コインを得て建物を沢山建てるゲーム。高価値の建物をより多くより早く建てた人が勝ち。それを補佐する役職が複数あり、その選択が勝敗の鍵となる。ルールはシンプルだがやり込み度が高く、繰り返し遊べる環境で特におすすめのゲーム。
こんにちは、あるこじ(@arukoji_tb)です。
役職を選び、建物を建てていくゲーム『あやつり人形』を普段ゲーム慣れしていない友人と4人で遊びました。ルール概要、遊んだ際のリプレイ記録、それを踏まえてのレビューです。
ルール概要
ゲームの目的
ゲームの目的は、より高価値の建物カードをより多く、より早く建設する事です。誰かが7軒まで建設した時点で、ゲームは終了し(ちなみに旧版までは8軒建設がゲーム終了条件でした)、それまでに建てた建物の総価値が最も高かったプレイヤーが勝利します。
建物カードは5種類(黄・青・緑・赤・紫)あります。ゲーム終了時に全種類を建てているとボーナス点が付きます。また、紫の建物だけは何らかの能力を備えており、建てる事で展開を有利にする事ができます。
この建物カードを建てる目的のため、プレイヤー各々は、互いに様々な役職を裏で操る立場となり、権謀術数を巡らすことになります。
プレイの流れ
ゲームは下記のフローを繰り返して進みます。
- 役職の選択
- 役職のコール
- 手番の消化
役職の選択
規定の役職カードを順番に秘密裏に選び、自分がそのラウンドでどの役職を操る(担当する)かを決めます。本ゲームは2人〜8人まで遊べますが、以下は4人プレイの場合を例にして説明します。
1)全8枚の役職カードから2枚をランダムで抜き取り、表向きで場に晒す(残役職カード数:6枚)
2)6枚から1枚をランダムで抜き取り、裏向きで場に置く(残役職カード数:5枚)
3)5枚のカードについて王様マーカーを保持するプレイヤーのみが確認し、1枚選んでから隣の人に残りのカードを回す
4)以下、順番にカードを選択していき、最後の一人は2枚からカードを1枚選び、選ばなかったカードを裏向きで場に置く
■役職カードの選択手順例
手順を並べただけだと分かりづらいので、役職カードの選択について、4人プレイの場合の例をみてみましょう。
手順で言うと3)の時点の図がこちらです。この5枚は最初にカードを選ぶプレイヤーだけが中身を知っている事になります。
この時、場に晒されているカードが2・7、手持ちのカードが1・4・6・7・8なので、抜き取られた裏向きのカードは【3. 奇術師】だと最初にカードを選ぶプレイヤーだけは分かる訳です。
ここで、最初のプレイヤーは【6. 商人】を選択して次プレイヤーにカードの束を回したとします。
すると、次のプレイヤー視点ではこの形でカードが回ってきます。このプレイヤーは【3. 奇術師】が初めから無かったことは知らないため、前のプレイヤーが【3. 奇術師】か【6. 商人】のどちらかを選んだことまでは分かる事になります。
更にこのプレイヤーが【4. 王様】を引いて、次にカードを回したとします。
すると、この形です。このプレイヤーから見える情報は更に未確定要素が増え、前のプレイヤー二人によって3・4・6のカードの内の2枚が選ばれたという事までしか分からない訳です。
ここでプレイヤーが【1. 暗殺者】を選んだとすると、残りは5・8のみとなります。このとき、このプレイヤーは、後ろのプレイヤーが【5. 司教】か【8. 元帥】のいずれかから選ぶことになる点だけは分かる訳です。
最後のプレイヤーは2枚から、1枚を選びます。【8. 元帥】を選択した場合、残った【5. 司教】のカードを裏向きに場に戻すので、最終的にどちらのカードを選んだかは誰にも分からないという訳です。
上記の例をみて分かる通り、重要なのは自分がどの役職を選んだかは他人には完全には分からないという点と、それでも順目によって前のプレイヤー又は後のプレイヤーが何の役職を選んだかが分かりやすい位置があるという点です。
