過去に挙げた『五等分の花嫁』における大きな謎8点について明らかになった部分と未だ不明な部分を整理する。また、いわゆる「鐘キス」の相手及び花嫁が誰なのかについて、現状の情報から可能性を考察する。
こんにちは、あるこじ(@arukoji_tb)です。
過去、別記事にて漫画『五等分の花嫁』における大きな謎8点の整理と、それに対する自身の考えを挙げた事がありました。
本記事は現時点で判明している一部の謎の解と、現時点でも残っている謎とを整理しつつ、大きな謎として未だ残っている「鐘キス」の相手が誰なのかについて、できる限り五姉妹全員に対してフラットに整理してみた内容となります。
記事の内容の性質上、展開やオチなどに多々言及することになるため、ネタバレ多数になります。ご注意下さい(現時点での最新話である97話までにおけるネタバレを含みます)
なお、以下の記事が『五等分の花嫁』における大きな謎8点について整理した記事、およびそれに対する当時(83話:修学旅行編で三日目の行動選択を行う回まで読んだ時点)の考察を述べたものとなります。
今読み直してみると、大分ピント外れの考えを展開している部分もありますが(笑)、それも含めて楽しんで頂ければ幸いです。
大きな謎8点の再整理
①花嫁は誰なのか
当然ながら、依然として謎のままです。
こちらは「鐘キス」の検討と共に本記事の後半で言及します。
②写真の子は誰なのか
これは86話において、四葉が写真の子であるということが明言されました。
ちなみに過去の考察では、私は一花と想像していました。この点については「一花は過去に風太郎と会った記憶がある」「一花が本当のことを語っている」という点までは当たっていたようでしたが、トランプで遊んでいる瞬間だけ入れ替わっていたことを(その可能性までは検討したものの)見抜けなかったですね。
③零奈は誰なのか
これも86話で確定しました。考察当時は検討のポイントを3項に分けていたので、一応それぞれ記述します。
零奈は誰なのか
やはり五月でした。公園に現れた零奈とショッピングモールに現れた零奈も共に五月と考えてよいでしょう。
零奈は写真の子なのか
写真の子は四葉なので違います。
こちらについての予想(零奈は写真の子ではないという予想)は結果的に当たっていましたが、私は前述の通り写真の子は一花だと思っていたので、その意味では外れていました。
零奈が現れたのは何故か?
これは五月が四葉に依頼されたからという事が90話で明確になっています。
私は、五月が独断で行動していたためとずっと考えていたのですが、その考えは大きく外れていました。
④茂みにいたのは誰なのか
これも90話で明らかになりましたね。四葉でした。
私はマルオが隠れていたのでは? という案を上の記事で書いていましたが、残念ながらこれも外れでした。
なお、四葉(というか五姉妹の誰か)である可能性については、上杉家の立地を知らない彼女らは、この公園には辿り着けないという前提から私は消し込んでいたのですが、この点は特に言及されませんでした。
ここは単純に、荷物を持ってきてもらう事になった五月が四葉にその場所を伝えたのだと今では解釈しています。
なおこの場合、五月が四葉に伝える場所は上杉家になるかと思います。それなら何故四葉が公園に辿り着けたのかという疑問が残りますが、この点に関しては上杉家に着いた四葉が、上杉家から外に出て公園に向かう二人を見かけ、その後を尾ける形で辿り着いたのだと解釈すれば矛盾は生じません。
⑤キスをしたのは誰なのか
こちらも花嫁同様、現時点では謎のままです。
本記事の後半で検討します。
⑥花嫁衣装は何故多数あるのか
これもまだ、結婚式の場面が描かれていないので分かりません。
私の予想は大方の皆さんが予想している通り、披露宴内で全員がウェディングドレスを着て、誰が花嫁かを風太郎が当てるという「五つ子ゲーム」を行うのではないかと思っています。
その根拠の詳細は、冒頭で挙げた記事をご覧頂ければと思いますが、別記事を参照する手間を省くために、こちらでもその根拠とした2点を簡潔に書き記しておきます。
- 四姉妹が挙式に出ていない(控室?にいる)事から、その恰好が挙式に参加できるものではない、つまり通常の礼服ではない姿である=ウェディングドレス姿でいるためではないかと考えられる。
- 風太郎が指輪の交換を後回しにしたが、その理由が、指輪を嵌めることで花嫁が個人識別できてしまうようになるのを避けるためだとすると、この後で「五つ子ゲーム」を行う予定だからではないか(そして、風太郎もそれを把握している)と考えられる。
⑦五月は何を隠しているのか
③の話の裏返しになりますが、自分が零奈であることを隠していました。
更に、過去記事において追加で2点考察した点にも以下、言及します。
お守りに込められたメッセージは?
