あるこじのよしなしごと

東京の片隅で、妻と4歳の息子と三人で暮らしています。 ボードゲーム、読んだ漫画・本、観た映画・テレビ、遊んだゲーム、育児について、その他日常などを綴っています。

漫画『笑ゥせぇるすまん』第39話「シルバー・バンク」感想

ざっくり言うと

お客様は息子のために"おじいちゃん"を喪黒さんからレンタルした男。喪黒さんの超常的な力はあまり介在せず、現実世界でも似たような事が起こりうる点が怖い話

こんにちは、あるこじ(@arukoji_tb)です。

漫画『笑ゥせぇるすまん』第39話の感想です。
感想の性質上、展開やオチなどに多々言及することになるため、ネタバレ多数になります。ご注意下さい。
他方、あらすじの紹介が主眼ではないので、話の枝葉末節は記載しないつもりです。そのため、本記事を読むだけでは物語の内容は分からない可能性があることも、ご了承下さい。

第39話「シルバー・バンク」

お客様について

サラリーマンの加手井延満です。名前の由来は家庭円満なことから。

笑ゥせぇるすまんでは妻子に夫が馬鹿にされているなどの機能不全家族が多い中、この話は珍しく一家の仲が良いです。その点でこの話の導入は少しホッとするものの、結局はその家庭が不幸に陥るという事が最初から予測できてしまうので、少し複雑なものがありますが……。

加手井の家での最近のブームは、ホームビデオを撮ること。息子のケン一の微笑ましい姿をビデオに収めることで和やかに楽しんでいた一家は、テレビから聞こえてきた「ホームビデオ募集」の声に耳を留めます。

一等賞金は何と50万円!今とは時代が違う、かつ漫画とはいえ盛りすぎな金額設定な気もしますが……ともあれ、加手井一家は良いビデオを撮って賞金を手に入れようと色めき立ちます。

しかし、盛り上がった加手井一家に水を差すかのように、そのホームビデオのテーマが「おじいちゃんと一緒」であることが告げられます。

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加手井の家にはおじいちゃんがいませんでした。母方・父方ともに、祖父は既に亡くなっているのです。ケン一は「それなら何処かから借りてくればいい!」と駄々をこねますが、加手井は無理を言うなと叱るのでした。

レンタルおじいちゃん

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息子から無茶なお願いをされた翌日、加手井は喪黒さんと出会います。喪黒さんはホームビデオ撮影のためにおじいさん役をシルバー・バンクから貸し出すと言ってきます。加手井は半信半疑ながら、喪黒さんのその申し出を受けるのでした。

『笑ゥせぇるすまん』の作中では、人材レンタル系のサービスがよく登場します。これまでに感想を書いてきた中では、30話の『レンタル彼女』と32話の『家族あわせ』が該当します。本作は人材レンタル系の話の中では3作目となります。

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加手井は、シルバー・バンクから派遣されてきた大久保という老人に協力してもらい、無事にホームビデオの撮影を終えます。そして、すっかりになついたケン一の希望などもあり、ビデオ撮影が終わった後も大久保翁と懇意に過ごすのでした。

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しかし、それについて喪黒さんは危険視します。ビデオ撮影が終わったら、関係を絶つべきだと忠告する喪黒さんに対し、加手井は分かりましたと返します。

加手井が家に帰ると、そこには上機嫌で晩酌をしている大久保の姿がありました。晩酌といっても、そこは加手井の家ですので、有り体に言えばタカっているようなものです。

加手井の妻は図々しくも追加の酒を要求する大久保にほとほと手を焼いており、加手井に助けを求めます。加手井はそれに応じて大久保を窘めるのですが、大久保は懐柔したケン一を味方につけます。その結果、息子に弱い加手井夫婦は結局、大久保の言いなりになってしまうのでした。

その翌日、喪黒さんの忠告もあり、加手井は大久保に、もう家から出て行って欲しい旨の要求するのですが……。

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時すでに遅しでした。完全にケン一を自分の味方につけた大久保を、加手井は追い出す事ができません。

大久保はなし崩し的に加手井の家に居座ります。そして腰痛を引き起こし、そのまま寝たきり・要介護の状態となり、その面倒を加手井が見ることになるのでした……。

何故、他人のじいさんの面倒を見なければならないんだ! という加手井の嘆きで物語は幕を下ろします。

超常現象がなくても成立する話という怖さ

ホームビデオ撮影に協力してもらうだけが、とんでもない重荷を背負う羽目になってしまった加手井。

本人の落ち度といえば毅然とした態度を取れなかった程度。欲に目がくらんだなどの他の話のお客様に比べると、その落ち度は小さいのですが、その割に被害の度合いは結構大きい気がします。

死ぬとか大怪我とかではないものの、その分、読み手としては他の話に比べて、被害の度合いがリアルに感じられます。

自身の親が相手でも介護は大変なものですから、身内でもない爺さんの面倒を見続けなければならないなんて、そのストレスは尋常なものではないでしょうね。

思えば、ホームビデオを募集するテレビ番組って、すっかり無くなりましたね。昔は『さんまのSUPERからくりTV』などのバラエティ番組でよく素人の撮影したビデオを募集していて、番組で採用されたら何万円貰える、みたいな企画がありましたが……。

これは、YouTubeやTwitterなどを介して放映に耐えうる番組素材が簡易に手に入るようになったからなんでしょうね。

この話の怖いところは、喪黒さんの関与は間接的であり、そこに超常現象の類は絡んでいないという点ですね。

実際には、終盤の大久保の腰痛は、喪黒さんがドーン!とやったことで起こっているのですが、仮に喪黒さんのそうした関与が無くても、老人が腰痛から寝たきりになる事自体は普通にありうることです。また、喪黒さんから送り込まれている時点で大久保自体が異常な人間というのも勿論あるのでしょうが、タチの悪い人間が現実世界で同じことをやろうと思えば物理的には可能といえる点が怖いなと私は感じました。

別に老人に限った話ではありませんが、子ども相手に取り入ったり、またはその知識の乏しさを理由に脅したりして、まず子どもを自身の制御下に置いてから、それを足掛かりにして両親の財産等を狙うという手口は現実にもありえそうに思います。具体的には、子どもの乗る自転車を狙った当たり屋などがそれに該当しますね。

笑ゥせぇるすまんの話の多くは、喪黒さんの不思議な力や道具によって引き起こされますが、こうした現実でもギリギリあり得そうな内容がテーマになると、普段とは別種の怖さがあるなと感じました。

なお、この作品とは逆に、孤独なおじいちゃんが孫との交流を求めるという「ウソ孫」というお話が、リメイク版のアニメ『笑ゥせぇるすまんNEW』にあります。

喪黒さんも、超高齢化社会となった現代において、色々サービス内容を拡充しているのかなと感じさせられますね(笑) 興味がある場合は、Amazonプライム等でも観られますので、よかったら視聴してみては如何でしょうか。

以上、『笑ゥせぇるすまん』第39話の感想でした。


§ 本記事で掲載している画像は藤子不二雄A『笑ゥせぇるすまん』より引用しています。


 

笑ゥせぇるすまん (3) (中公文庫―コミック版)

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