あるこじのよしなしごと

東京の片隅で、妻と4歳の息子と三人で暮らしています。 ボードゲーム、読んだ漫画・本、観た映画・テレビ、遊んだゲーム、育児について、その他日常などを綴っています。

漫画『笑ゥせぇるすまん』第40話「看板ガール」感想

ざっくり言うと

お客様は街中の看板に写真が使われている外国の美人モデルに憧れた青年。笑ゥせぇるすまんの漫画原作で唯一、お客様が喪黒さんに「負けた」と言わしめたエピソード。

こんにちは、あるこじ(@arukoji_tb)です。

漫画『笑ゥせぇるすまん』第40話の感想です。
感想の性質上、展開やオチなどに多々言及することになるため、ネタバレ多数になります。ご注意下さい。
他方、あらすじの紹介が主眼ではないので、話の枝葉末節は記載しないつもりです。そのため、本記事を読むだけでは物語の内容は分からない可能性があることも、ご了承下さい。

第40話「看板ガール」

お客様について

イラストレーターの佐治栄治です。名前の由来は……よく分かりませんでした。

アニメ版では夢見憧太という、由来が分かりやすい氏名に改変されていることを考慮すると、漫画版の氏名は元々テーマとのリンクが考えられていないのかもしれませんね。

お客様がイラストレーターということは、漫画家である藤子A先生と接点のある職業なんですよね。ひょっとしたら、佐治は藤子A先生のお知り合いがモデルなのかもしれませんね。このエピソードの下地になるような出来事があり、その事から藤子A先生はモデルとなったイラストレーターの方の名前をもじって佐治栄治と命名したのかもしれない、などと想像しました。

お客様の佐治は街中の看板に写っている、美人モデルに憧れていました。その想いは強く、彼女の看板を自らの手でイラストに描き起こすほどです。

彼女と直接会ってみたいという気持ちもありましたが、高嶺の花である彼女と知り合う事は無理だと諦めていました。

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しかし、佐治が看板を眺める所に差し掛かった喪黒さんは彼の話を聞いて、佐治を看板の美人モデルに会わせてあげると言うのでした。

憧れの美人モデルとの出会い

佐治は自宅に戻ってから、喪黒さんとの会話を思い出します。冷静になって考えてみれば、あんな怪しい風体の喪黒さんが美人モデルとの繋がりがある筈が無いではないか……と彼は考えます。

酷い言い草ですが、自分が同じ立場になったら、似たような気持ちになるでしょう。佐治の言い分も分かります。

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そんな佐治の諦め混じりの気持ちは、実際に看板に写真が採用されている美人モデル・リンダが佐治の家を訪れたことで払拭されます。彼が自身の熱烈なファンであることを知ったリンダは、彼に対して感謝のキスをするなど、友好的に接するのでした。

後日、BAR魔の巣で佐治は喪黒さんに感謝の念を伝えるのですが、その際にもう一度リンダに会わせてほしいと言い出します。

要求のおかわりは、笑ゥせぇるすまんシリーズではお約束の展開の一つです。これまでに紹介してきた話の中では、30話「レンタル彼女」などもそれに当てはまりますね。

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喪黒さんは佐治に、もう一度だけ会わせてもいいが、リンダには絶対に佐治の方から触れないことという忠告をします。

その後、喪黒さんの取り計らいで、リンダは佐治の自宅を再度訪れるのですが、二度目はスケジュール的に調整が厳しかったのか、

アイムソーリー、キョウハジカンガアリマセン。カオヲミタダケデカエリマス。

とつれない態度で佐治に伝えます。しかし、佐治は長く一緒にいたいと言って、リンダの腕を掴み、離しませんでした。

それに対してリンダは佐治の顔面を殴りつけます。そうして彼の拘束を解いた彼女は、怒った態度で立ち去るのでした。

まあ、これは喪黒さんの忠告云々の問題じゃないですね。誰だって怒って当たり前の事を佐治はやらかしています。

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リンダのパンチによってダウンしている所に現れた喪黒さんは、もう二度と彼女とは会えないことを佐治に告げます。

翌日、佐治が看板を見ると、そこに写っているのは外国人モデルのリンダではなく、着物を着た日本人の女性に変わってしまっていました。佐治は二度とリンダとは"会えなく"なってしまったというオチです。