暗殺者や盗賊といった役職の能力を使う上では、誰がどの役職を選んだかを推測する事がとても重要になってきます。このとき、互いにどの役職カードを選んだかを推測をする上で、上述した位置関係が一つの駆け引きが生む事になります。
なお、役職はラウンド毎に変わります。最初に役職を選び、それがゲーム中にずっと固定される訳ではありません。
役職のコール
王様(王様マーカーを持っているプレイヤー)により、役職のコールを行います。各役職には行動順が決まっており、その順番でプレイヤーは手番を消化します。
上記が各役職の行動順です。この行動順を示すトークンは新版から追加されました。何の役職があり、どういう順で動くのかを示すことでプレイヤーの理解を助けます。ちなみに、左上にあるのが王冠マーカー、その隣にあるのがコインです。
たとえば、暗殺者という役職の行動順は1番、盗賊という役職の行動順は2番です。王様はその行動順に「暗殺者の人」などとコールをします。コールされた役職を選んだ人はそこで名乗り出て、自身の手番を行います。そして、その人の手番が終わったら、また次の人がコールされます。具体的には、
王様「暗殺者の人」→暗殺者カードを選んだ人が名乗り出て手番を消化→王様「盗賊の人」→盗賊カードを選んだ人が名乗り出て手番を消化→(以下、最後の役職[通常は8番]まで繰り返し)
という流れになる訳です。各人がどんな役職カードを選んだかはコールされてから初めて判明します。選んだ役職を一斉に公開する訳ではありません。
手番の消化
自身の手番では下記の事を行います。
1)収入を得る
2)建物を建てる
3)役職の能力を使用する
1)収入を得る
下記のいずれかの収入を得ます。
- コイン2枚
- 建物カード1枚(山札から2枚引き、好きなほうを手札とする)
単純にいえば、資金が無いならコインを貰い、手札が不足しているならカードを貰うことになるでしょう。
2)建物を建てる
建物カードに書かれたコストの分だけコインを支払い、手札の建物カードを場に出します。建物カードの価値はそのコストと同一です。つまり、沢山コインを支払って建てた建物はそれだけ価値が高いという事です。
手番では原則1軒だけ建設が可能です。また、同一名称の建物を複数建てる事はできません。
勝利条件に直結する重要な行動です。収入を得るのも、役職の能力も、全ては建物を円滑に建設するためのアクションである点を頭に留めておきましょう。
3)役職の能力を使用する
役職の能力を使用します。能力使用は自身の手番の中でいつ行っても構いません。各役職の能力については以下、順番にみていきます。
①暗殺者
役職を一つ指定して暗殺する。暗殺された役職を選んだプレイヤーはコールされない(手番が飛ばされる)。
誰か一人の足を完全に止める事ができます。基本的にはトップになりそうな人を暗殺し、足止めすることになります。もし序盤で点差が付いてないなら、とりあえず強い役職(奇術師・商人・建築家あたり)を暗殺するのがセオリーです。
ポイントは誰かを止める事はできるが自分の手が伸びる訳ではないということ。できれば他人にトップの暗殺は任せて、自分はよりメリットのある役職を選びたい所ですが、上で書いたように位置関係によって暗殺の命中率が変わってきます。場合によってはトップを止めるために、狙い撃ちしやすい自分が"仕事"をしなければならないかもしれません。
その他には、単純に一番早く動ける点も有用です。絶対に暗殺・盗賊の被害に遭うことがない役職なのですね。
②盗賊
役職を一つ指定する(行動が既に終わっている暗殺者は指定不可)。指定された役職を選んだプレイヤーはコール後にその時点の持ちコインを全て盗賊に渡す。なお、その後の手番での収入は収奪の対象とはならない。
