一花は本格的に学校を辞める手続きを進める。三玖や風太郎は一花が高校を卒業できるよう提案をするが、一花が受け入れることはなかった。その後、一花は四葉に対し、小学校時代の京都の記憶の有無を問いかける。
こんにちは、あるこじ(@arukoji_tb)です。
漫画『五等分の花嫁』94話「分枝の時①」を読んでの感想・考察です。感想・考察の性質上、展開やオチなどに多々言及することになるため、ネタバレ多数になります。ご注意下さい。
なお、下記は前話(93話)の感想・考察記事、および、感想・考察の記事一覧へのリンクとなります。よろしければ、ご覧下さい。
◾️前話の感想・考察記事
◾️感想・考察記事 一覧
出来事のおさらい・感想
94話で起きた出来事を簡潔に箇条書きすると、こんな感じでした。
- 一花が学校を辞めることを正式に学校側に伝える。
- 三玖・風太郎は一花が高校を卒業できるよう、それぞれのやり方でアプローチするが、一花の決意は覆せない。
- 風太郎の新しいバイト先について、三玖が提案する。
- 一花が四葉に、六年前の京都の事を語ろうとする。
94話は前話で明らかになった一花の休学騒動の掘り下げが主な内容でした。
風太郎と三玖はそれぞれの言葉で一花に働きかけますが、一花の決心は固く、突き崩すことはできませんでした。
なお、風太郎は、一花が学校を辞め、そのため家庭教師も不要となることについて、マルオから聞く事となります。
93話の感想記事では、91話における一花の電話先について、あれこれ想像を膨らませていましたが、記事に対して頂いたコメントにて
一花の電話の相手ですが、私は今提示されている事実からは、マルオだと思います。今回の話で二乃とマルオが病院で会話した際、マルオは「ようやくうちに帰ってくれたみたいだね」と伝聞調の言葉を発し、その後「一花君から連絡もらっているよ」と二乃に言いました。
とのご指摘を頂きました。この93話の描写から考えれば、一花の電話先は確かにマルオで決まりですね……私は完全に見落としていました。
よって、一花からマルオへの電話連絡(休学の意志と風太郎の家庭教師が不要になったという話)がまずあり、そこから風太郎へも連絡がいったという流れだったと思われます。
91話の一花のガチガチに硬い口調は、マルオ向けのものだったのですね。あまりにも硬すぎやしないかと思いますが、話す内容が内容だけに、いつも以上にフォーマルな口調になったというのもあるのだと思います。
そして、ラストシーンでは一花と四葉が話す様子が描かれていました。スクランブルエッグ編でのサシの会話、そして京都の修学旅行先での騒動を経て、今回二人が話す内容とは一体何なのか?
次話(95話)はコミックス11巻におけるラストエピソードです。最近の各コミックスにおける最終話は必ず何かしらインパクトのある出来事が起きています。その点を踏まえると、一花と四葉が交わす会話の内容はとても気になるところです。
以下、今回特に気になった点を考察します。
考察
後押しする五月と賛同できない二乃
お墓参りの場面から。一花が女優業という夢を見つけた事について、良い事だと語る五月でしたが、その口調はどこか上っ面で、借り物のような印象を受けます。
それは 本当にあんた自身の言葉かしら
そんな五月の言葉について、上の言葉で鋭く追及する二乃。これは、五月が、母・零奈だったらどう振る舞うかを想像し、その想像に従って言葉を選んでいる様子を非難しているということでしょう。
二乃はかつて、試験前に喧嘩して家出する前の場面でも、五月が母・零奈の振る舞いを真似ている点について糾弾していました。
二乃は、五月が母・零奈に固執する事について、あまり好意的ではないようですね。あるいは、母に固執するあまり、自身の素直な意見を言う事を避ける点に怒っているのかもしれませんが。
二乃は一花(というか五姉妹全員)と共に高校を卒業したい気持ちがあります。そのため、一花の選択に賛同できないと考えていますし、その気持ちをストレートに一花に伝えています。
しかし、それでも一花は学校に何らかの届け出を出しています。結局のところ、二乃の訴えが一花の行動を変えるには至らなかったということになります……。
一花が学校を辞める理由
三玖との会話の場面で、一花自身の口から、何故学校を辞めようと考えたのかが明確に語られました。
三玖は三玖なりに、一花の心理を想像していました。
修学旅行中、一花には偽三玖による暗躍などを通じて、ある種「利用された」立場の三玖ですが、そのことを糾弾するのではなく、それが一花を追い詰めているのだとしたら辛い、という気持ちで声を掛けているのでしょう。優しいですね。
それに対して一花は
フータロー君と一緒にいると、自分が許せなくなる。
