なのですが、ログを最初から振り返る際など、ログの一番上に戻りたい(一日目から読みたい)時に、必ず一番下からカーソルを動かさなければならない点は少し不便でした。

次回作では、ワンタッチでログの先頭に飛ぶことができる仕組みを入れて改善して欲しいです!

相手がAIなので、長考や騙りを思う存分行える

人狼ゲームを対人で遊ぶのが少し苦手、という人がたまにいます。

他でもない私の妻がそうなのですが、対人の人狼ゲームにおいては

  • じっくりと盤面について考えたいけれど、相手がいるゲームのため、集中して長考できない。
  • 自分が人狼の立場の時に、人間側の役職者の振りをして場をかき乱してみたいが、失敗した時に仲間に迷惑をかけると思うと大胆に嘘をつけない。

といった悩みがあるようですね。

これ以外にも、人狼ゲームではある種のセオリーがあるため、それらを身に付けていない状態でネット人狼などをプレイした際に怒られてしまい、それ以来人狼を遊ぶことに萎縮している、なんていう例も聞きますね。

漫画家の山本さほ先生の漫画エッセイでも、上のようなお話が描かれていたことがありました。

相手に恵まれる・恵まれないという運が絡むと思いますが、場合によっては人狼に初めて触れる際にちょっとしたいざこざがあり、それによって人狼に苦手意識を持つということもしばしばあるようです。

その点、『グノーシア』はAIが相手ですから、全く萎縮することなく人狼ゲームをマイペースで遊べるんですよね。これも人によっては、大きなメリットになります。

また、対人の人狼ゲームに臨む前の練習や基本的な考え方を身に付ける上で『グノーシア』を活用するというのもアリだと思います。

役職が割り振られる各キャラクターに特性がある

各役職ごとの能力を活用して論理的に人狼を割り出す、あるいは疑いをそらすのが人狼ゲームの面白さの醍醐味です。

一方で、実際に対人で人狼ゲームをやると「妙に勘が鋭い人」「嘘や演技が上手い人」「何となく言葉や物腰に説得力がある人」など、役職とは別の個性や特性という要素が絡むことがあります。

それによって、たとえば、ある人は勘が鋭いから村人の時に意見を求めるとか、また逆に人狼の時には早めにその人物を襲撃して退場してもらうとか、そういう判断が入ってくる訳です。

『グノーシア』でもキャラクターによって勘が鋭かったり、嘘が上手かったり、議論で強い影響力を持っていたり、といったキャラクター毎の個性が細かく設定されており、画一的なAIを相手にするのとは異なる楽しみが得られる作りになっています。

全員が同じような動きをするAIでは面白みも半減ですが、『グノーシア』では個性が各キャラクター毎にきちんと存在するため、プレイしている時に人間を相手に遊んでいるのと同じような楽しみを得られると思います。

全体を貫くストーリーがある

最後は、普通の人狼ゲームでは絶対に味わえない楽しみについて語ります。

『グノーシア』では何度も人数や役職を変えて人狼ゲームを行います。そして、主人公はそのループに囚われた存在として描かれるのですが、このループが何故発生するのか、そしてどうやれば脱出できるのか? という大きな謎がゲーム中に提示されます。

プレイヤーは繰り返し人狼ゲームを行う中で、各キャラクターが抱える事情や秘密について理解していき、この謎を徐々に解き明かしていきます。

これは人狼ゲームというシステム自体の魅力からは少し外れた話になりますが、『グノーシア』というゲームの楽しさを語る上ではやはり外せない要素です。

よく練られた世界観、こまめに張られた伏線など、人狼ゲームを楽しいと感じられる人であれば、きっと楽しめる物語になっていると思います。

気になった点

個人としての生存が勝利条件の前提にある

一般的な人狼ゲームと大きく異なると思ったのは「チームとしての勝利」という概念が少し薄く、自身がグノーシアに襲撃される、またはコールドスリープされると事実上敗北扱いになる点ですね。

普通の人狼ゲームでは自身が人間の場合、襲撃によって死亡しても最終的に人間側が勝てば自身も勝ちになります。

その逆に人狼側で人狼と見破られても、残った仲間によって人狼側が勝てば同じく人狼としての勝ちを共有できます。

しかし、このゲームではまず自分が生き残らないと勝利とは見なされないのですね。消滅またはコールドスリープさせられた時点で、ゲームセットになってしまうのです。

これは人狼ゲームをやり込んだ人からみれば大きな違和感を覚えると思います。

ただ、普通の感覚からすれば、チームとして勝ったとしても自分が死んだら何の意味も無いと考えるのは確かにその通りだと思うので、人狼ゲームというシステムに対する解釈の一つとしての理解はできるかなと思いました。

