館の主を殺した犯人がプレイヤーの中にいる! 犯人と一般人(探偵役)に秘密裏に分かれ、捜査および証拠隠滅を行うことで互いに攻防を繰り広げるゲーム。推理物の雰囲気を濃密に味わえ、またプレイが1時間弱と短時間で終わる点も魅力的。
こんにちは、あるこじ(@arukoji_tb)です。
ゲーム『ミステリーホームズ』に関するルール説明、3人でのプレイ記、および感想です。
こちらはサークル「Studio GG」さんによって作られたゲームです。同サークルさんのゲームでは過去に、『リトルタウンビルダーズ』を遊んだ事がありました。
こちらのゲームがとても面白かったのと、私が推理物が好きなのもあって、本作もきっと楽しめるだろうと期待して購入しました!
以下、ルールとプレイ記となります。
ルール概要
ゲームの目的
- ある館の中で起きた殺人事件について、一般人と犯人に分かれて調査や推理、およびその妨害を行うゲームです。
- プレイヤーの中に一人だけ、犯人が紛れ込んでいます。犯人以外は誰が犯人なのかを知りません。
- 一般人は館を調査して情報を集め、犯人・凶器・トリック2種を推理して指摘し、当たれば勝利です。
- 犯人は探偵の捜査をこっそり妨害し、探偵に真相を指摘されずにゲーム終了まで逃げ切れば勝利です。
初期準備
まず、下記のカードをプレイヤーに配ります。
- 正体カード:自身の役割(一般人 or 犯人)が書いてあるカードです。誰にも見せてはいけません。
- アリバイカード:自身のアリバイ(現場不在証明)を示すためのカードです。犯行時、自分がどの部屋にいたかが書いてあります。誰にも見せてはいけませんし、また、以降の捜査中において、自分でその内容を見直すのもダメです。
次に、今回の犯行に用いられた凶器とトリック2種を決めるため、凶器カード1枚とトリックカード2枚をカードの束から裏向きで選び、場に置いておきます。
これらによって、プレイヤーの中の誰が犯人で、凶器とトリック2種が何なのかが決定します。
夜の時間(犯行/ボードのセットアップ)
犯人は動画やスマホアプリ、あるいはゲームに付属している説明に基づき、館において夜の時間に犯行を行います。
犯人のプレイヤーが夜に行うことをごく簡潔に表現すると、
- 死体タイルを表向きで配置する
- 凶器タイルを表向きで配置する
- 証拠品タイルを表向きで配置する
- 死体タイル以外の全てのタイルを裏向きにする
- その他タイル(目撃証言 or スカ)を裏向きで配置する
となります。
結局のところ、ゲームボード上のセットアップを行うのと同義と考えて下さい。これによって、館には各部屋3枚ずつの裏向きタイルが配置され、ゲームを開始できる状態が整うことになります。
なお、犯人が犯行に及んでいる間、一般人プレイヤーは目をつぶり、誰が何を行っているのか、見ないようにしましょう。
以下、犯行の流れを説明していきますが、ゲーム説明の下のリプレイの項の1戦目で、具体的に犯人をやった際の例も示していますので、そちらも合わせてお読み頂ければ、よりイメージしやすいかと思います。
1. 殺害(凶器タイル・死体タイル・証拠品タイルの配置)
まず、犯人は裏向きの凶器カードの内容を確認します。そして、自身のアリバイカードに書かれている(=犯行時に自分がいた)場所と凶器の特性に基づき、凶器タイルと死体タイル、および証拠品タイルを配置します。
例えば、凶器でナイフを引いた場合。ナイフの特性は
犯人のアリバイカードに書かれた部屋に死体タイル、「ナイフ」の凶器タイル、「血痕」の証拠品タイルを置く
というものです。
よって、もし犯人のアリバイカードが「書斎」だったなら、上の画のように書斎に死体タイルと「ナイフ」の凶器タイルおよび「血痕」の証拠品タイルを置けばよいわけです。
もう一例。凶器が毒ナイフだった場合。毒ナイフの特性は
- 犯人のアリバイカードに書かれた部屋の隣室に死体タイル、「ナイフ」の凶器タイル、「血痕」の証拠品タイルを置く
- 犯人のアリバイカードに書かれた部屋に「毒薬」の証拠品タイルを置く
というものです。
よって、もし犯人のアリバイカードが「書斎」だったなら、隣室の何処か(例えばリビング等)に死体タイルと「ナイフ」の凶器タイルおよび「血痕」の証拠品タイルを置き、更に書斎に「毒薬」の証拠品タイルを置けばよいわけです。簡単ですね!