負けを認めた喪黒さん

しかし、この話がいつもと違うのはここからです。

喪黒さんはリンダに会えなくなった佐治が打ちひしがれている事を想像していたのでしょうが、当の佐治はというと

やっぱり日本人のカワイコちゃんの方がいいなっと! また喪黒さんにたのもう…

といった風にまったく落ち込んでおらず、更に喪黒さんに新しい子に会わせてもらうことを考えているのでした……。

これに対して喪黒さんは

イヤー、あの青年のきりかえの速さには負けましたなあ

とコメントを残し、この話は終わります(その後、佐治が実際に日本人の女の子に会わせてほしいと依頼したのかは不明)。

喪黒さんからドーン!を喰らっても、結果的に全くのノーダメージだった佐治。漫画版において喪黒さんがお客様に対して負けを認めたのは、この話一つだけです。そういった点で、この話はとても印象深いです。

このエピソードを読むと、一つのことに執着し過ぎず、何か問題が起きても自分の考え方をパッと切り替えられる人間は強いのかなと感じさせられます(そんな真面目な考察をするような話ではないのかもしれませんが……)。

アニメ版との差異

さて、漫画版では喪黒さんにある意味打ち勝った佐治なのですが、アニメ版ではどのような展開になっているのか?

この話はアニメでは幾つかの要素が改変されています。それらについて、以下解説します。なお、アニメ版ではお客様の名字が「夢見」となっているので、比較しやすいようにそちらの名前を用います。

リンダの性格が親しみやすく、柔和になっている

漫画版のリンダは、全体的に大人っぽく、ビジネスライクな印象です。二回目に佐治の家を訪れた際は時間がないことでその傾向が特に強いのですが、一回目の来訪の時点でも、その接し方は「熱烈なファンに対するサービス」といった様子がみてとれ、佐治に対して好意的ではあるものの何処となく「プロ」っぽい対応を感じさせます。

一方、アニメ版で夢見に接するリンダは漫画版に比べると愛嬌がある感じです。夢見に対する態度も、一度目の来訪時は夢見が看板のリンダをモデルに描いた沢山のイラストに大層感動しており、本物の自身をモデルに絵を描く事を許可するなどしており、漫画版よりもかなり親密に接します。

二度目の来訪時も、お前に割く時間が惜しいとばかりの態度だった漫画版リンダとはかなり印象が異なり、夢見に対して友好的な姿勢をみせます。

夢見がリンダの魅力に暴走して手を出した事で怒るのも同じですが、その際も漫画版のリンダが直接拳骨で殴ったのに対し、アニメ版のリンダは夢見の部屋にあった石膏像を咄嗟に投げつける形で抵抗しており、アニメ版の方がより防衛的な対応になっています。

夢見はイラストレーターとしての成功を得ている

上の項で、リンダが実物をモデルにして絵を描かせてくれたと書きましたが、夢見が描いたその絵が、普段接している仕事の相手の目に止まり、仕事の成功に繋がる様子が描写されます。

これは、笑ゥせぇるすまんの各作品が漫画→アニメになった際によく起きる現象の一つですね。漫画版よりも幸せの程度が増しているお客様の姿を描く事で、その後の悲劇への落差が大きくなる事を狙った演出かと思われます。

お客様がドーン! によって看板に閉じ込められる

一番大きな変化点はここですね。アニメ版の夢見は漫画版の佐治同様、看板がリンダから日本人女性に変わった事で、今度はあの子に会わせてほしいと考え、実際に喪黒さんに依頼までします。(ちなみに、この場面ではその依頼に喪黒さんがギャグアニメのようにズッコケます。普段、超然としている喪黒さんがコケる姿はなかなか貴重です)

喪黒さんはそんな夢見に対して呆れたと告げた上で、「いつまでもあの子と一緒にいなさーい!」と半ば自棄になったかのような様子で夢見にドーン!を掛けます。

結果的に、夢見は女の子と一緒に看板の中に入れてもらう(閉じ込められる)というオチになります。看板の中で意識を保っているのかは分かりませんが、物理的に脱出できない以上、実質的には死亡と同じ扱いといってよいかもしれません。

しかし、看板に閉じ込められている夢見はとても幸せそうな表情をしています。看板の中でも、彼女と一緒なら幸せなのでしょうか? このお客様はつくづく強メンタルだなと感じます。

なお、アニメ版のラストが漫画版の内容から変更された理由については、よく分かりませんでした。

ラストシーンが漫画版の展開を踏襲しつつ一部要素が追加されているだけである事からは、漫画版のラストに何らかタブーがあった訳では無いことが推測できます。

これはもう単なる想像ですが、アニメ版のラストシーンにおけるジングル(音楽)に漫画版のような肩透かしのオチが合わないというのが理由なのかな……と思いました。

アニメ版の展開が気になる方はAmazonプライム等でも観られますので、よかったら視聴してみては如何でしょうか。

以上、『笑ゥせぇるすまん』第40話の感想でした。


§ 本記事で掲載している画像は藤子不二雄A『笑ゥせぇるすまん』より引用しています。


 

笑ゥせぇるすまん (3) (中公文庫―コミック版)

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