お客様は喪黒さんの紹介でレンタル彼女を借りる。喪黒さんとの「一度だけ」という約束を反故にし、おかわり要求をした最初のお客様。
こんにちは、あるこじ(@arukoji_tb)です。
漫画『笑ゥせぇるすまん』第30話の感想です。
感想の性質上、展開やオチなどに多々言及することになるため、ネタバレ多数になります。ご注意下さい。
他方、あらすじの紹介が主眼ではないので、話の枝葉末節は記載しないつもりです。そのため、本記事を読むだけでは物語の内容は分からない可能性があることも、ご了承下さい。
第30話「レンタル彼女」
お客様について
TVプロダクション勤務のAD、出雲一人です。名前の由来は「いつもひとり」から。
出雲はある日、同僚から食事会の誘いを受けます。それについて快諾する出雲ですが、その後同僚は後出しで「女性を一人連れてくること」という条件を出してきました。出雲は別に構わないと見栄を張りますが、実際には交際している女性もおらず、連れて行くアテもありませんでした。
そんな出雲は喫茶店で喪黒さんと出会います。自身の心中での嘆きを喪黒さんに言い当てられ、動揺する出雲。
ちなみにこのシーン、アニメ版では「綺麗なお姉さん、ブラック一つ」と喪黒さんがウェイトレスにちょっとしたお世辞を言っている様子が描写されます。喪黒さんのスマートさを表しつつ、恋人を作ろうと行動しない出雲の消極的な姿勢との対比としての演出でしょうか。
出雲は家に帰ってから、デートしている気分を擬似的に味わうためにビデオを見て、咽び泣きます。何とも切ない姿です。個人的には、何も泣かなくても……と思ってしまいますが。
ちなみに漫画ではここは特に描写されていませんが、タイトルとの絡みからしてビデオはレンタルしたものと思われます。実際、アニメ版では分かりやすく、お客様がレンタルビデオショップに立ち寄るシーンが追加されています。
最終的に出雲は、BAR魔の巣にて、喪黒さんに悩みを相談することに。その悩みに対して喪黒さんは、出雲に素敵な彼女をレンタルすると言い出します。困惑する出雲ですが、同僚との食事会を乗り切るため、その申し出を受けるのでした。
レンタル彼女という業態
この漫画に登場するレンタル彼女。連載当時こそ無かったですが、現代日本においては実際にある業態となっています。
他エピソードでも同じ事をよく書いていますが、藤子A先生の先見性にはいつも驚かされます。例えば、第14話「白昼夢」では昼キャバという業務形態が描かれていましたね。
たまにドラえもんの道具が現実のものになったという視点のニュースが流れる事がありますが、これは正に喪黒さんのサービスが現実のものになったという話です。未だ実現していない喪黒さんのサービスの中にも、ひょっとしたら金の成る木のサービスが埋もれているかもしれません。
ちなみにレンタル彼女については、「恋人代行サービス」という表記でwikipediaに項目がありました。
この項の記載内容によれば、日本でのサービス開始は2012年頃からだったようです。本エピソードが掲載されたのは1990年頃ですので、およそ20年前の事となりますね。
ちなみに今ではレンタル彼女がテーマの漫画作品も連載されています。『彼女、お借りします』という作品です。
週刊少年マガジンで連載中ですので、興味がある方は読んでみてはいかがでしょうか。
初めてのおかわり要求
さて、出雲ですが、同僚との食事会にレンタル彼女のエリを同行し、事なきを得ます。美しいエリが出雲に献身的に接する姿に、恥をかかせてやろうとしていた同僚は当てが外れます。むしろ、出雲を羨ましがる様子を露骨に表し、それぞれのパートナーから睨まれる始末。
ちなみに漫画版では描写がありませんが、アニメ版ではこの後に出雲とエリが夜の横浜でデートしている様子が描かれていました。
難局を何とか乗り切った出雲でしたが、喪黒さんにお礼を言うのにかこつけて、あるお願いを切り出します。
エリにもう一度会いたいという要求です。もう一回会えば諦めが付くと出雲は言いますが、本当にそうでしょうか? 何としても会いたいがためにそう言っているだけにも聞こえますが……。
この出雲の願いに対して喪黒さんは
う〜ん、そんなにいうなら会わせてあげてもいいですけど……そのかわり、どんなことになっても知りませんよ!
と出雲の希望を受け入れるのでした。
ところで、『笑ゥせぇるすまん』では喪黒さんが「一回だけの措置」と伝えたにも関わらず、その約束を反故にして、もう一度同じサービスの履行を迫り、その結果お客様が破滅するというパターンが幾度となく展開されます。
実は今回の出雲の行動こそ、そうしたお客様がおかわりを要求する初のケースとなります。
ちなみにこれ以前では、第16話「的中屋」でもお客様が喪黒さんの競馬予想についておかわりを要求する話があります。
しかし、この時は喪黒さんは一度だけとの約束は元々しておらず、またお客様の破滅もおかわり要求した事が直接の原因ではないので、上述のパターンからは少し外れています。
最終的に、出雲はエリとまた出会う事が出来ました。しかし、その横にマネージャーと称するヤクザ風の男が同伴している様子が描かれた所で、この話は終わります。
ラストのオチはどこまで悲惨か?
この話のオチについて、どう解釈するかは人によって分かれる気がします。
まず、エリのレンタルというサービスには暴力団関係者などが関与している。この事実については、誰も異論がないところでしょう。
問題は出雲にとって、どこまでそれが不利益なのかという話です。
ヤクザが登場して女性絡みとなると、美人局による恐喝を一見想像しますが、これは男の「マネージャー」という台詞が否定しています。エリは美人局ではないのです。
ヤクザの台詞に着目してみると、
これからもひとつよろしゅう
となっています。この台詞について、出雲を今後の「お得意様」として扱っているのだと受け取るならば、男はエリのレンタルを事業として展開しており今後も出雲が金さえ出せばレンタルは可能だという事です。
もちろん、暴力団関係者との繋がりができることは恐ろしいでしょう。気弱そうな出雲にとっては尚更です。しかし、ヤクザが出雲と定期的に、長い付き合いを望むのであれば、いきなり半殺しの目に遭うような事はないでしょう。多少押し売り的な被害が出る可能性はありますが、金を出せば対価としてエリをレンタルできるのであれば、出雲にとっては必ずしもマイナスだけではないように感じました。
問題があるとすれば、出雲が本当の恋人を作りたいと思った時ですかね……。ただ、これについては当人のマインドが後ろ向きなので、何とも言えませんね。仮に今回の被害に遭っていなかったとして、それなら出雲が積極的に行動して恋人が作れるのかというと疑問符がつきます。出雲の魅力がどうこう以前に、食事会の話が出た際にも何とかしようと本人から動く意思が感じられなかったためです。
いずれにせよ、喪黒さんに出会って出雲が受けた被害としては、他のお客様の被害と比べればまだマシなレベルだったのではないかというのが私の総括になります。
以上、『笑ゥせぇるすまん』第30話の感想でした。