ここはまだ明確になっていませんね。しかし、五月が零奈の正体であることが明らかになった際に、メッセージの内容までは明かされなかったという点は非常に意味深長です。何らかの秘密がまだそこには隠されているという事なのでしょうか?
自分なりにこの点から、五月がどんなメッセージを書いていたのかについて、改めて想像を膨らませてみました。
今後、お守りに書かれたメッセージが明らかになるとしたら、おそらくは五月自身に何らかの大きな変化・変革が訪れる局面において、回想的なシーンとして挿入される事になると考えられます。
そして、もしそうだとすると、その場面における五月の変化と、その場面で明らかにされるメッセージの内容には何らかの対応関係があると想定されます。
今後、五月にもたらされる変化として考えられるのは「お母さんの代わり」として生きることからの解放でしょう。
過去に自分が決めた覚悟や約束に対してずっと囚われてしまうことで「自分の人生」をある種歩めていないのが現在の五月の姿です。
おそらくは今後、風太郎の手によって、五月はそうしなければならないというのが自身の思い込みから来るものであり、鬼籍に登った母・零奈もそんなことは望んでいないという事を気づかされるのではないかと考えられます。
だとすると、お守りに書かれたメッセージもまた「過去に囚われずに自分の人生を生きろ」という趣旨なのではないかと想像できます。
では、そのメッセージが、はたして風太郎自身には当てはまるのかどうか。
風太郎もまた過去に「写真の子」と交わした約束に囚われている点ではある種共通していると言えなくもありません。
ただ、風太郎はそれを後ろ向きに捉えることはせず、むしろ前向きに解釈することでこれまで努力できてきたのでしょうから、彼自身はそれをマイナスとは考えていないでしょう。
しかし、公園で「写真の子」と出会ってから、その思い出を背負って生きてきたと語る風太郎の姿に対して、五月は自身と同じく「過去に囚われている」イメージを無意識の内に重ねたのかもしれません。
だとしたら、過去からの解放を意図したメッセージを与える可能性はあるのかなと思いました。
五月は自身が零奈である事を風太郎に伝える気はあるのか?
これは明確ではありませんが、修学旅行中の行動や、また修学旅行後に四葉に対して語った言葉からは、その意図はあったのだと考えられます。
ただ、ここは正確に言うと、自分が零奈の正体であると伝えたいというよりは、過去に会っていた写真の子は四葉なのだと伝えたいというのが正確なところのようでした。
⑧四葉は何を考えているのか
この点もかなり明確になりました。
過去の風太郎と会った記憶があり、彼との約束を大切にしており、彼への好意を持っているが、過去(黒薔薇女子の在籍時)に他の姉妹に迷惑をかけてしまった事を遠因として、好意を伝えようとする気持ちを抑え込んでいるというのが真相でした。
但し、一花から発破をかけられたことによって、96話を読む限りでは自身の気持ちに蓋をするのかどうかについて心が揺らいでいるように見てとれました。今後の展開は見逃せません。
鐘キスの相手および花嫁について
この項では未だ明らかになっていない、誰が風太郎と鐘の音の鳴る中でキスををしたのかと、それに関連して花嫁が誰であるかについて、検討してみました。
過去にも同様の検討をしたことがあったのですが、当時から大分検討する上での情報が増えたこともあり、この機会に改めて考えてみました。97話まで読み終えた時点の情報で以下、自分なりの考察を記載します。
ちなみに先に書いておきますが、誰が「鐘キス」の相手だったかの結論は本記事では出ていません。
この項目の考察内容は、五姉妹の各自が「鐘キス」の相手だったとして、その妥当性や、またそう考える上での障害が何か、そして更に今後花嫁となる可能性についてを占うというのがその趣旨となります。
なお、このキスの場面について、その相手は風太郎に別の用事があったが、事故によって口付けをするに至ったという意見も見受けられます。
しかし、ここでは五姉妹の誰かにおいて風太郎とキスをする意図・動機があり、二人はキスをするに至ったという前提で考察しています。
最終的に風太郎が体勢を崩す・足を滑らせるなどによってキスが成立したという部分はその通りですが、五姉妹の誰かが近づいたのはキスとは無関係な用事によるものという可能性は、今回は考慮していません。
一花
キスをする動機はある
一花ですが、旅行中に風太郎に対して五月の姿でキスをしようとする場面がありました。その後、四葉との会話等々ありましたが、この気持ちを維持し続けたとすれば、彼女がキスをしようと考えた可能性は十分にあります。
黙ったままである事に説明がつく
キスをしようとした場面で一花は
私が誰だかわからないんだ
それなら、こんな面倒なこと考えなくてもいいか
と胸中で独白しています。ここから考えれば、キスをした後にその正体を明かさないままであることについて、納得はできます。
一花は足を怪我していた?