と語りました。やはり高校を辞めることについては、女優業に専念したいという思いよりも先に、まず風太郎との関係性が影響していることがこの発言から明確になります。
しかし、その一方で
一緒に卒業したいよ
という本音めいた言葉も漏らします。その言葉を見逃さずに反応する三玖でしたが……。
最終的には一花に誤魔化されてしまいます。
一花の発言は、単純に言葉通りには受け取れないですね。おそらくは、本作で何度となく登場する「『嘘』という嘘」の類でしょう。本心では無いはずです。
茶化すリアクションの裏に真意があるとするなら、やはり本当は一花だって皆と卒業したい筈なのです。
風太郎に託す四葉
四葉はお墓参りの場面では、一緒に卒業できないのは寂しいが、一花の夢だから応援すると言っていました。
一方で、四葉は風太郎に対しては、
一花をお願いします
と声を掛けています。
これは四葉も、一花が女優業に専念したいから高校を休学するのではなく、実際は風太郎への想いが何らか影響しているのだと察していることの証左でしょう。
本当に女優になりたいがためだけの休学だと四葉が思っているのだとしたら、四葉が風太郎に「お願いします」と声を掛けるのは多少違和感があります。
ところで少し気になったのは、何故四葉はタオルで巻いただけの姿で出てきたのか?
正直、その心理は読み取れませんが、読み手への情報提示という点では、四葉の日焼けがプール回から依然として残っていることを強調したい考えがあるのかもしれません。
もしそうだとすると、風太郎と四葉の日焼けは今後、何らかの形で物語本筋に関与してくる可能性がありますね。
最適解を模索する風太郎
風太郎は先生から話を聞き、規定の出席日数と一定の成績があれば卒業可能という言質を取ってきました。
一花や他の姉妹は「学校を辞める」と表現している中で、風太郎だけが一花の件について「休学」という言葉を使っているのですね。学校にしばらく行かなかったとしても、条件を満たせば辞めずに卒業できるという道を残したのです。
風太郎が一花を応援するのか、それとも卒業を目指すために引き留めるのか、その判断がどうなるかが楽しみでしたが、「女優になるために休学は認めつつも高校を卒業できる道を模索する」という、有能さ溢れる柔軟な選択をしていました。さすがですね。
しかし、風太郎の折角の申し出にも関わらず、一花はそれを拒絶します。
この後のページでは「これでいいよね」と、納得というか、自分の考えていた通りに振る舞えた様子の一花が描写されています。
この様子からは、風太郎がどう申し出たとしても、拒絶するつもりだったのだろうと読み取れます。
なお、最後に味気ない話をしてしまいますが、こうした「卒業に至るルート」が作中で提示された以上、一花は今後、どういう過程を辿るかという問題はあるものの、最終的には卒業できる展開になると考えてよさそうです。
風太郎の金策と新たなバイト先
ところで、風太郎は一花を卒業させたいという気持ちがある一方で、金策に拘るような様子もありました。
最近あまり風太郎がお金に拘る描写が無かったので少し気になったのですが、個人的には、風太郎の金策に深い理由は無いと考えます。単純に生活費が不足してしまうため、お金を稼がなくてはいけないという話なのかなと。
それでは風太郎がお金を欲しがっている描写を94話にわざわざ入れた理由は何かというと、おそらくはその後の三玖によるバイトの斡旋という展開へと繋げたい都合があったからではないかと考えられます。
三玖が薦めるバイト先は、もちろん「こむぎや」(三玖のバイト先のパン屋さん)でしょう。三玖からすれば、風太郎がバイトに来てくれたら、相当嬉しいでしょうね。
一方、二乃は少し可哀相ですが……とはいえ、ケーキ屋店長もやがては退院するでしょうから、ちょっとの我慢ですかね。
「こむぎや」で働くとなると、91話で描かれた上のカット(ケーキ屋店長とパン屋さんが一緒にいる)の理由が語られる可能性も出てきますね。
事故の際に知り合ったのか? 実は恋人なのか? あるいは既に既婚? または既婚だったが今は離婚済み? 想像は色々膨らみます。
また、風太郎が「こむぎや」で働くとなった場合に関係しうるのが、上杉家の亡き母の思い出です。
修学旅行時、風太郎は映画村で三玖に、毎日パンを焼いてくれたという母の思い出を話していました。
「こむぎや」で風太郎と三玖が働く中で、かつての上杉家の様子が語られる場面も描かれるかもしれませんね。
一花と四葉の話の内容とは
今回の話で誰もが唸ったと思われるのが、ラストにおける一花と四葉の会話シーンでしょう。
一体、どのように会話が展開されるのか? これまでの出来事や二人の心理から、今後の展開を考えてみました。
呼び出したのはどちらか?
