ショートドラマ『ホラーアクシデンタル』の感想。「大いなる遺産」(13話)について。心霊現象ではなく人間の怖さが表現された作品。
こんにちは、あるこじ(@arukoji_tb)です。
オムニバスドラマ『ホラーアクシデンタル』13話の感想です。いずれもYouTubeにてオフィシャルに公開されているため、動画についてリンクを張りつつ、各話の感想を書いていきます。
『ホラーアクシデンタル』とは?
2013年にフジテレビで不定期に放送されたテレビドラマです。各話7分程度のショートドラマで、現在もYouTubeでオフィシャルに公開されており、自由に視聴が可能です。
ジャンルはホラーなのですが、いわゆる幽霊や怪奇現象の類は登場しません。描かれるのは、現実でも起こりうる人間の怖さです。なお、大きな音などによって驚かそうとする演出もありません。びっくり系のホラー動画などが苦手な方でも、純粋にストーリーを楽しめる作品だと思います。
以下、公式動画へのリンクと感想を記載しています。短いドラマですので是非視聴して頂いて、その面白さを共有できればと思います。
13話「大いなる遺産」
動画リンク
タイトルの由来
イギリスの作家、ディケンズの小説。
感想
そのものずばりを映さなくても、音だけで十分にその怖さ・不快さが伝わってくるものだな〜というのを強く感じる作品。ラストシーン、実際に蠢く「何か」の姿は映されないが、実際にそれが映されるよりも映されずに終わるのがむしろ怖いとすら感じる。
……いや、すみません。嘘つきました。多分、実際にその光景を目にした方が私は百倍怖いです。想像力豊かぶって、申し訳ないです。
以下、中身を噛み砕いていきます。
蠢く「何か」の正体は?
まあ……普通に考えて、Gなんでしょうね。
息子は友達から「かぶと虫」を貰ったと言っていますが、主人公親子の服装、また息子の「お年玉をもらえるかな?」という発言から、季節が冬であるのは明らかです。この話の主人公である母親も、何故この季節にかぶと虫? と訝しんでいましたね。
息子の友達は悪意があったのか?
おそらくは「『かぶと虫』でない何か」を友達から渡された主人公の息子ですが、果たしてこれは悪意からの行動だったのでしょうか?
個人的には、悪意があったとは考えにくいと思います。
主人公の息子はまだ幼く、おそらくはまだ就学前でしょう。貰った虫がかぶと虫でない事にも気付けない年齢のようです。
となれば、同年代の友達も、彼に渡した虫がかぶと虫ではない事に気付かなかったと考えるのが自然な話です。
また、もし仮に、虫を渡した相手がそれをかぶと虫ではないと知りながら、主人公の息子をからかったというプロットだったとします。その場合、虫を渡した相手は息子の友達ではなくて、"近所に住むお兄ちゃん"など、多少の年齢差をそこに設定すると私は思います。これなら、息子は幼いが故の無知から、その虫が害虫だと気付かなかったが、渡した相手はその虫がGだと知っていたのだと視聴者に思わせる事ができるからです。
しかし、実際にはそうはならず、息子と同年代の子が渡した相手に設定されています。これは、息子にその虫が渡ったのは意図的なものではなくある種の事故だったという脚本だったからだろうと思います。
「大いなる遺産」というサブタイトルの意味は?
これは「Gが死ぬ時に卵を撒き散らす」という雑学(都市伝説?)に起因するタイトルなのだと考えられます。
ちなみに、実際にはGが死ぬ時に卵を撒き散らすという習性はありません。
上の記事では、Gが死ぬ際に卵を撒き散らすというのが誤った雑学であることに関する説明が記載されています。興味のある方はご覧下さい。
そんなに早く繁殖するのか?