一花は旅行中に足を痛めていました。この事から、彼女は風太郎にスムーズに近寄れなかった、あるいは、その場から駆け足で立ち去れなかったかもしれません。ここは彼女が鐘キスの相手だったと考える場合に気にかかる部分ではあります。
しかし、彼女の怪我の程度や、また最終日にどこまで復調していたのかは正直よく分かりません。既に復調していたと考えれば、彼女が「鐘キス」の相手であるとしてもおかしくはないでしょう。
足の怪我の程度を理解し得ない以上、この件を持って彼女がキスの相手ではないと決め付けるのは避けた方が無難と考えます。
花嫁の可能性:一花は「最初に死んだ者が最初に甦える」を体現する存在
修学旅行において、風太郎は一花が嘘を吐いていたと判断しました。確かにそれはある意味で当たっていたのですが、一方で本当の事(つまり、風太郎と一花は一緒に会っていた:トランプで遊んでいた)も一花は話していました。
しかし、一花は
全部 嘘だよ
と風太郎に告げることで、自分の気持ちに折り合いを付けました。
これは自身から風太郎を巡る恋愛レースから降りたようにもみえる振る舞いですが、一方で、物語的にはこの点がこのまま放置されるとは考えにくいです。今後の話の転び方によって、風太郎がどのような考えを持つかは未知数です。
また、今後、花嫁として風太郎が誰を選ぶのか、その過程を描く際に、仮に一人ずつ可能性が消えていくという展開が描かれたとします。
もしそうだとすると、一花は既にその対象から降りているように見えるため、「風太郎が選ばない」という場面が割愛されているように見せかけて、実は風太郎が選んだのは一花だったというトリッキーな描き方をしうる対象でもあります。
偽三玖として暗躍したり、嘘を吐いたりという点で悪目立ちした感は否めませんが、ある意味では一番なりふり構わず風太郎を手に入れようとした人物であり、またどうしようもなく人間味に溢れたキャラクターが一花ともいえます。
「最初に死んだ者が最初に甦る」というのは、とあるボートレース漫画で語られていた格言ですが、まさにこの言葉の展開通り、一花が花嫁として選ばれるという可能性も決してゼロではないでしょう。
二乃
キスをする動機はある
二乃ですが、旅行中に一花と話す中で盛り上がり、キスをしようと考え付きます。上で書いている一花が風太郎にキスをしようと思い付くのも、元はといえばこの二乃との会話がきっかけでした。
彼女がキスをしようと考えた可能性は十分にあります。
五月の姿でキスをする動機は無い?
一方で、二乃は一度はキスをしようと考えるものの
五月の姿じゃ効果が見込めないかも
として動くのを止めました。とすると、この旅行中に二乃が五月の姿でキスをすると考えるのは、心理的に矛盾しているともとれます。
鐘の伝説を意識した可能性がある
旅行先の随一の観光スポット「誓いの鐘」。この鐘の伝説を意識した二乃が、その場でのキスに拘ったという可能性はありえます。
当たり前ですが、旅行から戻ったら鐘の祝福は得られません。本来なら自身の姿でキスをしたかったが、止むを得ず五月に変装したそのままの姿でキスをしたという可能性はあります。
林間学校では、キンタローを相手にキャンプファイヤー時のフォークダンスの伝説の事を語っていた二乃ですから、島の鐘に対しても同じく、何らかの意味を見出したとしてもおかしな話ではないと考えます。
なお、二乃はフォークダンスに対して「大げさで子供じみている」「下らない」とも発言していますが、これらはいずれも共に踊る相手が見つかる前、また"キンタロー"に振られた後の発言であるため、文字通りには受け取れず、むしろ「酸っぱい葡萄」的な意味合いが込められた発言であると私は解釈しています。
黙ったままである事に説明がつかない
しかし、だとすると、何故二乃は「自分が二乃である」と風太郎に伝えなかったのか?