一花から四葉に問いかけている事からして、一花が四葉を呼び出した形だと思います。
この場面の一花の「あとは……」という台詞からも、一花が四葉に働き掛けた可能性が高いですね。四葉に対する何らかの用事を済ませようとする一花の意思が、この台詞から読み取れます。
なお、会っている場所は四葉のお気に入りのブランコがある公園ですが、声を掛けられた四葉が場所を指定したのだと考えられます。
一花は何を話そうとしている?
まず一花は、過去の京都の記憶が四葉にあるかを確認しようとしています。
上は修学旅行編に入る前の場面ですが、ここでも一花は四葉の記憶の有無を探っているふしがありました。
この時の一花の思惑は、五月が落とした写真から着想を得て、京都で風太郎に自身こそが「写真の子」だと主張しようというものだったと考えられます。
しかし、もしも四葉にはっきりとした記憶があれば、その計画は頓挫する可能性があります。たとえば、四葉が昔、風太郎と会った記憶があり、その事をさらっと風太郎本人に語った場合、じゃあ一花の話は何だったんだ? と矛盾してしまいますね。
こうした事態となる事を避けるためにも、一花は四葉に過去の記憶があるかどうかを確認したかったものと推測できます。
かつて、風太郎が「自分と会ったことがある人」について尋ねた際に四葉はノーリアクションでした。読者は、四葉が意図的に潜伏したことを知っていますが、一花は当然それを知りません。よって、本当に当時の事を忘れているのかもと考えたのですね。
では、94話で同じく四葉の記憶を探る意図は何か。
一花の思惑は修学旅行時から変化していると考えるのが自然です。つまり、もう「写真の子」になりすまそうなどという邪な考えは持っていない筈です。
ここで四葉の記憶を一花が確認している理由は、四葉が本当に「写真の子」であることを忘れている場合に思い出させてあげるためだと考えられます。
修学旅行時、風太郎は「写真の子」と過ごした時間がかけがえの無いものであったと一花に語りました。
それを知った一花は、本当の「写真の子」である四葉に対し、風太郎が何らかの思いを抱いている事を教えてあげようと思ったのではないでしょうか。
一花は零奈騒動については全く絡んでいないため、実は四葉が「写真の子」である記憶があること、またそれを隠したいと思っていることまでは知らないのですね。そのため、一花は四葉に事実を教えなければならないと考えている可能性があるわけです。
四葉はどう返す?
ここから、想像を膨らませていきます。
一花から、自身(四葉)が「写真の子」である筈だと伝えられ、風太郎がかつて四葉と過ごした時間を大事な思い出だと認識している事を伝えられた場合、四葉はどう行動するか?
四葉からすれば、自分が「写真の子」である事、また風太郎が「写真の子」との思い出を大事にしている事は、一花に言われるまでもなく知っていることです。
しかし、「うん、知ってるよ」と四葉が一花に返すというやり取りをするだけで話が終わるとはさすがに思えません。
目下の四葉の悩みは、何といっても一花の休学です。何としても五姉妹全員で卒業したい。それが「姉妹全員の幸せ」を考える四葉の願いのはず。
一花が休学する真の原因は、風太郎への未練を断ち切ろうという気持ちにあります。一花の休学と風太郎への一花の恋心は表裏一体の関係なのです。
そして、そのことを四葉は察しています。風太郎に「一花をお願いします」と声を掛けたことから、そこは推測できます。
ここまで書けばもうお判りでしょうが、四葉は一花に対して、「一花こそが本当の写真の子だったとして振る舞えば良い」と提案するのではないでしょうか?
