あるこじのよしなしごと

妻・息子2人(2014生:小麦アレ持ち/2019生)と四人で暮らしています。ボードゲーム、読んだ漫画・本、観た映画・テレビ、育児、その他日常等について綴っています。

『超探偵事件簿レインコード』ネタバレなし感想・レビュー(ダンガンロンパとの比較など)

ダンガンロンパの制作チームが2023年6月30日にリリースした推理アクションゲーム、それが『超探偵事件簿レインコード』です。

今の時点ではSwitch版のみリリースされているため、私はSwitch版を購入して、本ゲームをプレイおよびクリアしました。そのゲーム内容の説明や感想について、かつて『ダンガンロンパ』シリーズをプレイした経験などを踏まえて、以下、書いていこうと思います。

なお、以下の記述内で『超探偵事件簿レインコード』における各種の謎やストーリー展開、各キャラクターの詳細等についてのネタバレはしていませんので、未プレイの方もご安心下さい。

ゲーム概要

『超探偵事件簿レインコード』について

『超探偵事件簿レインコード』は、ユーマ=ココヘッドと呼ばれる少年を主人公として物語が展開される「ダークファンタジー推理アクション」ゲームです。

細かいゲームシステムなどは公式が公開しているWebCMなどを見たほうが分かりやすいと思うので、こちらでは概要のみ紹介します。

物語は各章に分かれて展開されます。各章のストーリーは大まかに、用意されたマップ内を行動→事件発生→調査パート→推理パート(謎迷宮の攻略)という流れで進みます。上でも述べている『ダンガンロンパ』シリーズや、また『逆転裁判』シリーズなどを思い浮かべてもらえれば、イメージしやすいかと思います。

この作品が他の推理作品と差別化できる点として挙げられるのが、超探偵の存在です。ユーマ=ココヘッドは「世界探偵機構」という組織に所属していると物語の冒頭で語られるのですが、この組織に所属する特殊能力を持った探偵たちを"超探偵"と呼称しています。

その特殊能力は事件発生時の様子を見ることができる「過去視」や死者の声を聞くことができる「降霊術」など、人智を超えたものばかりです。これらの能力を活用して事件の解決に至る点が、他の推理作品には無い魅力の一つになっています。

概要説明はここまでにして、ここからはミステリとして、また謎解きアドベンチャーゲームとしてなどについて、ダンガンロンパとの比較も織り交ぜながら、それぞれネタバレなしの感想を書いていこうと思います。

本作品のネタバレなし感想

ミステリ部分に関する感想

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まず、本作品はダンガンロンパのように複数人で閉じ込められた中で物語が展開するわけではありません。カナイ区という、何故か恒常的に雨が降り続く不思議な都市が、この物語の舞台となります。

そのため、ダンガンロンパシリーズとは異なり、各事件の発生する場所や関係者・容疑者は事件毎に異なります。

その結果、ダンガンロンパのように閉じた人数の中だけで状況を描かなければならないという制約が取り除かれており、事件のバリエーションや不可能状況、事件関係者の関係性などの多様性が高まっていることに繋がっています。

これまでのダンガンロンパシリーズの魅力として、クローズド・サークル(外部との関係性が遮断された中で事件が起こるミステリ)であることを第一に考えていた方からすると、ちょっと物足りないかもしれませんね。ただ、その代わりに起きる事件の展開に広がりを見せている点はプラスだと思いました。

謎やトリックについては、良い意味で王道的で無理がない出来に仕上がっていると感じました。裏返していうと、裏をかくような荒唐無稽さという要素は弱くなったかなとも感じます。ここは人によって好みが分かれるかもしれません。ただ、ミステリとして及第の出来は担保されているものと私は思いました。

特に出来が良かったと思ったのは4章のエピソードでした。是非、本編で楽しんでみて欲しいです。

謎解き推理アクションゲームに関する感想

ダンガンロンパの系譜として、推理パートではアクションゲーム要素があります。ダンガンロンパでは銃弾でしたが、レインコードでは剣で矛盾する発言などを切り裂くというテーマの「推理デスマッチ」が行われます。

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この推理デスマッチについて、難易度的にはダンガンロンパシリーズよりも簡単だったように思います。今回は相手の攻撃を掻い潜りながら、相手の主張の矛盾を追及するというアクションになります。

これだけ聞くと若干難しそうに感じますが、攻撃自体がそこまで苛烈ではないのと、攻撃を受けた際のダメージ量がとても小さいので、このアクション要素が理由で詰むということはほぼ無いと思います。

