あるこじのよしなしごと

妻・息子2人(2014生:小麦アレ持ち/2019生)と四人で暮らしています。ボードゲーム、読んだ漫画・本、観た映画・テレビ、育児、その他日常等について綴っています。

【公式動画リンク有】『ホラーアクシデンタル』「見えない人間」感想

ざっくり言うと

ショートドラマ『ホラーアクシデンタル』の感想。「見えない人間」(14話)について。心霊現象ではなく人間の怖さが表現された作品。

こんにちは、あるこじ(@arukoji_tb)です。

オムニバスドラマ『ホラーアクシデンタル』14話の感想です。いずれもYouTubeにてオフィシャルに公開されているため、動画についてリンクを張りつつ、各話の感想を書いていきます。

『ホラーアクシデンタル』とは?

2013年にフジテレビで不定期に放送されたテレビドラマです。各話7分程度のショートドラマで、現在もYouTubeでオフィシャルに公開されており、自由に視聴が可能です。

ジャンルはホラーなのですが、いわゆる幽霊や怪奇現象の類は登場しません。描かれるのは、現実でも起こりうる人間の怖さです。なお、大きな音などによって驚かそうとする演出もありません。びっくり系のホラー動画などが苦手な方でも、純粋にストーリーを楽しめる作品だと思います。

以下、公式動画へのリンクと感想を記載しています。短いドラマですので是非視聴して頂いて、その面白さを共有できればと思います。

14話「見えない人間」

動画リンク

タイトルの由来

アメリカの作家、ラルフ・エリスンの小説。

見えない人間 (1)

見えない人間 (1)

 

感想

ホラーアクシデンタルという作品を語る中で、日常に潜む狂気が強く演出されているのは、第5話の「ある家族の会話」だと思います。

一方で、一定のホラー要素を取り入れた上での秀作と言えるのがこの作品でしょう。

主人公の服装を真似る、得体の知れない電話ボックスの女性というテーマ設定からして秀逸です。見た目や習慣について偏執的に模倣する人物というのは、程度の問題はあれど、現実でもたまに聞くことのある話です。それだけに、もしそうした行為がエスカレートしたら、こんな事になるのかも……と思わされる点での怖さがあると感じました。

この作品では、主人公が女に対して

  • 真似すんなよ、ブス
  • なんなの、あのババァ

と序盤で悪態をついていますが、三木康一郎さんのホラー作品で得体の知れない相手に暴言を吐く行為はご法度です(笑)

大体、相手は地獄耳でその声をきちんと聞いており、結果的にその相手から報復めいた何らかの酷い目に遭わされてしまいます。この主人公の女性も例外ではなく、ラストは酷い目に遭ってしまいます。

この作品で見解が割れそうなのは、ラストにおける女の行動の真意でしょう。

まず、女がやっていることを改めて確認しますが、いわゆるアシッド・アタックと呼ばれる行為です。

アシッドアタック - Wikipedia

他の三木作品でもたまに見られる攻撃ですね。力は不要なので男女問わず行使することができ、至近距離などから不意を突かれたらほぼ回避はできず、それでいて被害は甚大。人間の悪意が込められた恐ろしい行為です。

一体、女は何故、主人公の女性に酸を浴びせたのでしょうか?

女が整形に失敗したため

個人的に本命案はこれです。

主人公の服装を真似るだけでは我慢できなかった女は、長かった髪をショートにし、その顔立ちまで模倣しようと整形手術を受ける事を考えます。しかし、残念ながらその手術は失敗に終わってしまい、女の顔には傷が残る事になってしまいました。

そのため、女は主人公の女性と同じ顔になるべく、自身の顔を変えるのではなく主人公の顔を自身の整形が失敗した顔と同じにする事を考え、アシッド・アタックを行ったのですね。

またその行動には、単に見た目を揃えるという目的の他に、自分を物語の冒頭で侮辱した事への復讐や、自分だけが整形失敗という目に遭った事の逆恨みなどの意図も含まれているのかもしれません。

多分、この話を見た多くの人が、こう考えたのではないでしょうか?

主人公を攻撃する狙いが先にあった

他に解釈は無いかを考えてみた結果、女は主人公を傷付ける狙いが先にあったという話でも辻褄がギリギリ合わなくはないのかなと思いました。

まず、そもそも女が主人公の服装を真似たという証拠はありません。主人公の服装が次々に変わる中、それに追従していったのなら女は間違いなく主人公の服装を真似しているといえますが、服装が被ったのは1パターンだけ。となると、たまたまコーディネートが丸被りした可能性もゼロではないでしょう。

しかし、主人公は女の姿を見て、前述の通り侮蔑しました。これに女が怒りを覚え、攻撃する事を思いつきます。何せ、主人公によるブスという台詞を聞いた女は、電話をガチャ切りしてましたからね(笑) 内心、かなり激おこだったとしても、不思議なことではないでしょう。

アシッド・アタックを行う事を考えついた彼女は、できる限りの恐怖を主人公に与えたく考え、携帯にメールを送る(ちなみにどうやって彼女のメールアドレスを知ったのかは不明)などして脅威を与えつつ、主人公を攻撃します。

包帯で顔をぐるぐる巻きにしたのは、彼女に恐怖感を与えるための他、彼女に接近する上で顔を彼女に覚えられないようにするためという二つの意味があったとも解釈できます。つまり、この説を採る場合は、実は女は顔に傷など付いていなかったという事になる訳ですね。

ただ、この解釈だと、何故女が髪を短くしたのかに説明がつかないんですよね……。そう考えるとやはり、最初に挙げた案の方が、話としてはしっくりきますね。

 

ちなみにサブタイトルとなった「見えない人間」ですが、本書のテーマは黒人に対する白人の人種差別です。そのため、取り扱われているテーマがこの話に関係しているとは考えにくいです。

おそらくですが、このサブタイトルは単純に透明人間の事を指しているのだと思われます。女がラストで顔を包帯巻きにしている姿が、古典的な透明人間の見た目と一致することから、このサブタイトルが付けられたのでしょう。

以上、ドラマ『ホラーアクシデンタル』14話の感想でした。