2. 使わない凶器タイルの配置
今回の犯行で使っていない凶器を、各部屋に凶器タイルが一つずつとなる形で自由に配置します。
ここで置かれている凶器は言わば「ハズレ」ですね。探偵役たちを惑わす、ダミーの情報なのです。
3. トリック2種の確認と適用
犯人はトリックカード2枚を確認し、その内容を場に適用します。これによって、アリバイカードと凶器カードが示す状況に工作を行うことができ、一般人(探偵役)を惑わす事が可能になります。
これも簡単に例を示します。先程、凶器「ナイフ」のケースを上で書きましたが、この凶器カードを引いた場合、犯人の所在地には死体とナイフと血痕がある事になります。
ここで、引いたトリックカードの一つが「偽の証拠品」だったとします。このトリックには、下記の効果があります。
好きな証拠品タイルを一つ、ボード上の好きな場所に置く
そこで、「偽の証拠品」の効果で自分のアリバイカードに書かれた部屋の隣に「毒薬」のタイルを配置します。
すると、ある部屋に「毒薬」があり、その隣室に死体タイルと「ナイフ」と「血痕」が配置された状態となります。
この状況、何かに似ていませんか?
そう、犯人が「毒ナイフ」を使った時と同じ状況に第三者からは見えるんですね!
そのため探偵役に、犯人は毒ナイフの凶器カードを引いたのだと思わせ、また犯行現場も誤認させる事ができるのです。
実際には、探偵役も色々深読みしてくると思いますが、いずれにせよ、犯人が「ナイフ」を引いたのか「毒ナイフ」を引いたのか分からない状況を生み出す事がトリックカードを適用する事で可能になるというわけです。
トリックカードには上で挙げた他にも、アリバイカードを交換したり、証拠品タイルをボードから除外(但し除外した「何かの痕跡」が残る)したり、様々な効果があります。
なお、その中の一つに、一般人のアリバイカードをこっそり他人、または山札のアリバイカードと交換するという効果のトリックがあります。
プレイ中に自分のアリバイカードを見てはならないというルールがあると上で書きましたが、それはこのカード交換のトリックが存在するためです。自分でカードを見てしまうと、そのトリックが使われたかどうかが簡単に分かってしまうため、ルール上、禁止とされているのですね。
また、犯行時の手順のポイントの一つとして、犯人は凶器をばら撒いてからトリックカードを見るという流れになっている点が挙げられます。言い換えると、犯人はどんなトリックカードなのかを見てから各部屋のダミーの凶器を配置できる訳ではないという点に注意して下さい。
4. 現在のタイルを全て裏返す
ここまでで配置した凶器タイルと証拠品タイルを全て裏返しにします。
このとき、犯人はどのタイルが何なのか、ある程度覚えておきましょう。
ダミーの凶器等はともかく、犯行やトリックの証拠となる証拠品タイルの所在はとても重要です。
5. その他タイル(目撃証言 or スカ)の配置
最後に、目撃証言タイルとハズレタイルの2種類で構成される「その他タイル」をランダムに裏向きで、各部屋のタイル枚数が死体タイルを除き、各3枚ずつとなるよう配置します。
凶器タイル等と異なり、その他タイルの内訳は犯人も分からない点に注意しましょう。
なお、目撃証言タイルは他者のアリバイの確認に関係するタイルです。詳細は後述します。
これで夜の犯行は全て終了となります。
犯人は他の一般人の振りをして目をつぶり、共に朝を迎え、目を開けます。
なお、朝になったら、プレイヤーの駒を死体タイルの置かれている部屋に全部置きます。ここから各プレイヤーは、以後の捜査を進めていく事となります。
昼の時間(捜査)
各プレイヤーは手番制で行動します。各手番では、以下に示すアクションのどちらか一つを行います。
アクションを行ったら、それに伴い消費した時間分、ボード外周にある時間トラック上にある個人のマーカーを進めます。手番消化の結果として自身のマーカーが0を越えたら、それ以降、同プレイヤーは行動不可となります。
手番で行えること① 調査
自身の駒を今いる場所から移動、あるいはその場に留まった上で、最終的に自駒がいる場所のタイルを1枚めくって回収します。
めくったタイルは他人に見せてはいけません。情報の共有は構いませんが、必ず口頭で伝えて下さい。
★めくったタイルが「目撃証言タイル」だった場合
この時だけ、タイルを例外的に公開します。そして、同タイルを引いたプレイヤーは自分以外のプレイヤーのアリバイカードを自分だけ確認できます。
確認した内容は他の人に情報共有してよいですが、タイルと同じく口頭でのみ伝達可能です。
アクション後、移動に費やした歩数(ボード上の移動マス数)+5分(探索=タイルをめくる行為)を消費します。
手番で行えること② 推理
犯人・凶器・トリック2種を指摘します。その後、以下の通り裁定します。
