あるこじのよしなしごと

東京の片隅で、妻と4歳の息子と三人で暮らしています。 ボードゲーム、読んだ漫画・本、観た映画・テレビ、遊んだゲーム、育児について、その他日常などを綴っています。

漫画『笑ゥせぇるすまん』第1話「ともだち屋」感想

漫画『笑ゥせぇるすまん』第1話の感想です。

この漫画を先日再読した際、他に読んだ人の感想を知りたくて検索してみました。しかし、あらすじやオチの紹介、または内容がトラウマであるという点に言及されているものこそあるものの、個々の話の感想が書かれている記事は少なかったです。

そのため、自分自身の感想をまずは書いてみようと思い立ちました。どこまで続くか分かりませんが、漫画版を頭から読んで、個々の話の感想を書き連ねてみようと思います。

なお、感想の性質上、展開やオチなどに多々言及することになるため、ネタバレ多数になります。ご注意下さい。

他方、あらすじの紹介が主眼ではないので、話の枝葉末節は記載しないつもりです。そのため、本記事を読むだけでは物語の内容は分からない可能性が高いことも、ご了承下さい。

 第1話「ともだち屋」

お客様について

記念すべき喪黒福造・初登場のお話です。お客様は、同僚に馴染めず孤独に過ごしているサラリーマンの青井。彼は恋人はおろか、共に過ごす友人もいないようでした。

青井の孤独な描写を見ていると、時代の違いを感じます。同僚は飲みや麻雀で交流する中で、独り自宅で歌番組を見て泣いている青井……。

これがもし現代なら、青井は間違いなくインターネットをやっているでしょう。ネットがあれば、回線越しではあるものの対人のコミュニケーションは取れるわけで、この話の彼ほどの悲壮感は漂わないでしょう。そう考えると、インターネットについてはその功罪がよく語られますが、多くの孤独な人々を掬い上げる受け皿として機能していることは間違いないんだなあ、と思わされました。

初登場の喪黒さん

喪黒さんの初セールストーク。「高いビルがどんどん立つのに比例して孤独な人々も増える」とは言い得て妙です。現代は、掲載当時よりも更に高いタワマンが乱立し、そして人々の交流は減りました。昔に描かれた漫画とは思えない先見性を感じます。

さて、青井は喪黒さんに紹介された女性の友達・白木純子と、写真・声の入ったテープ・手紙を通じて心を通わせます。実際の姿は見せないという点が如何にも胡散臭いわけですが、案の定、彼女の存在は虚構でした。

物語のラストで青井は、喪黒さんから純子に会えると聞いた公園に出向きますが、それらが虚構であったことがある衝撃的な方法で示され、結果、青井は警察に連行される事に……。

この話というか、笑ゥせぇるすまんの序盤全般に見られることですが、特徴的な点に「主人公が何も悪さをしていないのに喪黒さんに嵌められる」というものが挙げられます。

青井の落ち度(?)

青井がやった悪いこと? という程でもないですが、若干良い格好をしようとした場面はありました。

喪黒さんから渡された純子との合成写真をうっかり落としてしまい(同ページの青井の様子からして、これは本当に過失で落としたのだと思います)、それを拾ってびっくりする皆に、ただの友達なんだよ、とさも当然といったように語るんですね。青井のこの行為、なんだか泣けてきます……。

ちなみにこの「自分の功績になるものを落とし、周囲がそれを拾って、落とした人を賞賛する」というパターンは、藤子A先生の他作品にも出てきます。それが、A先生の自伝的漫画『まんが道』のワンシーンです。

A先生は当時のクラスメートF先生と共に描いた『天使の玉ちゃん』という漫画作品をとある事情で新聞社に送ります。すると、その新聞社がそれを掲載してくれたんですね。これが藤子先生の初の連載作品になるわけですが、A先生がモデルの満賀道雄(まが・みちお)という少年は、その新聞をわざと学校の教室で落とします。すると、それを拾った先生やクラスメートが「お前すごいな!」と満賀を賞賛する……というシーンがあるのです。

何とも可愛いらしいエピソードですが、A先生は本当にこれと同じような事をかつてやったのかもしれませんね! そのときの記憶から、こうした描写を入れたのかな?と想像してしまいました。

閑話休題。ともかく、青井は特に悪い事はしていないのです。これまで皆から見下されていたのですから、少しくらい見栄を張りたくなるのも理解できます。しかし、話の最後では喪黒さんに嵌められてしまう。何とも理不尽な話です。

喪黒福造は何がしたいのか

最後の喪黒さんのセリフがこれ。

これがわたしの趣味なのです……

趣味じゃ仕方ない。と割り切れる訳はありませんが、ここでのポイントは、第1話の時点で喪黒さんは、趣味で「これ」をやっていると宣言している点ですね。

この作品を読んでいると「結局のところ喪黒福造は何の目的でこんな行動をしているのか?」と感じる事が多いです。しかし、その疑問に対する回答は、第1話で既に提示されているんですね。喪黒さんは趣味で動いていると。

すると、次に気になるのは「これ」って何を指すの?という点です。

  • 一度希望を持った人間(今回で言えば、女性の友達ができるとか)を、その後絶望にたたき落とすこと?
  • 見栄を張る行為など、人間としてのある種の滑稽さを笑うこと?
  • ちょっとした誘惑で分不相応な望みを持ったり誠実さを失ってしまったりする人間の「弱さ」を眺めること?
  • その人が無意識下で望む「本当の自分」を思い切り解放させてやること?

ざっと考えるだけでも色々ありますね。単純にどれか一つではなく、おそらくは上記の内の複合であり、ケースによって異なってくるのだろうと思いますが……。

喪黒さんの能力

さて、最後に注目したいのが喪黒さんの能力です。アニメなどで印象の強い「ドーン!」はこの話では登場しません。そして、喪黒さんのやっていることも

  • 人の家に勝手に上り込む
  • 青井の悩みを察知する
  • 白木純子という架空の存在を写真・音声テープなどで作り上げる
  • タイミングを見計らった仕掛けで青井を警察に捕まえさせる

というように、どれもこれもやろうと思えば普通の人間でも可能な行為です。ドーン!のような能力は用いていません。

これが徐々に話が進むにつれて、人間離れした能力を使うようになっていくのですが……当初は異常な性質を持ちつつも、あくまで人間という設定だったのかもしれないなーと、そんな風に感じました。

以上、『笑ゥせぇるすまん』第1話の感想でした。