お金を他人から一気に収奪できる能力です。お金を多く持っている人やトップ目などを狙います。
一見強そうですが、行動した後に入金される事になるので、奪った金は次の手番まで使えない点に注意が必要です。大金ゲットに成功した場合、次のラウンドでは逆に盗賊に狙われるのをいかに回避するかを考えなくてはなりません。なお、自分で盗賊を選べば当然盗賊の被害には遭わないので、大金を持っている場合に他者に先んじて選んでしまうのも一つの手ですね(カードが回ってくればの話ですが)。
③奇術師
自身の手札を⑴山札あるいは⑵他者と交換できる。⑴山札との交換時は、不要な手札を山札の下に入れて同枚数を引く。⑵他者との交換時は、お互いの手札全てを交換する。なお、手札0枚でも交換は可能(実質、一方的にカードを奪うだけとなる)。
建設カードはなかなか増やす事ができず貴重なため、強力な能力です。良さそうな手札を持っている人間を狙って交換するもよし、不要な手札を山札と総替えするもよしです。
暗殺・盗賊は役職指定のため、ラウンドで存在しない可能性もありますが、奇術師は指定対象が役職ではなくプレイヤーなので空振りする事がない点も良いですね。
なお、役職の能力はいつ使用してもよいため、奇術師を選んだプレイヤーが1枚しか無い手札を建設→手持ちを0枚にする→能力を使用→手札を持っているプレイヤーと交換(実質的な奪取)という手順でも問題ありません。というか、この構図はゲーム中によく見られる光景です。
④王様
次ラウンドのカード選択で最初にカードを選ぶ事ができる。また、建設済の黄建物1つにつき1コインを得る。
王様マーカーの移動は、この役職の選択によって行われます。次ラウンドで可能な限り自由に役職を選びたい場合は、このカードを取る必要があります。ただ、カード選択の例で説明した通り、一番手は二番手に50%の確率で選択したカードを看破されるポジションでもある点は考慮が必要ですが……。
ちなみに、王様が暗殺された場合に、王様マーカーを動かす(暗殺されても効果ありとする)のか、それとも動かさない(暗殺されたのだから効果なし)のかの解釈ですが、過去は後者のルールが正式とされていましたが、新版では前者が採用されています。個人的にも前者の方がよいと思います。
その他には黄建物を建てている際にコインのボーナスを得られる能力が補助的にあります。手番で一度しか貰えないので注意が必要です。
例えばコスト3の黄建物を建てたいが、コインが2枚しか無く、かつ既に黄建物を1軒建てていたとします。この時、ボーナスによって1コインを得て(★)所持金が3コインになった時点でコスト3の黄建物を建てました。その新たに建てた建物から更にボーナスを得る、という事はできない訳です。理由は、既に★の時点でボーナスを一度得ているからとなります。
⑤司教
8の役職(元帥、将軍など)による攻撃を受けない。また、建設済の青建物1つにつき1コインを得る。
後述する他者攻撃系の役職から攻撃(建設済の建物の破壊や強奪)を受けません。守りの役職ですね。青建物のボーナスも付きます。
序盤はあまり強くないですが、終盤で互いに建物を壊されたくない・奪われたくないという局面になってくると、価値が上がってくる役職といえます。また、目立たない能力のため暗殺の被害に遭いづらいという点も重要です。
⑥商人
1コインを得る。また、建設済の緑建物1つにつき1コインを得る。
地味な能力に見えますが、こちらも強力です。理由は、緑の建物は他の色の建物に比べて枚数が多くかつ低コストで建つため。つまり、建物ボーナスで得られるコインが他職(王様・司教・元帥/将軍)よりも多くなりやすいのです。一気にお金を稼いで、高コストの建物を建てたいですね。能力が強力なので暗殺の被害には遭いやすいです。
⑦建築家