- 指摘された人が犯人で、指摘が真相と完全に一致している場合→正解である旨を伝えてゲーム終了
- 指摘された人が犯人で、指摘が真相と一部でも異なる場合→「違います」とだけ伝えてゲーム続行
- 指摘された人がそもそも犯人でない場合→「違います」とだけ伝えてゲーム続行
推理が真相を言い当てていた場合は、一般人(探偵役)全員の勝利となります。もし推理が外れていた場合も、まだ行動できるプレイヤーがいれば、ゲームは続きます。
アクション後、10分(推理)を消費します。
なお、犯行で使われた可能性のある凶器やトリック等を推理する上では、死体の場所や証拠品との関係性を簡潔に整理したサマリーシートが製品にプレイヤーの人数分付属しており、それを参考に行えることを補足しておきます。
これらを繰り返し、全員が行動できない状態となっても、真相が明らかになっていない場合は、犯人の勝ちとなります。
プレイ記
プレイ準備等
妻と友人のKとの3人プレイで遊びました。
まず、ゲーム開始前に、夜の犯行はどうやればよいのかの意識合わせをするために、皆でゆっくり犯行のリハーサルをしました。
ただ、それでも他の二人は「犯人できるかな〜」と不安な様子でした。そのため、できれば最初のゲームでは自分が犯人カードを引きたいところでしたが、
俺、犯人やるよ!
と言えるゲームではないので、全てはカード運に委ねることに。
1戦目
犯人カードを引きました。二人に気付かれないように内心、喜びと一安心。
続いて引いたアリバイカードは「寝室」でした。しっかりと記憶して、夜の犯行に向かうために目をつぶります。
夜の犯行
今回、私たちが遊んだ時はスマホアプリを使いました。
私の携帯はiPhoneです。公式に提供されているのはAndroidのみでiOS版のアプリは無かったので、これは動画でやるしかないかな……と思っていました。
この度!ON人狼に続き、ミステリーホームズでプレイする際にお使い頂けるタイマーアプリ[MHomesタイマー]をリリースいたしました!
— ボードゲームサークル 《みかげの木》 (@mikagenoKi) 2019年9月22日
ミステリーホームズお持ちの方はぜひ!
App名: MHomesタイマー、デベロッパ: Hiroyuki Kinoshita pic.twitter.com/K8TNa1Kqpp
ところが、ちょうど遊ぼうとした日の夕方に、有志の方によってiOS版のアプリが提供されるという奇跡的な幸運が! ありがてえ!
以下、アプリへのリンクを貼っておきます。
それでは、夜の犯行に移ります。
ふと横を見ると、妻とKが細かい息遣い等までは聞こえないよう、目をつぶりながら耳の横で髪のあたりをわしゃわしゃやっていました。アプリによるアナウンス(犯行終了など)を聞き逃さないようにしつつ、犯人の息遣い等は聞こえないようにするために考えた策がこれでした。
その姿を見ただけで少し面白くなってきますが、割と疲れそうなのでさっさと犯行を終わらせてしまいましょう。
まず、手順通り凶器カードを確認すると「槍」でした。
槍は
凶器タイルを自室、死体タイルを隣室に起き、血痕の証拠タイルを死体と同じ位置に置く
という旨の事が凶器カードに書いてありました。多分、隣の部屋から被害者を刺したようなイメージですね。
まず、槍の凶器タイルは選択の余地がないのでさっさと自室に置きます。
では、死体タイルは何処に置くか。寝室の隣はダイニングと浴室の二つがあるのですが、他にも隣室に死体を置く系の凶器があることから、死体は色々な部屋と繋がっている部屋に置いた方が良さそうと考え、ダイニングに死体を配置しました。また、同じ場所に血痕の証拠品タイルも置きます。
この時点までの形を再現すると、上のようになります。なお、念のため確認ですが、配られたアリバイカードから私は寝室にいることになっていますよ。
続いて、残りの凶器をばら撒きます。この時、ナイフや毒ナイフによる犯行の可能性をほのめかすためにナイフをダイニングに一つと、その隣のリビングに一つ置きました(ナイフだけは他の凶器と異なり、タイルが2つあります)。
それ以外の凶器は適当にばら撒きました。本当は拳銃も隣室系の凶器なので、そこまで考えれば良かったのですが、やはり少し浮き足立っていて、そこまでは気付かず。
続いて、トリックカードを引きます。
引いたのは自身のアリバイカードをまだ配っていないアリバイカードと交換する「アリバイ工作」。あと、同様に他人のアリバイカードを配っていないアリバイカードと交換する「記憶誤認」でした。どちらもアリバイ系ですね。
まず、「アリバイ工作」を適用する事で自分のアリバイカードを交換した結果、自身の所在が「書斎」になりました。これで本当の凶器である槍が置かれている寝室からは一気に離れました!
