あるこじのよしなしごと

東京の片隅で、妻と4歳の息子と三人で暮らしています。 ボードゲーム、読んだ漫画・本、観た映画・テレビ、遊んだゲーム、育児について、その他日常などを綴っています。

漫画『FLIP-FLAP』感想/ゲーセンというコミュニティの楽しさを描き切った、ピンボール愛に溢れる一冊

ざっくり言うと

とよ田みのるさんの漫画『FLIP-FLAP』の感想。「無意味」な趣味に取り組むことの意義やゲーセンという風変わりなコミュニティの空気について、熱くスピーディなピンボールというテーマと絡めて描き上げた傑作。

こんにちは、あるこじ(@arukoji_tb)です。

とよ田みのるさんの漫画『FLIP-FLAP』の感想です。

とよ田みのるさんといえば『ラブロマ』『友だち100人できるかな』などの作品を雑誌「月刊アフタヌーン」で連載されていた漫画家さんですね。今現在は雑誌「ゲッサン」で『金剛寺さんは面倒臭い』を連載中です。

また、ボードゲームが好きな方の視点では『大怪獣コトバモドス』のリメイク版でイラストを担当されていることでご存知の方もいらっしゃるかもしれませんね。

どんな漫画?

ピンボールがテーマの漫画で、一巻で完結するお話です。主人公 は高校を卒業したばかりの深町君です。

彼はヒロインである山田さんに卒業を機に告白するのですが、山田さんからは、行きつけのゲーセンにあるピンボールのハイスコアを塗り替える事ができたら付き合うという返答が。深町は知りませんでしたが、山田さんがこよなく愛するもの、それがピンボールなのでした。

かくして、日がなピンボールに明け暮れる事になる深町君の大学生活が幕を開けることになります。

ピンボールの魅力

この漫画では何度となくピンボールの魅力についての説明が出てきます。私自身、ピンボールについて知っていることといえば

  • 2つのバー(正しくはフリッパーというらしい)でボールを打ち返す
  • ボールが打ち返せずにバーの間を抜けたらOUT

これくらいでした。深町君も同じような状態から話は始まるので、彼を通してピンボールについての説明が受けられます。

後書きによれば、とよ田先生がネームに詰まっていた際に、当時ハマっていたピンボールの事を思い切りぶつけたらネームが通ったとの事でした。そのため、随所にピンボール愛が描かれています。

この作品を読んでピンボールについて、

  • ミッションなどが設定されており、それを達成していく事で得点を稼ぐというゲーム性を持つこと
  • 台そのものを揺らすという行為がルールに組み込まれていること(なお、揺らし過ぎると機械によってファウルと判定される)

などを知ることができました。

昔のPCってピンボールのゲームがプリインストールされていて、とにかく何かしらのゲームを求めていた子供の頃の自分はとりあえず遊んだ事がありましたが、よく分からない英語の文字列がひっきりなしに表示され、困惑した記憶があります。今にして思えばあれはミッションの開始の合図だったんでしょうね。

ピンボールをプレイしている最中の描写はスピード感に満ちていて、深町の高揚する気分が伝わってきます。自分もピンボールを打ってみたい!という気持ちが湧いてきますね。

ピンボール(ゲーム)に注ぎ込む時間は無意味なのか

この作品の全体を通じて語られることの一つに、ピンボールやゲームなど、実生活の役に立たない趣味に時間を注ぐ事は無意味なのか?という問いかけが出てきます。

自己啓発や資格取得、実用書が対象の読書などが趣味であれば仕事や学業にそのまま役立ちそうですし、またスポーツ系の趣味であれば健康の為になるというメリットがあります。しかし、ゲームなどの趣味はえてして、それに没頭する者に時々「他の事に時間を使った方が有意義なんじゃないか?」という疑問を抱かせるように思います。

深町は、ピンボールという行為を通じて山田さんを射止めるという目的がその根っこにはあるものの、自らのスコアの伸び悩みから、ピンボールにひたすら時間を費やす行為に対して疑問を抱き始めます。そして深町はある日、山田さんにその疑問をぶつけます。

山田さんの答は明快で、ただ心が震えるから、楽しいからやっているというものでした。

この深町の悩みやそれに対する山田さんの回答という一連の話は私自身、かつてゲーセンに入り浸る生活をしていた事がある人間なので特に感慨深く感じられました。

私も、ピンボールではないですが、恥ずかしながら社会人になってからあるゲームにハマり、ゲーセンに日々通い続ける生活をしていた事がありました。休みの日は勿論、仕事のある平日も半分くらいは通ってました。帰って飯を食って着替えてからゲーセンに行き、日付が変わる頃までプレイしてから退散するという感じでした。そのゲームも、やり込む事で役に立つ事など何もありませんでした。しかし、幾許かのお金と、途方も無い時間を注ぎ込みました。

当時、何でそんなに情熱を傾けられたかといえば、結局のところ楽しかったからの一言に尽きるんですよね。

ゲーセンというコミュニティ

また、ゲーセンには同好の士が沢山いたというのも楽しかった理由の一つです。

ゲーセンで同じゲームをずっとやっていると、何となく顔見知りになり、徐々に風変わりなコミュニティが出来上がっていくのです。

深町君が出したスコアについてゲーセン常連の面々は台を囲んで語り合います。彼らもまた深町と同じくピンボール(と山田さん)に惹かれてゲーセンに通っているのです。

こうしたゲーセンで出来た友人とは、当然ゲームについての話をするのですが、それ以外の日常会話も交わしたり、たまに飯を食いに行ったり、更にうちのゲーセンでは忘年会めいた事もやっていました。本当に楽しかったなと思います。

ゲーセンでのピンボール大会の様子も漫画の中で描かれます。大会の時は、普段そのゲーセンにいない人達もやってきて、ちょっとしたお祭りになっています。

私の遊んでいたゲームでも、たまに店舗大会というものが開催され、他のゲーセンを「ホーム」にしている人が沢山集まり、またそこで交流が広まっていったものでした。

徐々に伸びていく深町のスコアに、常連勢は深町ならハイスコアを抜けるのではと期待を寄せ始めます。

このくだりから『FLIP-FLAP』が深町と山田さんとの恋がどうなるかだけでなく、ゲーセンというコミュニティにおける交友関係を描いた物語でもあるのだなと強く感じました。

まとめ

深町と山田さんとの恋、ピンボールというゲームの魅力、ピンボールやゲームといった"無意味"とされる趣味に対する一つの見解、そしてゲーセンというコミュニティでの友好など、物語中で様々な要素を取り上げながら、そのどれにも熱量を持った主張が込められている、とても熱い作品です。

個人的には、深町と山田さんとの一対一の関係を描くだけでなく、ゲーセンの他の常連や、また上の感想では言及しませんでしたが登場する店員さんなども含めた、ゲーセンというコミュニティの様々な楽しさが詰め込まれて描かれているところが良かったです。

話は一巻だけで完結しますので、気軽に手に取れるところも良いですね。

漫画冒頭には、とよ田先生の

ピンボールもボードゲームもビデオゲームも大好きです。全てのゲームを愛する人に捧げます!

というメッセージが掲げられていました。そのメッセージの通り、ゲームという名の付く物が好きな方なら総じて楽しんで読めると思います!

以上、漫画『FLIP-FLAP』の感想でした。

FLIP-FLAP (FUNUKE LABEL)

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