二乃がキスをしたと考える場合、最もネックになるのはここです。鐘キスの相手=二乃という説を貫く場合は、ここの心理についてどう説明を付けるかがポイントになります。
花嫁の可能性:二乃は最初に風太郎に告白する事で彼に「恋愛」を意識させたキャラクター
二乃の本作におけるヒロインとしての特徴は、何より最初に風太郎に直接告白したという点にあります。
また、その後も風太郎に対して終始アプローチを続け、風太郎を何度も赤面させています。
風太郎が五姉妹に対して愛情を持っているのは現在では疑いようがありませんが、男女の恋愛関係を意識するきっかけを作り、またそれを度々思い起こさせているのが二乃である点は見過ごせません。
ラブコメでは多くの場合、「最初に動いた者は負ける」という法則めいたものがあります。これは結局、物語の意外性として、より後から惹かれ合う存在になったほうが展開的に面白いからです。
しかし、『五等分の花嫁』ではラブコメの常識を覆す展開が見受けられます。そこから、最初に動いた二乃が最終的に結ばれる相手となるという結末も、十分にありえると考えます。
三玖
キスをする動機はある
三玖がキスをするかどうかについて、直接的な描写はありませんが、風太郎への好意をずっと抱いているのは説明するまでもありません。
この前の場面で、風太郎から「見分けてもらった」ことに嬉しさを覚えた三玖がキスをする気持ちになるのは十分にありえる話でしょう。
三玖は奥手のようである一方、その場の雰囲気によって衝動的に動く事もあるようです。菊とおままごとをする中で風太郎に告白しようとしたエピソードは、象徴的です。
黙ったままである事に説明がつく
三玖はキスをする前に、風太郎から正体を見破られたばかりでした。そのため、五月の姿のままであっても、風太郎には自分が三玖であると分かってもらえると考えていた可能性はあると思います。
もっとも、それはキスをした直後、またせいぜい旅行先から戻るまでの事であって、さすがに旅行から帰った後は風太郎がキスの相手が自分であると分かっていないことに気付いたことでしょう。
しかし、旅行先から戻って、普通のテンションになった状態では「あの時のキスの相手は自分だった」と風太郎に伝えることができず、そのままうやむやにしている状態なのかもしれません。
花嫁の可能性:三玖は過去の話から最も縁遠いが故の立ち位置を持つヒロイン
三玖が風太郎との関係において特徴的なのは、「写真の子」絡みの場面にほとんど関与してこなかった点です。ここは、かつてトランプで遊んだ記憶のある一花や長い時間を共に過ごして誓いまで交わしている四葉、また風太郎に"零奈"の姿で接触した五月らとは対照的です。
しかし、過去の風太郎との絡みが全くないのは、風太郎が三玖を花嫁として選ぶ可能性を逆に高めているとも考えられます。
おそらく、物語の中で風太郎が花嫁を選ぶとして「過去に出会い、共に誓いを交わした相手だから」という理由だけで四葉と結ばれるとしたら、その流れについて納得しない読者は多くいるものと考えられます。
もし風太郎が四葉と結ばれるとしても、そこは単に過去に会っていたからではなく、あくまで過去はきっかけに過ぎず、今の四葉を好きに思うからこそ彼女と結ばれるという展開になると考えられます。
そして、過去から繋がりのある四葉に対し、過去には一切の接点が無かったのが三玖です。ここから三玖はある意味で、四葉と対をなす存在とみることもできます。
もし風太郎が過去ではなく未来を重視するという考えを示した場合に、物語の構造的に、未来のイメージに該当する三玖が選ばれるという展開は十分にあるといえます。
思えば、その名前が「みく」という「未来」から想像される韻を踏んでいる点は何とも暗示的に感じられます。
四葉
キスをする動機はある
四葉は旅行以前から風太郎のことを想っていたと明言されているため、彼への好意という点では疑いようがありません。
そして、五月の姿でキスをする事に最も納得のいく説明がつくのは彼女です。
その理由とは言うまでもなく、他の姉妹への遠慮から風太郎への好意を封印したが、その想いが抑えきれなかったために、自分が相手だと分からない唯一無二のシチュエーションでキスをしたという考え方ですね。
何故他人の姿にも関わらずキスをしたのか。この当たり前すぎる疑問に、すんなりと説明がつく点は大きいです。
黙ったままである事に説明がつく
五月の姿でキスをしたが黙っている事についても、四葉の場合は簡単に説明がつきます。それはもちろん、彼女は風太郎への好意を封印しているためです。
らいはが呼びに来たから四葉?