さて、主人公の息子は「かぶと虫」を友達から貰った後、空の箱のようなものを住居として提供する訳ですが、そこから「かぶと虫」は人知れず脱出して、台所下に移動。そしてその後、産卵して繁殖する事になります。
二人が帰省している間に逃げ出した個体が死んで卵を産んだのだろうか? と最初は思ったのですが、死ぬ理由が思いつかないので実際には普通に生きていて産卵したと考えられます。とすると、上で書いた「死ぬ際の産卵」が実際に起こったとは考えにくいですね。よって、このサブタイトルはあくまで蠢く存在がGである事を視聴者に想起させるためのものであって、実際に話の中で起きた事を示唆している訳ではないと考えられます。
ところで、Gの卵が孵化するまで、どのくらいの日数が掛かるかをご存知ですか?
私は知らなかったのでこの機会にざっくり調べてみたのですが……それによれば、産卵から早くても15〜20日は掛かるというのです。
どうでしょう、想像よりも長いと感じませんか? 私はてっきり、一週間もあれば孵化するのかなと思ってました。
また、一回の孵化で生まれる数は20匹程度です。……まあ、それでも想像したくない多さではありますが、ラストシーンで聞こえてきた音は20匹程度では済まなそうにも感じました。20匹が生まれ、それらがまた卵を産んで繁殖したとするなら、20×20で400匹にまで増え、これなら申し分ない量(?)ですが、そんな事態になるには更に日数が必要です。少なくみても1ヶ月半は掛かるでしょう。
この話では主人公と息子はそれなりに長い期間、実家に帰省していたようですが、そんなに長い間家を空けたのだろうかという点には違和感を覚えました。主人公が実家に電話を掛けた際の口ぶりからすると、明確ではないものの年末年始の時期を過ごした程度に聞こえます。とすると、長くても10日間ほどというのが私の考えです。
しかし、もし息子の「かぶと虫」が脱出→産卵→繁殖したのだとすると、最低でも20日〜一ヶ月半は、息子が「かぶと虫」を貰ってから時間が経過していなければ、この話は成立しないのです。
となると考えられる可能性は、
- 息子の「かぶと虫」は関係ない。元々家にはGが繁殖する環境が整っていた。
- 繁殖の原因は「かぶと虫」。主人公と息子の二人は、実は相当長い期間、実家に帰省していた。
- 繁殖の原因は「かぶと虫」。息子が自宅に持ち込んだ時期が、実際は帰省するよりもかなり前の段階だった。
- 「かぶと虫」は全く新種のG、または未知の生物だった。そのため繁殖に要した期間はもっと短かった。
この4つの内のいずれかとなりますね。
一番真っ当に考えるなら3ですが、もし4だったら、新種の生物の大量繁殖に成功しており、然るべき機関に持ち込めば大金を得られるかもしれません! そういう意味では、最終的にハッピーエンドになる可能性を秘めているとすら言えますね。
……という冗談はさておき。この話で、Gの孵化日数まで考えるのは、まあ野暮な話なのかもしれませんね。得体の知れない生き物が、いつのまにか自宅を侵食していた。それだけで怖さは十分です。
まとめ
正直、上のような事を調べているだけでも私自身、ゾワっとしてしまい、何だかムズムズしてきました。この記事も何事も無かったように調べて書いているように思われるかもしれませんが、私は男性ながらGは大っ嫌いなので、この記事も寒気と戦いながら書いています。そんな怖さを紛らわすために、敢えて茶化し気味な内容になっているのだと、ご理解頂ければ幸いです(笑)
実際に家の中でGを目撃した時は、妻子を生贄にする訳にもいかないので、やむを得ず私が対応しますが、もう本当に苦手です。最近は凍らせて撃退するスプレーという人間の叡智のお陰で、ごく稀に遭遇した際にもかなり対応はしやすくなったものですが……。
こういった虫に耐性のある人は本当に羨ましいです。ただ、私自身、そうした生理的嫌悪感を持っているからこそ、この話も存分に楽しむ(気持ち悪がる)ことができたのだと考えれば、それはそれでよかった……のかもしれません。いや、無理にでもそう思い込もうと思います。
以上、ドラマ『ホラーアクシデンタル』13話の感想でした。