建物カードを2枚引く。また、この手番で建物を3軒まで建ててよい。
奇術師の項で建物カードが貴重と書きましたが、一気に建物カードを増やせるためこちらも強力な役職です。更に建物を一度に3軒まで建てられる能力まで付いています。ある程度の手持ちコインがあれば、4軒建設している状態から一気に7軒にしてゲームを終わらせることもできますね。
弱点はやはり強力なので暗殺や盗賊の被害に遭いやすい点と、行動順が後ろから2番目と遅い点ですね。
⑧元帥
他プレイヤーが建設済の3コスト以下の建物について、同額のコストを相手に支払う事で自身の建設済の建物として奪うことができる。また、建設済の赤建物1つにつき1コインを得る。
奇術師と同じく、役職ではなくプレイヤーを指定して攻撃が可能な能力です。かつ赤ボーナスも付いています。
序盤、皆が建物を建て始めた時点では多少選ばれにくいですが、中盤では他人が建てた強力な能力を持つ紫建物や、五色揃えるために足りない色の建物をピンポイントで奪えるのが良いです。終盤では誰かが7軒になるのを強引に阻止する目的で選ばれる他、5軒の状態から1軒強奪+1軒自身で建設して7軒まで建て切るなんて事も出来ます。自分で元帥を選べば他人からは建物を奪われないというのも一つのポイントですね。その点では、攻守兼ね備えた役職といえます。
弱点は何といっても行動順が最後尾である点ですね。建物の強奪は7軒建て切った相手に対しては行えないというルールがあるため、ラストターンの攻防において、ゴール直前のプレイヤーを邪魔する目的で元帥を選んでも一手遅れとなります。
ちなみにこの元帥という役職は、現在日本語版が発売されている『あやつり人形』の新版で初めから封入されていますが、標準の役職ではありません。旧版の基本役職で行動順8のキャラクターは将軍という役職です。そのため、将軍についても解説します。
⑧’将軍
他プレイヤーが建設済の建物について、コスト-1のコインを場に支払う事で破壊する事ができる。また、建設済の赤建物1つにつき1コインを得る。
他人の建物を強奪ではなく破壊する能力です。自分の物にはなりませんが、コインはコストより1少なく済みますし、支払う先はプレイヤーではなく場になります。
他人の足止めをする能力なのですが、指定した建物が自分の物になる訳ではないので、元帥より弱いです。かつ、足止めをするには自分のコインを払わなければなりませんが、そうして得られる恩恵は建物を破壊された本人以外の全員となるため、破壊するのが自分の損のように感じられます(破壊していかないとトップの独走を許してしまう場合、止むを得ませんが……)。なお、終盤以外では比較的弱い能力のため、暗殺のターゲットになりにくいですね。
※今回のプレイ時、8の役職を将軍から元帥に変更した理由
今回遊ぶ上では能力が分かりやすく、かつゲームが長期化しない役職のが望ましいと考えていました。もし将軍を採用すると、能力のメリットが感じにくいため役職選択時に極端に避けられやすく、また建物を破壊する能力によってゲーム展開にブレーキが掛かりやすいと考えました。元帥なら能力が分かりやすく、また破壊ではなく強奪のためプレイ時間の長期化も起こらないと判断しました。
プレイ記
インスト
どうしても久々にあやつり人形を遊びたい欲が抑えられず、普段あまりゲームをしないタイプの友人O・T・Sの3人と会った機会に、インストして一緒に遊んでもらいました!
今回は下記のツィートの通り、各役職のサマリーを作成していきました。
週末の遊び用に、あやつり人形の役職サマリーを作る。
— あるこじ (@arukoji_tb) 2019年2月20日
展開の促進のため、将軍は元帥にチェンジしました。
普段、特にボドゲをやらない友人が相手ですが、これで誰がどんな能力かでつまづく事は無いはず……多分!