他に四葉がキスをした相手である事の根拠として、二人を呼びに来たのがらいはだった、という点がよく挙げられます。
これは、上の「おーい」という画像の袖と
この直前の場面のらいはの服の袖の長さから、そう取れるようです("五月"の服は七分袖なので手首までは覆われていない)。
この点、確かに二人を呼びに来たのは、上杉らいはであることに疑いはなさそうです。
そしてこの事から、普段から四葉に懐いているらいはが呼びに来たという事は、その相手は四葉なのではないかという風に論が展開される事があります。
しかし、この点については私は懐疑的です。
確かに一見その理屈は当てはまるような気もしますが、別にらいはは四葉が相手でなくても呼びに来そうな気がします。
また、らいはが四葉に懐いているのは確かだと思いますが、だからこそ、旅行の帰りの場面も四葉がらいはと共に行動をしており、それ故に鐘キスの場面には来られないという見方も可能ではないでしょうか?
少し話が発散気味なので強引にまとめてしまうと、らいはが迎えに来たのは間違いなさそうですが、それをもって四葉が鐘キスの相手である、またはそうでないという事の論拠にはしづらいというのがここでの主張となります。
花嫁の可能性:四葉が重ねた時間と伏線の重厚さは誰にも覆せない
四葉は何といっても「写真の子」その人です。現在の風太郎が根幹を成すに至るきっかけを作った存在であり、また風太郎のことを想ってきた時間は誰にも負けません。
また、ねぎ先生は「花嫁は誰か最初から決まっている」とインタビューで答えていたとの話がありますが、だとすると、ここまで綺麗に設定され、物語に配置された彼女が花嫁であると多くの人が考えるのは妥当といえます。
ついでにいえば、77話の全国模試後における風太郎のブランコからの跳躍の場面。
これは37話における勤労感謝ツアー編の四葉の跳躍の飛距離を気にしたものとしか考えられず、今後何処かの場面で必ず披露されるのは間違いないでしょう。
このように未来に対する伏線までが明白に張られている事などから、四葉が花嫁である可能性はとても高いといえますが、一方で気になる部分が無いでもありません。
それは彼女が「写真の子」と明らかになるタイミングの早さです。
私は物語の途中まで「写真の子」が明らかになるのは、花嫁が誰かが判明する直前だと考えていました。そして、その正体が明らかになり、そのまま花嫁であると結論付けられると思っていました。
しかし、実際にはそんな事はなく、四葉が写真の子だという事が判明してからも、まだ花嫁が誰か分かるまでにはかなり時間(話数)が掛かりそうです。
だとすると、何故こんなに早く四葉が写真の子であると明かしたのか? という点はやはり疑問に感じます。
但し、これは少し前の項でも書きましたが、もし風太郎が四葉と結ばれるなら、その際に「写真の子だったから」という描かれ方だけはしないと考えられます。
とすると、風太郎が四葉を「写真の子だから選んだ」のではないことに説得力を持たせるため、すなわち、二人が惹かれ合う過程を丁寧に描きたかったために「写真の子」である点を早めに確定させたとも考えられます。
やはり、重厚に張られた伏線は、四葉が最終的に花嫁として結ばれる可能性の高さを感じさせるものとなっています。
五月
五月の姿である点は最も納得がいく
まず、他の四姉妹に無い特徴として、五月がキスをしているとしたら変装も何もしていない姿だというのは、当たり前ですが重要なポイントです。
何故、他人の姿でキスをしたのかという疑問が生まれない唯一の人物が五月です。
黙ったままである事に説明がつく
五月がキスをしたとして黙っている理由は何でしょうか。
これには、他の姉妹の恋愛関係に波風を立てないためという狙いが考えられます。
五月はこの時点で少なくとも三玖の好意を知っています(旅行中に発覚)し、また振り返ってみれば四葉が持つ好意についても想像が付いている(零奈に成りすます依頼を受けた事からの発想)と考えられます。
だとすると、自分がキスをした張本人であると風太郎に伝え、それが回り回って他の姉妹の耳に入ることは避けたかったはず。そのため、彼女は沈黙を貫いたとすれば、妥当性はあります。