ゲーム的な謎解きの難易度についても書くと、こちらもダンガンロンパや逆転裁判などに比べて難易度は低いと思いました。

『逆転裁判』を起源とする相手の言葉の矛盾をつくというギミックは面白い反面、作中で繰り返される内に徐々にマンネリ化していきます。それを防ぐために逆転裁判では「ゆさぶる」というコマンドで新しい証言を引き出すという要素がありましたし、ダンガンロンパでは議論中の相手の発言を記憶してそれを利用して矛盾をつくという複雑ながら動的な推理を楽しめるギミックがありました。

本作ではそうした複雑な矛盾の指摘はほぼ無く、既に持っている証拠をつきつけることでクリアできるため、難易度的な物足りなさを少し感じたのが正直なところです。

ただ、こういった複雑な指摘を今回のように敵の攻撃を避けながら繰り出すアクションという要素と無理なく絡めるのはなかなか難しいと思うので、仕方ないのかなとも思いました。

他方、謎解きの行い方について、ダンガンロンパシリーズでは閃きアナグラムやロジカルダイブなど、色々なミニゲーム要素がありますが、本作でも同様のものがありました。

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更にそれに加えて面白いと思った新しい要素に、密室が鍵となる事件において提示された「密室再現」がありました。これは犯人の手順を辿って、密室作りのトリックを指摘するというものです。この密室再現はミステリ好きにとっては心惹かれるものなのではないかと思いました。

なお、いずれも失敗した際のペナルティは小さいので、それらのミスでゲームオーバーになるまで追い込まれるといった事態はあまり無いだろうと思います。そうした点で、今作の難易度は低めになっていると私は思いました。

このあたりは最近のゲームの風潮としてあまり難易度を高くし過ぎないようにしているのかもしれませんし、あるいは謎解きで詰まってしまうことで物語の途中で脱落する人を少しでも減らしたいという思いから来ているのかもしれません。

個人的に本作に対しては、ダンガンロンパのような「熱さ」よりも、不気味ではあるものの穏やかで情緒的な「ウエットさ」を感じました。その点では、ゲーム的な攻略難易度を高くするよりも、ゲーム的な攻略要素は抑えめにすることで物語への没入度を高めたかったのではないかと私は思いました。

その他良かった点や悪かった点に関する感想

ここでは、ミステリや謎解き以外に関する様々な感想を思いつくままに書いていきます。

まず、キャラクターについて。本作品には様々なキャラクターが登場しますが、その中でも特にインパクトが強いのが死に神ちゃんの存在です。

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全編を通じて主人公と関わり、縦横無尽に活躍する死に神ちゃんのキャラクターにプレイヤーが好感を持てるかどうかは、本作品を楽しめるかどうかを左右する重要な因子と言っても過言ではないでしょう。

死に神ちゃん以外に、登場するキャラクターの面々も個性的でそれぞれに違った魅力があるので、お気に入りのキャラクターが見つかることと思います。特に本作は、ダンガンロンパシリーズのように身内でのコロシアイが主なテーマではなく、探偵という「秩序を守る」使命を基本的に背負ったメンバーたちが主キャラクター群なので、人格破綻者のような存在はいません。人によっては逆にそこが物足りないかもしれませんが、良くも悪くも安定した魅力のキャラクターが多いと思いました。

次にストーリー展開ですが、本作品はダンガンロンパのように閉鎖的な空間の中で進む話ではないので物語のサスペンス性は下がっていると思います。それでも物語の壮大さや展開の意外性、全体を貫く謎、それらの綺麗な収束などは魅力的だったと思いました。特に終盤は先の展開が気になり、ラスト付近は一気に進めてクリアしてしまいました。この辺りの話の盛り上げ方はさすが、ダンガンロンパの制作チームだなと思わされました。

また、世界探偵機構という設定や物語の舞台となるカナイ区の様子など、全体的な世界観も魅力的でした。

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特にカナイ区はそのエリアによって様々な姿を見せますが、その近未来的な街並みは美しく、またどこか退廃的で、その中をキャラクターというアバターを通して走り回れたのは面白かったです。「いつか来そうな未来」というよりも、「やがて来ると思われていたが来なかった未来」を形にしたような世界でした。

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あとは、本作品の推理パートで攻略していくことになる謎迷宮のエキセントリックも魅力の一つです。そのサイケデリックなデザインや、謎が解かれる中で様々にその姿を変容させる様子は、プレイヤーを飽きさせることなく楽しませてくれます。