ただし、書斎には証拠品の「ずれた時計」を置かなくてはなりません。アリバイトリックを看破する証拠という訳ですね。
続いて、今度は「記憶誤認」を適用して妻のアリバイカードを交換します。妻は元々玄関のカードを引いていましたが、トリックにより、妻のアリバイカードを勝手に「浴室」と交換してしまいます。
なお、このトリックでも証拠品「ずれた時計」を置いていきます。今度は妻が元いた玄関に2個目のずれた時計を配置します。
結果的にこうなりました。書斎と玄関に、「ずれた時計」の証拠品タイルが一つずつあるのが分かると思います。
ここまでやったら、凶器と証拠品のタイルを全て裏返しにします。
最後に、目撃証言タイルとスカのタイルが混ざった「その他タイル」を全部屋の死体タイル以外のタイルが3枚ずつになるよう配置して、犯行終了です!
この後は何食わぬ顔で、私も一般人と共に朝を迎えます。
個人的には、この時点で既にもうかなり面白いです。皆が寝静まった夜に、一人暗躍した気分を存分に味わいました。
ちなみに、妻に後で確認しましたが、夜の様子からは誰が犯人かさっぱり分からなかったみたいです。タイルがカチャカチャ置かれているのは聞こえたが、私とKのどちらが手を伸ばしてるのかは分からなかったとのこと。耳の横でわしゃわしゃは有効みたいですね(笑)
昼の時間
朝が来て、目を開ける三人。私はここから、犯人でありながら、事件を解明しようとする一般人を装う必要があるわけです。
まず、皆がどの部屋にいたのか、アリバイカードの内容について共有しようと呼びかけました。その結果、
- K→リビング
- 妻→玄関
- 私→書斎
という回答結果に。
私はトリックでアリバイカードが変わっているので、移動前の寝室ではなく、移動後の書斎と答えます。
そして、妻は玄関と答えていますが、私がこっそり浴室に変えています。もし、Kが目撃証言タイルを拾い、妻のアリバイカードを見るような事があれば、面白い事になりそうですが……(笑)
アリバイについて確認したところで捜査を開始。
まず、妻が死体の出た部屋で「ナイフ」を、Kが「血痕」をそれぞれ見つけます。私は犯人なので、二人が本当の事を言っていると知っています。最初の自分のターンで速攻で「血痕」を回収して揉み消す(何もなかったと言う)つもりだったのに、たまたま最終手番になってしまったので、いきなり計算が狂いました。
となれば、次にやるべきはトリックの痕跡を隠す事でしょう。初手で死体のあった部屋を探らないのは不自然なので、自分も一度ダイニングを調べます(結果は当然ハズレ)。その後、私は妻の犯行を疑うフリをして玄関に移動し、証拠品「ずれた時計」をこっそり回収します。そして「ハズレだったよー」としれっと伝えます。
これでアリバイに関するトリックが一つ使われた事はバレにくくなりました。
一方の妻は私を怪しんだのか、玄関に追いかけてきて自身もタイルをめくります。その際、目撃証言タイルを見つけ、私のアリバイカードを確認。しかし、持っているカードは回答した内容と同じ「書斎」なので、発言に矛盾は生まれません。トリックが効いていますね。
私は妻の次に、Kを疑うフリをして彼がいたリビングに行って探索。そして、自分で置いておいたナイフを自作自演で見つけ、皆に伝えます。これによって、ナイフでリビングで殺害されたか、またはリビングの隣室から毒ナイフで殺害されたかした後に、死体が隣室に動かされた(そういうトリックがあります)犯行の可能性を匂わせます。
本来ならナイフは自分以外の誰かに見つけてほしかったところですが、皆の動き上、自分以外はリビングに来なそうだったので、さっさと自分で拾いました。
その後、Kは私がいたと主張している書斎へ向かうと言い出しました。
書斎には、ずれた時計があります! 見つかると、私が犯行時に本当は書斎にいなかった可能性を検討されてしまうのでマズいです。
しかし、Kが引いたのは残念ながらスカのタイルでした。私はこっそり安堵します。
が、妻も書斎の捜査を始めました。今度こそ、ずれた時計が見つかるか!?