キスをする動機が無い(あるいは読者には現時点で見えない)
何故、彼女は恋愛感情をこの時点で抱いていない(と思われる)のに風太郎にキスをしたのか。
単純故に最も難解な謎です。五月キス説を唱える場合、絶対に説明を付けるべきポイントです。
この点について具体的な案は思いつかないのですが、もし実際に五月がキスをしたのだとしたら、この2案のどちらかになるでしょう。
- 実は恋愛感情の無いキスだった(例えば、お礼のキス)
- やはり恋愛感情からのキスだった
前者、つまりお礼のキスについては、51話(お正月を中野家の仮宿で過ごす話)で五月も発想していました。この描写が実は一種の伏線だったという可能性はあります。
しかし、実際は好きでないのにキスをしたが、後から好きになった……という展開はいまいち盛り上がりに欠ける話です。少なくとも、私の中では(笑)
なので、もし五月がキスをしたのなら、やはりこの時点で既に風太郎に対する恋愛感情を実は抱いていたという展開になるのではないでしょうか。
場面場面で、五月が風太郎に恋愛感情を抱いていないようにみえるのは確かですが、一方で彼女が風太郎のことを信頼しているのも明らかです。
ひょっとしたら、上手く解釈をつければ、五月が風太郎をどう見ているかについての判断が反転する事もあるのかもしれません。
一例として、五月は二乃と三玖が風太郎が好きな事を「どうかしている」とよく表現します。ここからは、風太郎は恋愛感情を持つ相手になり得ないという意志を読み取れますが、「実は私も(どうかしている)」という一言を彼女の独白に添えれば、それだけで彼女もまた風太郎に恋愛感情を抱いているのだと感情の転換が行えます。
花嫁の可能性:五月は唯一、恋愛感情が明言されてない点で王道と意外性が共存している
五月の恋愛感情の有無については上で書きましたが、いずれにせよ現時点でそれが明言されていないのは事実です。「最後に恋愛の意志を明確にした者が持つ影響力が強い」というラブコメの王道からすると、五月の言動・振る舞いはまさにヒロインのそれといえます。
かつ、現時点ではそもそも風太郎に告白するかも分からないという未知数なところが、展開として読者の裏をかきたいであろう、ねぎ先生の思惑にもばっちりハマるのですね。
もし仮に五月が風太郎に恋愛感情を抱いていたとして、その心理や行動を詳らかにした際に読者の納得が得られるかどうかは難しそうな部分はあるかもしれませんが、現時点で王道さと意外性の両面を兼ね備えている五月が風太郎と結ばれる展開も十分想定されるといえそうです。
まとめ
過去に整理した8点の大きな謎と、その中でも鐘キスおよび誰が花嫁になるかについて、現時点での考察を書いてみました。
結論としては、誰でも花嫁になりうるという玉虫色な話で恐縮ですが、とりあえず自分の中での素直な気持ちをそのまま書きました。
自分には現時点で誰かが花嫁レースから脱落したとは思えませんし、一方で誰かに花嫁が決まったとも思えません。
むしろ、現時点では花嫁が誰であっても話が十分に成立するという点で、改めてねぎ先生の構成力の素晴らしさを実感しました。
鐘キスについて整理した中では、あくまで自分の解釈ではですが、四葉についてすんなり解釈がハマるのは言うまでもないとして、一花や三玖でもそこまで状況に矛盾は生まれないという結果になったのが意外でした。
一方で、二乃や五月の場合はそれぞれ、論を成立させるために越えなければならない解釈のハードルがあるという結論になりましたが、そうした解釈が必要という事は、すなわち結末に向けての意外性が担保されているという見方もできるので、ラストへの盛り上がりを考えると彼女たちが花嫁であり、またキスをした相手だという可能性も十分過ぎるほどにあると思いました。
いずれにせよ、『五等分の花嫁』という作品は、現時点ではまだその全体像を見通すことはできません。今後も毎週丁寧に、存分に本作を楽しんでいけたらという気持ちを新たにした次第です。
以上、『五等分の花嫁』における大きな謎8点と鐘キスおよび花嫁に関する現時点での考察でした。
§ 本記事で掲載している画像は(C)春場ねぎ・講談社/『五等分の花嫁』より引用しています。