なお、この改変によって通常の人狼と異なり、"AC主義者(人狼で言うところの狂人)"の立場で勝つのがとても難しいものになっています。

普通の人狼では、狂人は自分が死のうと人狼陣営が勝てば良いので、議論をかき回して半ば人狼の身代わりのように死んでいくのが一つのセオリーです。

しかし、『グノーシア』でそうした役回りを同じ様にやってしまうと、あっさりコールドスリープさせられる、またはグノーシアに踏み台として殺されてしまい、負けになってしまうだけです。

"バグ(人狼で言うところの妖狐)"で勝つのも難しいと言われますが、バグの場合はグノーシアに襲撃されても死なない特性がある分、AC主義者よりはまだ勝ちやすいのですね。

AC主義者は人間並みのスペックで、人間にもグノーシアにも狙われないようにしつつ、それでいて事前情報無しにグノーシアをさりげなくアシストしながら、最終局面まで生き残らなければなりません。

AC主義者で勝利するには、非常に繊細な手綱捌きと幾ばくかの運が必要になるでしょう。

嘘を見抜き、確定情報を得るスキルが用意されている

人狼ゲームの面白さの一つは、論理矛盾以外では、誰が嘘をついているかは分からないという不確定性が残されている点だと思います。

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ところで、『グノーシア』には繰り返しゲームをこなして経験値を稼ぐことでRPGのように自身をスキルアップさせていくシステムがあります。

獲得したポイントを「カリスマ」や「ロジック」などの能力に割り振る事で、自身の影響力や説得力を強化していく……というシステムなのですが、「直感」という要素の値を強化すると、1ゲーム中に1〜2回程度の発動頻度ですが、他人の嘘を確定で見破れてしまうのです。

通常、人狼ゲームでは占い師(エンジニア)等の能力以外では確定情報は得られないのが普通です。態度をみて「この人、怪しいな」と思うことくらいはありますが、完璧に見破るというこはあり得ません。

しかし、『グノーシア』では役職外のスキルによって、発生頻度は多くないものの完全に嘘を見破れてしまうのですね。

これは、ゲーム攻略における難易度調整の一つの要素としてありだとも私は思いますが、この点が蛇足だと思う人もいるかもしれませんね。

ただ、これについては「直感」の能力値にポイントをできる限り振らないようにすれば、そもそも嘘は見破れないので、それである程度の対策は可能です。

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ちなみに経験値によるスキル強化は、なかなか面白い要素だと思いました。

ある能力値を強化した上である条件を満たすと、自身がコールドスリープ対象として決定したにも関わらず、成功確率は低いながらもその執行を一度だけ免れるという技を覚えたりもします(笑)

非常にユニークな技ですが、対人の人狼ゲームの中でも"プリンス"など、投票による退場を一回だけ耐える特殊役職もあります。それに対するオマージュと考えると、面白いです。

各プレイヤーが人間ではない

当然のことですが、相手は人間ではありません。『グノーシア』はあくまでプログラムされたAIを相手に遊ぶゲームです。

よって、人間ほどの複雑さ・多様さはゲームの中で表されませんし、また、何故このキャラクターはこういう行動を取ったのか、という深いレベルでの答え合わせや感想戦をゲームセット後に行う事はできません。

ただし、各AIは適当な行動を取っているわけではなく、合理的・納得がいく行動を取ってくる点は擁護したいポイントです。

その証拠に、プレイしていて「この流れはおそらく夜にグノーシアに殺されるな……」などと考えていると、きっちり(?)襲ってきます。AIの思考はかなり合理的です。

一方で、合理的と言っても全てのキャラクターが一概に行動をすんなり読みやすいというわけでもありません。行動原理が良い意味で読めない人物もいるため、そこが一つの緩急になっています。この辺は、各キャラクターの特性が上手く設定されていて、それが活きていると感じました。

まとめ

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『グノーシア』は人狼ゲームに精通していようといまいと楽しめる、大変面白いゲームです。

人狼ゲームについて丁寧に段階を踏んで説明してくれるので、人狼ゲーム未体験の人でも分かりやすくその面白さを理解できます。

また、そのシステムが一般的な人狼ゲームから微妙に変わっているため、人狼ゲームの経験者にとってはその変化に適応した立ち回りが求められるのが面白いと思います。

そして、単なる人狼ゲームのシミュレーターとしての位置付けだけでなく、練られた世界観とよく考えられた構成が、一つの物語としての面白さを担保しています。

力を入れて作り込まれた、素晴らしいゲームです。人狼ゲームが好きな方、または興味がある方は遊んでみて損はないゲームだと思います!

以上、『グノーシア』のゲーム説明及び感想でした。

 

★以下、私がおすすめする人狼ゲームの亜種、あるいは、それに類する正体隠匿系のゲームを幾つか挙げておきました。中には少人数(2〜3人)でも気軽に遊べるゲームもありますので、良かったら調べてみて下さい。

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