一方でネガティブな面では、ロードが非常に多くて長い点が真っ先に挙げられます。私はそこまでロード等を気にするタイプではないのですが、それでも本作のロードはかなり気になりました。自由移動中のエリアをまたぐ移動や、謎迷宮における推理デスマッチに入る場面など、様々なところでロードが入ります。

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制作側もここのロードについては課題感を持っていたようで、ロードしている間に作中に登場する用語や小ネタなどを読めるような仕組みを設けるなどの工夫を入れています。ただ、それもある程度で説明をコンプできてしまうので、途中からはただロードが終わるのを待つしかなくなってしまいます。私は可能な範囲でロードを減らせるように、自由移動時はできる限りエリア間の移動を少なくできるように考えながら回るなどの対策を取ったりしました。

マップによる移動は非常に快適でした。ストーリーを進める上で目指すべきポイントや、またサブクエスト的に依頼を受けることがあるのですが、その依頼を解決する際に目指すべきポイントなどがマップ上でマーキングされるので、効率よく消化することができました。ただ、あまりにも明確にポイントが示されるため、何処に行くべきか全く迷わずに進めてしまうのは良し悪しかもしれません。

このサブクエスト的に発生する街の人からの依頼についても少し言及します。最初に前提として、この各種依頼は受けるも受けないもプレイヤー次第です。まったく依頼をこなさなくても本筋のクリアはできます。

各依頼は基本的にほぼ一本道で話を聞くことで解決するために謎解き的な要素は薄く、お使い感は強いですね。ただ、上述の通りマップを確認することで効率的に消化できるので、手間・労力はさほど掛かりません。

また、依頼の達成において謎解き・ゲーム性の要素は薄いですが、各依頼の中で舞台となるカナイ区の人々がどういう世界で生きているのかが何となく感じられてくるので、本作の世界観により浸りたいようであれば、依頼をこなす事をおすすめします。私は本筋が気になりながらも依頼はこなしていきましたが、並行して進めてみてよかったなと思いました。

あとは、ダンガンロンパシリーズでは、事件解決後にモノクマによるおしおきがあり、これもダークな要素ながら人気の一つになっていたかと思いますが、本作では事件解決後の凄惨なおしおきは無いです。死に神ちゃんによるトドメはありますが、凄惨というイメージのものではないです。

おしおきに魅力を感じていたという方にとっては残念かもしれません。ただ、「ダークファンタジー」とジャンルに書かれているように、物語全体を覆うような後ろ暗い雰囲気や後味の悪い展開は顕在です。おしおきというストレートな要素こそありませんが、そうしたダークな要素を魅力に感じていた方が楽しめる設定・ストーリーになっているものと思います。

なお、死に神ちゃんがトドメを刺すシーンは、基本的に毎回同じムービーが流れるように思われるため、物語の後半ではスキップしたくなる方もいるかもしれません。ただ、死に神ちゃんがトドメを刺すシーンはスキップしないで毎回観るようにしたほうがいいかもしれません。その理由については割愛します。

つらつらとまとまりなく語ってきましたが、以上がミステリや謎解きアクションゲーム要素以外についての各種感想となります。

オマケ:レインコードのような「超能力」が絡んだミステリ作品について

こちらは完全に余談なので、レインコード以外の話題については不要という方は読み飛ばしてもらってよいのですが、既に刊行されている小説の中でも「超能力」が関与するミステリというのが実際に存在します。

超能力が関与するミステリを書いた中で、特に有名な作家として挙げられるのが西澤保彦さんです。

同じ一日を何度も繰り返す能力(特異体質)を持つ高校生の主人公が、何度も死んでしまう祖父の死を回避しようとループする『七回死んだ男』

超能力が秘密裏に存在する世界で、エスパー犯罪者による犯行の謎を、着物に袴、白足袋、三つ編みの少女である神麻嗣子(かんおみ・つぎこ)が突き止めようと奮闘する『神麻嗣子の超能力事件簿』などが、超能力が登場するミステリの代表作です。

レインコードをプレイした後、他にも超能力の要素が絡んだミステリに触れてみたいという方がもしいらっしゃいましたら、よかったら読んでみて下さい。

まとめ

本作はダークな世界観の中で良質なミステリを楽しむことができ、また難易度はやや下がったものの、良い意味でいつものダンガンロンパシリーズのようなアクション推理を楽しめる作品に仕上がっていると思います。

これまでダンガンロンパシリーズを楽しむことができた方であれば、プレイして大きく外れることはないと思います。過去にダンガンロンパシリーズを遊んできた方は、是非遊んでみて下さい!

以上、『超探偵事件簿レインコード』のプレイ感想でした。

超探偵事件簿 レインコード -Switch

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