と思いきや、次に妻が見つけたのはライフルでした。偽の凶器ですね。事件とは無関係です。
ところが……ここからKと妻の推理が「私がライフルでダイニングの被害者を撃ったのでは?」という方向に走り始めます。
ライフルの場合、
死体タイルを自分がいる場所以外で、かつ隣接しない部屋に置き、また死体タイルのある部屋に証拠品「銃弾」のタイルを置く
という凶器の特性があります。ライフルを書斎に置いてあったのはたまたまですが、結果的にミスリードになっていたようです。
しかし、この場合、ダイニングには「銃弾」が無ければ辻褄が合わない。のですが……。
妻「分かった! 最初のターンでダイニングであるこじが拾ったタイルはハズレって言ってたけど、実は銃弾で証拠隠滅したんだ!」
と言い出しました!(笑)
確かに、それなら話としての辻褄はバッチリ合っています。初手、不自然に思われないようにダイニングで探索をしたのが、思わぬ効果をもたらしました。
面白い事になってきましたが、書斎でずれた時計が見つかったら、この推理には修正が入るでしょう。
ラスト1つのタイルが「ずれた時計」なのは確定です。これが見つかれば、私が書斎にいたという話自体が怪しくなってくるので回収したい……のですが、ここは回収を躊躇いました。
何故かというと、勝ち負けはともかく、ずれた時計を見つけた時の二人の反応が見たかったのです(笑)
そんなわけで、無為と知りながら私はリビングでの探索を繰り返して時間を消費します。
迎えたKのターン。さあ、書斎で最後のタイルを引いてくれ! そして驚いてくれ!
K「もうこの部屋何もなさそうだし、他の部屋行こうかなあ」
おいいいいいい! 書斎調べてくれよ!
しかし、幾らなんでも犯人の私が
その部屋、調べた方がいいんじゃないの?
なんて発言はさすがにできません。
探偵サイドの妻がKに調査を促してくれたらよかったのですが、もう完全にライフル説に飛びついてしまっており、あとは使われたトリック2種が何か検証に入ってしまってました。
Kはその後、一応隣の部屋調べとくかーということで、何と私が本来いたはずの寝室に移動! しかも、真の凶器である槍を見つけます!
しかし、Kのリアクションは薄い……もう槍についても、殆ど関心を示していません。
それだよ! それが本当の凶器なんだ!
と言いたいところですが、これまたそんなことを言えるわけもなく……。
盤面を分かりやすくするため、最終的に各人が申告した通りにタイルを並べるとこんな感じです(注:実際のゲーム中はタイルを他人に見せるのは禁止なので、やってはいけません)。玄関にある「ハズレ」と私が申告済のタイルは、実際には「ずれた時計」ですね。Kが妻のアリバイカードを見る機会があれば、このトリックには気付けたのですが、残念ながらその機会はありませんでした。
槍と血痕だけ見れば、寝室からの殺害の可能性も気付きそうなものですが、私のアリバイカードが示す場所が書斎で、そのカードを妻が現物で確認していることが目くらましになっているのですね。
その後、Kも妻もライフルを凶器に固定し、その上で成立しうるトリック2種の組み合わせは何かを検討するフェーズに入ってしまいました。
結果、推理は当たらず、犯人勝利。
勝ったのは嬉しいんだけど、もうちょっと追い詰めて欲しかった……。
ルパンや怪人二十面相、また、漫画『金田一少年の事件簿』に登場する高遠遙一の気持ちが少し分かったような気がしました(笑)
2戦目
このゲームを大層気に入った私と妻の希望で、翌日に同じメンツで再戦。
今度は一般人です。探偵サイドもやってみたかったから、ちょうど良かったです。
夜の時間
今度は私が耳の横でわしゃわしゃとやってひたすら待つ番です。確かに、意外と誰が動いているか分からないですね。
そして、微妙に腕が疲れます(笑)
待つこと数分、犯人による犯行(セットアップ)が完了!
目を開けると、そこには死体タイルと、無数のタイルが裏向きにボード上に広がっていました。
一般人サイドは、これはこれで少しドキドキしますね。私以外の誰かが秘密裏にこれを作ったのか……と考えると、なかなかに感慨深いものがありました(笑)
昼の時間
今回もまずはアリバイを共有。
- K→浴室
- 妻→ダイニング
- 私→寝室
と各人は申告。ふむ。
死体はダイニングにありました。妻がいた場所ですね……のっけから怪しいんですが。
ともかく、調査開始。まずはセオリー通り現場を調べます。
すると、私が一発目で証拠品の「毒薬」を発見。やったぜ。これは犯人の出鼻をくじいたのではないでしょうか?