ちなみに手番の通常行動は新版に付属のサマリーで充分フォローできると判断しました。 pic.twitter.com/LX22J1wKni
サマリーがあったため、役職の能力の把握はそこまで手間取らなかったです。ゲーム中も単純なQAのやりとりが無くなるので、役職のサマリーは作れるなら作った方がインスト時の負荷は軽減されます。
ルールについて、一番感覚的に伝わりづらかったのは、役職がラウンド毎に変わる点と行動順は時計回りではない(役職カードによって変わる)点だったようです。初めて遊ぶ方にインストするには、この2点を分かりやすく伝えてあげるとよさそうです。
最終的に20分ほど掛けてインストを終えたところでゲームを開始しました。
序盤
皆、どんな職業が良いのかは分からないようだったので「とりあえず最初は商人・建築家あたりが強いよ」とアドバイスをして、ゲームを開始しました。
さて、1ラウンド目で回ってきたカードから私は盗賊を選択しました。しかし、どの役職を狙うかで、はたと迷うことに。普通にいくなら商人あたりをターゲットにする所ですが、ついさっき商人は強い役職とアドバイスしたため、誰かが選ぶ可能性が高いんですよね……。アドバイスで他者がその役職を選ぶように半ば誘導する形になった中で、そのまま盗賊で狙うというのも道義的には微妙だなぁと思うわけです。
ただ、あまり曲げた手を打ち続けるのと皆の混乱を生むと考え、セオリー通りに商人を狙うことにしました。案の定、友人Sが商人を選んでいたので金貨を奪い、そのまま1軒目を建設しました。狙われたSは「えー」と言っていましたが、強めな職業は暗殺や盗賊の被害に遭いやすいから気を付けよう! とアドバイスめいたことを伝えて煙にまきました。
最初は手順に戸惑っていた友人らでしたが、3ラウンドまでこなした頃には手順に慣れてきたようで、役職選択や収入の獲得、建物カードの建設までスムーズに行えるようになりました。
中盤
徐々に、プレイヤー達に暗殺や盗賊に狙われたくないという心理が芽生え始めました。他者の狙いをかわすため、強い能力持ちの商人や建築家がスルーされやすい展開に。その代わり、Oは赤建物で元帥、Tは青建物で司教といった形で、自分が建設済の建物の色のボーナスを狙うケースが増えてきました。Sはこれといった強みがなく、一歩後退。
私は裏の裏をかいて商人や建築家を取ってストレートに手を進めようと試みるもあっさり暗殺者に刺されて2ラウンド連続で行動できず。素直に動き過ぎました。さすがに2連続で動けないのは痛い。
迎えた6ラウンド目、いい加減暗殺されなさそうな役職にしようと、その場の状況から盗賊を選択。今回狙うのはその時点で大金を持っていたTです。Tが役職カードを選ぶ際、ちらっと青建物カードを見る様子を視認していたため、ターゲットは司教。この読みは的中し、一気に5金をゲットできました。
7ラウンドでは暗殺者が取れる状況だったので、盗賊より早く動けるという理由のみで選択。大金を使って5金コストの建物を建てます。
こうして中盤が終わった時点では、全員が4軒建てている状況でした。建物の価値を加味すると私とTが一歩リード、その次がOで、Sは一歩後ろというところ。
終盤
自身の下家であるOからの役職カード選択。私は役職カードの選択が最終となります。自身に回ってきたのは奇術師と王様の2枚だったのですが、手札が心許なかったので奇術師を選択。暗殺者は落ちていたため狙われる事もなく、1軒建設して5軒にすると共に、トップ争いのTのカードを奪って暫定トップに立つ。しかし、ここは王様を選ぶべきだったと後で後悔……。
