あるこじのよしなしごと

東京の片隅で、妻と4歳の息子と三人で暮らしています。 ボードゲーム、読んだ漫画・本、観た映画・テレビ、遊んだゲーム、育児について、その他日常などを綴っています。

漫画『笑ゥせぇるすまん』第3話「化けた男」感想

漫画『笑ゥせぇるすまん』第3話の感想です。

感想の性質上、展開やオチなどに多々言及することになるため、ネタバレ多数になります。ご注意下さい。

他方、あらすじの紹介が主眼ではないので、話の枝葉末節は記載しないつもりです。そのため、本記事を読むだけでは物語の内容は分からない可能性が高いことも、ご了承下さい。

第3話「化けた男」

お客様について

お客様はサラリーマンの磯部錦一です。

◆追記◆

このお客様の名前は特に意味が無いと思っていましたが、「石部金吉(="非常にきまじめで物堅い人。特に、女色に迷わされない人。また、融通のきかない人物"のこと)」と掛かっていることに4話の感想を書いている際に気が付きました。笑ゥせぇるすまんの一つのネタである、話の内容とお客様の名前とがリンクするのは第3話からであるようです。

1話目、2話目ではいずれも孤独だったり、仕事が上手くいかなかったりと課題を抱えていた人がお客様でした。

しかし、3話目にして仕事も家庭も上手くいっていて、幸せにしか見えない人がお客様になりました。喪黒さん自身も

私が、この図に描いたように平和な一家をみたのは偶然そこへ通りかかったからであった

と作中で独白しています。

こうした、分かりやすく問題を抱えていない普通の人でも、人には見せない・言えない満たされない何かがあるということ。そこを描いた事こそが、笑ゥせぇるすまんがアニメを通じて人気を博した理由の一つであるように感じます。

磯部における満たされない心の隙間とは、日常における刺激・夜遊びに対する欲求です。

といっても、別にそこまでいかがわしいものでもなく、焼き鳥屋で主人にタメ口をききながら呑んだり、キャバクラに入ったりというレベルの行為。

何せ、喪黒さんの後押しで夜の街に繰り出した時の様子が

これです……。飲み物は常にビールで、焼酎を頼むことすら躊躇われる。世間体を気にして(?)なのでしょうが、かなり潔癖というか、気疲れする生活をしているのは間違いないですね。

磯部さん大暴れの図。磯部はアバンチュールがしたいと語っていましたが、

磯部錦一のようなやつらが逃げていきやがる

だとか

お前は磯部錦一じゃないんだぞ!

といった台詞の端々に、自身を弱い存在として見つめており、そんな自分に対する忌避感を持っているのだという事が伺えます。単に夜遊びしたいとかいう話とは少し違っていて、今の自分ではない、全く新しい自分になりたかったという事なんでしょうね。

磯部の落ち度

さて、1話・2話と落ち度がこれといってないお客様たち。3話目でそろそろ悪いお客様が登場してもいいのでは?と思うんですが、今回もこれまで同様、私の主観では磯部の落ち度は小さいです。

磯部は喪黒さんに変装を勧められ、それによって新たな世界に一歩踏み出します。そして、程良い刺激を得ながら、日常のフラストレーションも解消され、当初は上手くいっている様子でした。

そこで新たな喪黒さんからの提案。それは、変装している男としてもう一つの家と生活を持ってはどうか?というものでした。それは面白そう、と快諾する磯部でしたが……。

落ち度がもしあるとしたら、ここで喪黒さんの言葉の意味を深く考えずに話に乗った点でしょう。しかし、その前に喪黒さんがやったことといえば、変装グッズを貸すことだけ。まさか、そこから一気に話がエスカレートするとは誰も思いもしないでしょう。欲に目がくらんだという感じでもなく、磯部もまた理不尽な仕打ちを受けた一人といえます。

喪黒さんの能力

この話から喪黒さんの能力に変化が見て取れます。

オチの詳細を伏せてそこに触れる事はできないためラストについて言及しますと、磯部は田辺順吉という見知らぬ家の主人と混同され、気の強そうな奥さんと複数の子持ちとしての生活を余儀なくされ、自宅・元の人生に戻れない(?)事になります。

ここでのポイントは新しい家庭の存在です。喪黒さんが一体どうやって用意したのか?

特殊能力抜きで準備するなら

  • 新しい家族は喪黒さんが金で雇った存在。偽家族は演技であり、磯部を軟禁する目的で動いている。
  • 新しい家族の田辺順吉は喪黒さんの手によって何らかの理由で蒸発した。磯部は田辺に瓜二つであり、新しい家族は磯部を本当に田辺と思い込んでいる。

方法としては、このどちらかかなと考えました。特に後者は、他にも犠牲となった人がいたという点でなかなか面白そうです。

ただ、

  • いくら何でも、奥さんが他人の空似の磯部を夫とは誤認しない
  • 磯部をターゲットにしたのが「偶然」と語られている点が腑に落ちない(現実的な手順に限定するなら、偽家族の準備→失踪した主人に似たお客様を探す、となるはず。磯部をターゲットにしてから受け皿となる偽家族候補を探し、主人を蒸発させるというのはさすがに無理がありそう)

という事を考えると、やはり納得しかねる話です。

何より、そうやって偽家族を準備したとしても、肝心の磯部がその家から逃げ出さないのは何故かという疑問が残ります。

もし自分が磯部と同じ立場だったら、間違いなく私はこの家とは無関係だと主張して、その場から退散するでしょう。しかし、現実にはそうはならずに磯部は妻子ある自宅には戻らないのです。

これについて喪黒さんは

そのうち田辺順吉の生活が嫌になったら、多分また戻ってくるでしょう

と言っていますが、この発言を額面通りに受け取る事はできないでしょう。

偽家族がどういう経緯で準備されたかはともかく、少なくとも磯部は何らかのマインドコントロールや催眠の類で、田辺順吉として生きざるを得ない状況を強いられているものと思われます。

そして、喪黒にそうした能力がある事をここで肯定するなら、それはそのまま偽家族の準備に関しても行使されたと考えて然るべきでしょう。

2話までは人間の領域に留まっていた喪黒さんが、いよいよ得体の知れない能力を備えてきたことが示唆されるのが、3話における一つのポイントであると思います。

◆追記◆

磯部が偽家族から離れない理由について、アニメ版はどうなっているのか気になったのでチェックしてみました。すると、漫画では気が強そうな肝っ玉母ちゃんといった感じの田辺妻が、アニメでは水商売風の色気のある女性に変わっており、田辺がその妻に溺れていく事が示唆されていました。確かにこれなら、何故磯部が自分の家庭に戻らないのかという点について説明が付きますね。

以上、『笑ゥせぇるすまん』第3話の感想でした。