Kは同じくダイニングで探索するが、ハズレ。続いて妻がダイニングの最後のタイルを調べるか……と思いきや、私のいた寝室に移動してタイルをめくってました。行動があからさまに怪しすぎだろ。
そして、Kがダイニングで残り1枚のタイルをめくります。普通にいけば、残ってるのは凶器だけです。
K「紅茶だった」
……紅茶?
そう、このゲームには紅茶が凶器の一つにあるのです。正確には毒紅茶と呼び、
死体タイルを好きな場所に置く。その死体タイルと同じ場所に凶器「紅茶」、自分のアリバイカードの部屋に証拠品「毒薬」を置く。
という特性を持ちます。
ここまでの捜査を整理すると、ダイニングからは
- 死体
- 紅茶
- 毒薬
が出てきました。そして、ダイニングにいたのは妻。
素直に考えれば毒薬がある部屋にいる人が犯人なので、めちゃくちゃ妻が怪しいのですが、逆に怪し過ぎて犯人じゃないんじゃないかというレベルです。
だって、ミステリーで
事件の容疑者が朝起きたら、その部屋に死体があって、その横に毒薬と紅茶が置かれていた
って……もう、完全に罪をなすりつけられた人ですよね? そんなあからさまに怪しいシチュエーションある??
つまり、仮に妻のアリバイカードがダイニングで凶器:毒紅茶を引いた犯人だったとして、毒薬はダイニングに置かなければならないとしても、わざわざ自分のいる場所に死体と紅茶を置くか? という疑問が生じるわけです。
そもそも、凶器「毒紅茶」の強みは、自分のアリバイカードと無関係な所に死体を置けば、自分が犯人と怪しまれにくい点(自室の毒薬をこっそり証拠隠滅できれば)にあります。なのに、今回のケースでは妻の所在の場所に死体が置かれてしまっているのです……これはかなり不自然ですよね。
どう考えるか。自分が犯人でないのは確定なので可能性は大きく二つあって、
- 犯人はKで、妻がダイニングにいる事を知らずに死体を置いた。凶器はよく分からないが、とにかく毒薬はフェイク(トリック「偽の証拠品」を使った)。
- 犯人は妻で、敢えてダイニングに死体と紅茶と毒薬を置いた。わざと不自然な状況を生み、逆に嫌疑を晴らそうとしている。
こんな感じでしょうか?
いずれにせよ、ミステリ好きとしてはこれ以上無いくらい面白い状況です。是非、真相を当ててみせたい!
とりあえず、私のターン。妻がわざわざ動いた寝室に何かあるのか? と念のため、自分も合わせ打ち。すると、目撃証言を引いた。
どっちのアリバイカードを見るか迷ったが、妻が犯人なら何となく行動が読めるだろうと踏んで、Kのアリバイカードを見に行く。結果、Kは申告通り浴室だった(アリバイ系のトリックが使われている可能性はありますが)。
続いて、妻はもう一度寝室を調べる。凶器のライフルを見つけて報告……だけど、どうにも時間稼ぎっぽいなぁ。
Kは誰も居たと申告していないリビングへ移動。そして、最初の一枚目で凶器のナイフを見つける。
これはどう考えればいいのか?
犯人じゃないから凶器を速やかに見つけた結果、報告してくれたとも取れるし、1ゲーム目で私がやったように、犯人だからこそ、色々な可能性が生まれるように"隣室のナイフ"を拾う事で推理をミスリードしようとしているとも解釈できる。
とりあえず、リビングの探索はKに任せて私は玄関へ。そこでは一度ハズレタイルを引くも、次の手番で槍を見つけた。
これも隣室から刺せる系の凶器ですね。この辺は1ゲーム目の経験から犯人も学んで、それなりに考えて凶器をばら撒いてきていると読み取れる。
そして、妻のターン。わざわざ寝室からダイニングを横切り、リビングまで移動してタイルを引く。
寝室の近くの部屋(たとえば浴室とか)のタイルを調べればいいのに……?
妻「ハズレでした」
どうにも妻の行動がいちいち怪しく見える。
これはもう妻が犯人で決まりかなー。ただ、いずれも行動が怪し過ぎてどれが本命の証拠隠滅なのかが読み取れない。
しかし、そろそろ捜査の時間がなくなってきた。推理にいかないと終わってしまう。
Kはまだ時間があったので書斎へ。そして、今度は拳銃を見つけてきた。うーん……関係なさそう?