そうすれば、風太郎と一花が仲良くなる未来が想像でき、それによって休学を阻止できる可能性が出てきます。また、更には自身(四葉)が「写真の子」であることが風太郎にバレる可能性も無くなります。
四葉からすれば、これは一石二鳥の提案といえます。おそらく、一花との会話の中で、四葉はそう提案する流れになるのでしょう。
更に一花はどう動く?
では、四葉から「一花が写真の子になってしまえばよい」と提案をされた一花はどう対応するでしょうか。
物語的には、経緯はどうあれ、まず一花はこの提案を受け入れる様子が描かれるものと思われます。そうする事で、シスターズウォー編の序盤同様、一花が風太郎への恋心から、利己的な行動に走った可能性を読者に示唆できるためです。
しかし、矛盾しているように聞こえるかもしれませんが、この提案を一花が本気で受け入れるとは考えにくいです。一花の心理を考えれば、そうしたラフプレーのような手段で周囲を出し抜くという行為はもう二度とやろうと考えないでしょう。
また、本作品の過去の読者の反応を考えても、再び一花を暗黒面に堕とすような展開をやるとは考えにくいです。
つまり、一花が公園で四葉から出された提案を受け入れるのは、あくまで受け入れるフリか、またはその場では受け入れてしまうものの後でやはり心変わりするか、このいずれかになると考えられます。
95話のラストは?
四葉からの提案を一時的に受け入れた一花は、おそらく風太郎と会おうとするでしょう。
風太郎はお守り理論で一度は一花を嘘つき呼ばわりしましたが、一方で、一花が京都の記憶を持っていた事も、まぎれもない事実です。この事から、一花が本当に「写真の子」だった可能性を再検討しているかもしれません。
本人の四葉からも後押しされ、また風太郎も考えが揺らいでいる。更に言うと、一花は五月経由で手にした思い出の写真という、ある種の物証まで手にしている状況です(風太郎は、明確には分かりませんが、五月演じる"零奈"がそのまま写真の子であると考えているようにも見てとれます。となると、"零奈"が回収した写真の持ち主を、そのまま写真の子本人だと誤って解釈する可能性があります)。
そんな、一花が強硬に自分が「写真の子」だと偽りさえすれば、その主張が風太郎に通りうる状況がお膳立てされるのではないかと私は考えます。
そしてその上で、それでも一花は風太郎に対して自分が「写真の子」であるという詐称をしないという場面が描かれるのではないかと思います。
それならば、一花は何故風太郎に会おうとするのか?
一花は、自身の口から、四葉こそが「写真の子」であると風太郎に明かすのではないでしょうか? そして、95話はそのシーンで終わり、以下次号という展開になるものと予想しています。
壊れそうなブランコ?
ブランコの件について少し気になったのが、一花が主張した異音(?)です。
単に子供用ブランコに乗っているから音が鳴るというだけかもしれませんが、ひょっとしたら今後ブランコが壊れるのかもしれません。
ブランコが壊れるとしたら、描写から見て、鎖の部分が崩壊するのでしょう。この四葉が乗るブランコの鎖は、度々登場する母・零奈の教えという枷とイメージが重なります。
この事から、ブランコ(鎖)の崩壊は、枷からの解放と共に訪れる可能性があります。
まとめ
普段の感想・考察では、できるだけ色んな情報から複数の可能性を考えつつ、外堀を埋めるように考えを詰めていく感じなのですが、今回の記事は比較的、直観的な読みになりました。
語弊があるかもしれませんが、勘が冴えているときの麻雀の一点読みのような感じです。果たして勘は本当に冴えているのか、それとも、単なる強い思い込みなのか(笑)
次回、コミックス11巻の最終話にあたる95話の展開がどうなるのか、非常に楽しみです。次の話の配信が待ち遠しいのは毎週のことですが、今週は特に先が気になって仕方ありません。
以上、『五等分の花嫁』94話「分枝の時①」の感想・考察でした。
§ 本記事で掲載している画像は(C)春場ねぎ・講談社/『五等分の花嫁』より引用しています。