あるこじのよしなしごと

妻・息子2人(2014生:小麦アレ持ち/2019生)と四人で暮らしています。ボードゲーム、読んだ漫画・本、観た映画・テレビ、育児、その他日常等について綴っています。

【公式動画リンク有】『ホラーアクシデンタル』「夜の果てへの旅」「赤と黒」感想

ざっくり言うと

ショートドラマ『ホラーアクシデンタル』の感想。「夜の果てへの旅」「赤と黒」(3〜4話)について。心霊現象ではなく人間の怖さが表現された作品。

こんにちは、あるこじ(@arukoji_tb)です。

オムニバスドラマ『ホラーアクシデンタル』3〜4話の感想です。いずれもYouTubeにてオフィシャルに公開されているため、動画についてリンクを張りつつ、各話の感想を書いていきます。

『ホラーアクシデンタル』とは?

2013年にフジテレビで不定期に放送されたテレビドラマです。各話7分程度のショートドラマで、現在もYouTubeでオフィシャルに公開されており、自由に視聴が可能です。

ジャンルはホラーなのですが、いわゆる幽霊や怪奇現象の類は登場しません。描かれるのは、現実でも起こりうる人間の怖さです。なお、大きな音などによって驚かそうとする演出もありません。びっくり系のホラー動画などが苦手な方でも、純粋にストーリーを楽しめる作品だと思います。

以下、公式動画へのリンクと感想を記載しています。短いドラマですので是非視聴して頂いて、その面白さを共有できればと思います。

3話「夜の果てへの旅」

動画リンク

タイトルの由来

フランスの作家、ルイ=フェルディナン・セリーヌの小説。

夜の果てへの旅〈上〉 (中公文庫)

夜の果てへの旅〈上〉 (中公文庫)

 

感想

話の冒頭、男が女性に暴行を加える相手を止めた際に相手が見せる僅かな笑みは素晴らしい。これでまず話に引き込まれる。

助けた男の周囲に出没するようになる女性。男は、お礼をという女性の話を固辞するが、女性の容姿が違っていたら、話は変わっていただろうか……。ただ、女性の容姿は可愛い・可愛くないというのとも違って、一種異様なのだ。誘いに乗らない男の気持ちはよく分かる。

やがて、自身が暴行するに至る男だったが、それを止めに入った男性の姿を認め、彼は喜ぶ。この後、自分が女から"解放"されることに気付いたためだ。そして視聴者もこの時に、冒頭の男が見せた笑みの意味を明確に理解する。

この手のいわゆる「ミイラ取りがミイラになる」スタイルの話は、ちょくちょく取り扱われるネタの一つだ。有名所は、漫画『ジョジョの奇妙な冒険』第四部における「鉄塔の男」の逸話だろうか。このネタはバラエティ番組「水曜日のダウンタウン」でも取り扱われた。

このテーマにおいて、巻き込まれる被害者に対して感じる悲壮感は、次のターゲットが見つかりやすいか否かで大きく変わる。話で取り上げられる被害者が、その後ほとんど誰にも"代わってもらえない"と予想される状況の場合、話の恐怖感・絶望感は大きく増す。

その点、この話ではおそらく次のターゲットもまた見つかりやすく、同じ流れが人を変えて繰り返されるのだろうと想像できる点で、比較的気が楽な内容といえる。

ところで、女性の狙いは何なのだろうか。多少精神に異常をきたしているのだろうとは思うが、相手を驚かしたい、怖がらせたい、と思ってやっているとは正直思えない。

一つ考えられるのは、暴行を受ける中で、男性が助けに入ってくれる瞬間の幸福感が病みつきになっており、その快感が得たくてこうした行為を繰り返しているという可能性だ。だとしたら、巻き込まれる男性にとっては面倒な事この上ないが、そうした形でしか相手に関心を持ってもらえないと考えている女性の心理は可哀想に感じる。

ただ、サブタイトルとして採用されている「夜の果てへの旅」という言葉からは、彼女は実際に自分という存在を受け入れてくれる男性をずっと探し続けているという可能性も否定できない。夜というのはこの現状で、その果てというのは誰かが受け入れてくれ、このループが断ち切られる瞬間である。もしそうだとしたら、その悲しみは一層強い。

 

あの冒頭の場面で、私だったら助けに入っただろうかと想像する。自分なら直接止めには入らず、警察に連絡するかもしれない。と考えてから思ったが、もし警察によって止めに入られた場合、女性の次のターゲットは誰になるのだろう?

ただ、この場合も直接声を掛けた警察官がターゲットになるだけで、結局ループは終わらないのかもしれない。

4話「赤と黒」

動画リンク

 

タイトルの由来

フランスの作家、スタンダールの小説。

赤と黒〈上〉 (岩波文庫)

赤と黒〈上〉 (岩波文庫)

 

感想

3話が構造的な面白さがある話だとすると、4話は対照的に終盤のオチによる一点突破的な話といえる。

徐々に後方の席に近付いてくる女性。気の所為かと訝しがる男性。これらはすべて、最後のシーンで女性が自身の手で髪を分ける、あの瞬間のカタルシスを高めるために構成されている。

女性の顔が髪と髪の間から見えた瞬間に、男はずっと見られていたという可能性に気付き、視聴者は皆ゾッとする。

サラリーマンと思われる男性のリアクションがまた良い。最初に女性が一つだけ席が後ろに移った時は「はじめからあそこに座っていたっけ?」という気持ち、更に一つ席が動いた時には「最近疲れてるな(だから色々見間違うに違いない)」という気持ちが、それぞれ分かりやすく読み取れる。

3話目に比べて根源的な怖さがそこにはあるのだけれど、その分、細かく分析すると笑えてくる側面もある。

一つは、女が男が見ていないタイミングで、だるまさんがころんだの如く少しずつ近付いていったという事実。上手くタイミングを計っている女のことを想像すると面白い。

もう一つは、女の座り方。後ろ向きでバスに座っているとして、座席に跨るように座ったのだとしたら、足がはみ出してしまい、後ろから見た場合に不自然に感じられたはず。とすると、女は後ろ向きに正座で座っていたと思われる。後ろ向きにちょこんと座っている姿を想像すると、少し可愛らしいような気もする。

ちなみにサブタイトルの「赤と黒」については、女性の服と髪の色を表してもいるのだろうが、前を向いていると思っていたら後ろを向いていた、つまり表裏が逆だった事実と掛かっているものと思われる。トランプやルーレットしかり、赤と黒は対になる存在として取り上げられる。

 

以上、ドラマ『ホラーアクシデンタル』3〜4話の感想でした。