どうにも推理が絞れないが、見つかったと言われているものだけで状況を整理すると
- ダイニング→死体・毒薬・紅茶
- 寝室→ライフル
- リビング→ナイフ
- 玄関→槍
- 書斎→拳銃
……こうしてみると、気になるのは証拠品として血痕や銃弾が出ていない点です。
となると、やはり凶器は毒紅茶なのだろうか?
犯人は明確には絞れていないが、さっきから行動が何かと不自然に見えるのは妻だった。
偽装されている可能性もあるが、毒が本物の証拠品で、かつ移動されてないと仮定するなら、やはり犯人は毒薬が置かれていた部屋の妻という事になる。
考え過ぎていてもラチがあかないので、ひとまず試しに推理のアクションを行う。
私「犯人は妻。凶器は毒紅茶。トリックは『偽の証拠品』と『とくになし』」
妻の行動で印象に残っていたのが、開始直後に寝室に行って、タイルをめくっていたこと。
あれは、今回の凶器等に全く無関係の証拠品を「偽の証拠品」で配置しており、それを回収に行ったのではないか? と考えた。そのため、使われたトリックに「偽の証拠品」を挙げた。
もう一つ挙げたトリック「とくになし」は何かを偽装したと見せかけて何もしないというトリックで、犯人からしてみればハズレに近いもの。
妻「違います」
残念ながら推理は失敗。残された時間的には、私はもう一度だけ推理できる。
その後、Kも毒紅茶を軸に推理を展開するが、やはりハズレ。うーん……。
妻は推理もせずに客間のタイルを漁っている。「ギリギリの時間まで情報を集める!」 とのたまっているが、全く真相を考えている様子がみられない……これはもう妻が犯人濃厚だろう。
1戦目に続き、今回も盤面の理解のためにタイルを並べて再現してみましょう。ちなみに、今回は私が犯人ではないので、誰かが嘘の報告をしていてもわかりません。上のボードは、全員が本当の事を言っていた場合の内容である点にご注意下さい。
状況を整理して考えます。そもそも、本当に凶器は毒紅茶なのか?
例えば、妻がダイニングで毒ナイフで殺害し、死体を一度寝室に送ったと考えればどうか? そしてその後、死体を移動するトリックを使って、寝室からダイニングに動かした。更に、妻が寝室で拾ってハズレを装ったタイルが実は血痕だったとすれば……?
しかし、だとすると寝室にあった凶器がライフルであるのはおかしい。そこにはナイフが無ければならない。
ただ、ライフルがあったって報告したのは妻だったんだよな……そこも引っかかる。
また、他にも可能性はある。たとえば、上の話と同じく、妻が寝室で拾ったタイルの一つが実は血痕だったと仮定すると、寝室で普通のナイフで殺害後、死体移動で寝室からダイニングに死体を移動させ、偽の証拠品で毒薬をダイニングに置いた。これならどうだろうか?
……いやいや駄目だ、だって俺が寝室にいたんだから。しかも、昼の時間に私のアリバイカードをKが確認している。アリバイトリックで場所が変わってる可能性も無い。つまり、寝室での殺害だけはあり得ないのだ。
散々悩んだ末に、最終結論を出す。
私「最後の推理。犯人は妻、凶器は毒紅茶。トリックは『偽の証拠品』と『持ち去り』」
結局、やはり凶器は毒紅茶だったと考える。
ダイニングの状況は妻がわざと作ったと判断。その上で、ダイニングに「偽の証拠品」で無駄な証拠品を置き、それを更にトリック「持ち去り」(何らかのタイルを隣室に移動するトリック)を使用して寝室に動かしたと考える。そして、その証拠品タイルは妻が初手で寝室に移動し、自分で回収したのではないか。
つまり、盤面にほぼ何の影響も及ぼさない、言わば"トリックの空撃ち"を妻が行ったのではないかという推理をした。
さあ、どうだ!?
妻「……間違ってます!」
嬉しそうな様子の妻。間違いなく、彼女が犯人である。
最後に妻が私を犯人と指摘して時間を消費し、ゲーム終了。犯人役を務めた妻の勝利だ。
しかし結局、真相は何だったのか?
妻「凶器は毒ナイフで、所在(アリバイカードに書かれた場所)はダイニングだったよ」
毒ナイフか〜……で、そこからどうした?
妻「死体は最初、リビングに置いた」
リビング? ……そうか、確かにリビングにはナイフがあった。
再現すると、こういう形になる。なるほど……。
妻「そこから、トリック『死体移動』で死体をダイニングに動かした。あと、『偽の証拠品』でずれた時計のタイルを客間に置いた」
と言いながら、妻は客間のタイルを一枚めくる。確かに、そこには「ずれた時計」のタイルが置かれていた。
上の状態から、トリックを使ってこの形に持って行った訳か。
私「待った待った、じゃあリビングから血痕が見つからなかったのは?」
妻「私が回収したんだよ。リビングで」
そこまで聞いて、あっ! と気づく。
確かに、妻が不自然にリビングに行った時があった。あそこでタイルを回収していたのか……しかし、何故かそうした発想が自分には浮かんでこなかった。何で、その可能性を検討しなかったんだろ?