Oはこのターンで元帥を選んでおり、私が建てていた3コストの建物を奪取しつつ、更に自身でも1軒建てて一気に6軒とリーチ圏内へ。建物の色も五色ボーナスまであと1色と申し分ない形です。
私自身、元帥を入れて遊んだのが初めてだったので、その能力の強力さをあまり意識していませんでした……。しかも、王様を誰も取らなかったので次ラウンドもOから役職カードを選択できます。
運命の次ラウンド。Oが1軒でも建物を建てたら7軒になり、このラウンドでゲームは終了です。建物の総価値で勝負は決まるので、7軒先に建てたプレイヤーが必ず勝つわけではないですが、7軒最初に建てた人には多くのボーナス点が付くこと、まだ4軒しか建てていない私や他のメンバがOの点数を上回れる可能性は低いことなどを考えると、勝つためにはこのラウンドでゲームを終わらせず、何とか先延ばしすることが必要になります。
どうやって足止めするかと考えていたら、私に回ってきたカードが暗殺者と王様の2枚。誰もOを殺さないと終わってしまうので迷わず暗殺者を取ります。問題は自身の手番で、どの役職を殺せばいいのか。
麻雀の「何を切る?」のように、このときの状況を皆さんにも提示すると、こんな感じでした。
■場に出ている役職カード
盗賊/奇術師/?[裏向き]
■役職カードを引いた順番
O→S→T→私
■Oの状態
コイン0金、手札1枚
建設:黄1/青0/緑2/赤2/紫1
■その他情報
・私は4軒建設/紫のみ無しの四色
・Oは6軒建設/青のみ無しの四色(赤2軒, 黄2軒)
・Sは4軒建設/緑の割合が多い(2軒)
・Tは4軒建設/青の割合が多い(3軒)
・私含めてO以外の所持金は1〜2金程度
とりあえず暗殺者と王様は私まで回ってきたので、選ばれた可能性があるのは司教・商人・建築家・元帥のいずれかです。
Oは一番早く動ける暗殺者を選びませんでした。この事から、Oの手札は通常の収入2コインでは建てられない、又は建てたくないカードであると推測できます。2コインで建てられるなら、最初に動ける暗殺者を取ればよかった筈です。
可能性が一番低いのは司教でしょう。Oは青建物が無いのでボーナスを得られません。元帥による建物強奪からのガード能力もありますが、それが目的ならむしろ元帥を取ればいい。Oは赤建物を2軒建てていてボーナスも得られるのですから、尚更そちらを選択するでしょう。
残るは商人・建築家・元帥ですが、ここでコインの獲得という面に着目すると、商人と元帥はOの立場では同価値という事実があります(商人:能力+緑1で2金、元帥:赤2で2金)。商人と元帥の比較なら更にできる事が多い元帥のほうを選ぶのではと考えられます。よって、商人の線も消しました。
残るは元帥と建築家の二択です。これはどちらもありそうで悩ましいです。元帥なら通常の収入とボーナスで4金、建築家なら2金と手札2枚をそれぞれ獲得できます。
手札が高コストのためコインが欲しいから元帥? あるいは、手札を建てる気がなく他人の建物を奪う狙いで元帥? それとも、カードを多く補充して2金で建てられる建物を引く狙いで建築家?
色々な可能性が考えられますが、一番紛れがなく7軒に到達できるのは元帥による建物強奪だろうと考え、最終的に暗殺対象として元帥を指定しました。
結果ですが……Oは建築家を取っていました。Oは通常の収入で2コイン得た後、建築家の能力で2枚カードを引き、引いた内の一枚である青建物(2コスト)を建てて、このラウンドでゲームを終了させました。ちなみにSは商人、Tは司教を取っていました。元帥は初めから落ちていた(裏向きで抜かれた役職だった)ようですね。
最終的にはOが25点、私とTが18点、Sが15点という事でOの勝利でした!