ダイニングで毒ナイフを使って寝室に死体を送ったケースは考えていたのに、ナイフがKの手で普通に見つかっているリビングに死体を送ったケースを考えなかったのは大きなミスでした……。
これについて後から落ち着いて理由を考えてみましたが、多分、初手で妻がリビングでなく寝室に行った事実から、きっと寝室に重要な証拠品があったに違いないと思い込んでしまったのだと思います。
私「ゲーム開始直後、リビングじゃなくて寝室に行ったのは何で?」
妻「まっすぐ回収に行ったら、印象に残ると思って少し待ったんだよ。あと、皆のアリバイ聞いて、多分リビングにはしばらく誰も行かないかなと思ってたから放っとこうと思って。そしたらKが行ったから、焦って急行して回収した」
そうか、最初に寝室に向かった妻の行動はフェイクだったのか……まんまとそれを深読みしてしまった。
妻「毒ナイフが〜、って検討し始めてた時は当てられるかとドキドキしたよ!」
というわけで、2ゲーム目は凶器の散らし方といい、捜査中の行動といい、妻に完敗でした。
まとめ
推理物好きにはたまらない魅力のあるゲームです!
犯人役は、犯行によって謎を生み出す楽しみと、また追及の手から逃れるためのスリルを味わえますし、探偵役はそうして紡がれた謎を足で調査した証拠品を元に推理する面白さがあります。
こうした動的な論理パズルのような楽しみがあるボードゲームとして、他に思いつくのが『惨劇RoopeR』です。
確かに惨劇ルーパーは凄く面白いのですが、その面白さの代償とでも言うべき点もあります。端的に言ってしまうと、準備と遊ぶのに労力と時間が掛かるという点ですね。1ゲームに3時間くらい掛かるのはザラです(笑)
その点、本ゲームは公称30分ですし、長く掛かってもせいぜい1時間で終わりと推理物のゲームの中ではライトなプレイ感です。
もちろんその分、惨劇RoopeRほどの複雑さまでは持っていません。ただ、その難易度やプレイ時間が単純に軽くなっただけという訳でもないと思います。
惨劇RoopeRではこのゲームにおける犯人こと脚本家があらかじめ、謎を練りに練った上でゲームに臨みます。
一方、このゲームでは犯人が配られた凶器やトリックが何かを見て対応しなければならず、そうした当意即妙さが犯人に求められる点で差別化できると思うのです。
また、これはミステリの中で衝動的に殺人を犯してしまった犯人が、何とかその場を乗り切ろうと奮闘している姿にも重なるところがあって、設定として非常に良いなぁと思いました(もっとも、実際には凶器の中に毒薬があるので、完全に衝動的な犯行という背景にはならないのかもしれませんが……)。
犯人役は、夜だけでなく昼の時間も、一般人の振りをして館をうろつき、証拠を隠滅するというのはゲーム的にもシチュエーション的にも非常に面白かったです!
一点、ネックをあげるとすれば、惨劇Rooperほど複雑ではないにしろ、やはり犯人役を上手くできるか不安という人が多そうな点でしょうか。
ただ、犯人役は意外とバレませんし、仮に犯人だとバレたとしても、凶器とトリックの組み合わせまで当てるのはなかなか難しいです。
というのも、捜査では行えるアクション数が限られており、調査を完全に終える(全てのタイルをめくり終える)よりも前に必ず推理すべき局面が回ってくるので、探偵役は完全に事態を解明することはできないのです。
そのため、犯人役を務める方の「すぐに正体がバレてしまうかも?」というような心配は杞憂だと思います。
また、そもそも犯人としてバレるバレない以前にきちんと犯行がこなせる(セットアップできる)かが不安という方もいるかもしれませんが、その場合はゲーム前に一度、プレイヤー全員で犯行のリハーサルをオープンな場で行う事で、ある程度、不安は払拭できると思いました。
きちんとミステリ的な雰囲気を味わえ、探偵役・犯人役共に頭を使って推理や証拠隠滅の過程を楽しむ事ができ、それでいてプレイ時間も1時間に収まるくらいと、大変素晴らしいゲームでした!
以上、ゲーム『ミステリーホームズ』のルール説明、プレイ記、および感想でした。