感想
ゲーム全体で建物をコツコツ建てていく長期的なプラン実行と各ラウンド毎の役職カードの選択における短期的な駆け引きの両面を濃密に味わえる、大変面白いゲームです。プレイ中は自分と相手、双方の状況を頭をフル回転して考える必要があります。
そうした濃密なプレイ感の割に、ルールや構成要素はシンプルなため、今回あまりゲーム慣れしていない友人を誘いましたが、数ラウンドこなせば問題なく遊べました。
ちなみに今回、4人でプレイして開始からおよそ60分で決着しました。初めてプレイした人間が殆どで多少のんびり進行しましたが、役職セットを将軍から元帥に切り替えて最終局面がスピーディに展開した結果、この時間で終わりました。中身のシンプルさの割に時間は意外と掛かるゲームといえます。カード選択で長考する人が多いと、もっと時間が掛かることになるでしょう。総じて、重ゲーとまでは言わないものの中量級といったところでしょうか。今回、ゲーム促進のために元帥を入れたのは、予想通りスピード向上に寄与しましたね。
ちなみに、現在販売されている日本語版の『あやつり人形』は元帥など拡張の役職が入った「新版」と、標準役職のみが入っている「クラシック版」があります。どちらかというと、個人的にはクラシックではなく新版を推します。理由は、全27種と多数の役職が入っており様々な展開を楽しめるからです。クラシックは箱がコンパクトで収納・携帯性の点で優れているので、それらを重視する場合はクラシックを購入するとよいですね。ただ、新版についても、必要な要素だけ抜き出して別の袋に入れれば問題なく持運びは可能です。私自身、今回は外出先で遊ぶため、使う予定の役職カードや建物カード等だけ抜き出して持ち運びました。
ところで、ただ単にルールを把握できるだけでは、このゲームの真の面白さを引き出せたとは言えません。『あやつり人形』は良くも悪くも繰り返し遊ぶ事で楽しさが増すゲームです。
その一例として、上記のプレイ記の最終ラウンド。このとき私まで暗殺者のカードが回ってきましたが、あれは本来ならOのすぐ次のSが暗殺者を取るのがセオリーです。それはもちろん、二番手のプレイヤーは50%で一番手のプレイヤーの役職が分かるからです(今回のケースは二番手からみても建築家と元帥の二択になるので、Oを狙うのは難しかったかもしれませんが)。つまり、二番手プレイヤーは本来ここで"仕事"をすべきでした。しかし、Sはそこまで考えが至らずに自身の手を伸ばす商人を選びました。
もちろん、今回初めてこのゲームに触れたSがそこまで考えを巡らせるのはかなり難しいでしょう。何度も繰り返し遊ばなければ、余程ゲーム感のある人でない限り、こうしたセオリーは身に付いてこないと思います。また、仮に一人だけがこうしたセオリーに基づいて行動しても、あまり意味はありません。他者がそれを理解して足並みを揃えて動かなければ成立しないのです。
一番このゲームを楽しめる環境は、できれば4〜6人で定期的にこのゲームを繰り返し遊ぶ事が可能なコミュニティだと思います。繰り返し遊ぶ事で徐々にいわゆるセオリーを身に付け、そこから更に裏をかいたり、かかなかったり……といった駆け引きを展開できるようになります。
もっとも、今回このゲームを共に遊んだのが初めてである私たちが楽しめたように、その時集まった人間で一度だけ遊ぶという形でも楽しめるレベルの面白さは担保されているゲームでもあります。
まとめ
本ゲームはプレイヤー間の駆け引きを濃密に楽しめるゲームです。ルール・手順はシンプルながら直感的にはやや分かりづらい所もありますが、それも数ラウンド遊べば理解できるレベルです。
プレイ時間は比較的長めです。慣れにもよりますが、4人以上のプレイでは少なくとも1時間は掛かるとみたほうがいいですね。なお、人数が増えれば、それだけプレイ時間は更に長くなります。
プレイヤーがそれぞれセオリーを理解することが『あやつり人形』の真の面白さを引き出すことに繋がります。そのため、同じメンバーが定期的に集まって遊ぶような環境だと、特に楽しめるゲームです。本ゲームは比較的安価でリプレイアビリティも高いため、そういった意味でもおすすめできます。
現在販売されている日本語版には新版とクラシックの2種類がありますが、新版は役職が多数入っており、様々な展開を楽しむことができます。他方、クラシックは収納と携帯性で優れています。収納スペースが許すなら、個人的には新版の購入をお勧めします。
以上、『あやつり人形』新版のプレイ記録および感想でした。